圧力換算は、まず MPa(メガパスカル)にそろえるのが近道です。bar は MPa の数字を10倍するだけ。kgf/cm² は bar より約2%小さい単位です(1 kgf/cm² = 0.980665 bar)。工場の圧力計がふつう示すのはゲージ圧で、絶対圧はそれに大気圧(約0.1013 MPa)を足します。
この記事では、圧力の単位をお金の通貨にたとえて、最後までその話で説明します。円・ドル・ユーロが同じお金を違う数字で表すように、MPa・bar・psi も同じ圧力を違う数字で表しているだけです。
- 圧力の法定計量単位(パスカル・バール・気圧)と定義:計量法・計量単位令
- 換算係数:NIST SP 811 Appendix B.8、メーカーの圧力単位の換算表
- ゲージ圧と絶対圧の基準:圧力計メーカーのカタログ
- 計量法(平成4年法律第51号)別表第一・別表第三・附則第3条と附則別表第三(e-Gov 法令検索)
- 計量単位令(平成4年政令第357号)別表第一・別表第三・別表第六(e-Gov 法令検索)
- NIST Guide to the SI(SP 811)Appendix B.8 Factors for Units Listed Alphabetically
- パナソニック インダストリー「圧力単位の換算」(kPa・bar・psi・mmH2O・mmHg・atm・kgf/cm² の換算表)
- 長野計器「絶対圧力計 DA1」カタログ(ゲージ圧と絶対圧の基準、abs. の表記)
情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。
- 圧力とは?面積あたりにかかる力の強さ
- パスカル(Pa)と kPa・MPa:千円札と百万円の束
- 圧力の単位は「お金の通貨」:MPa・bar・psi・kgf/cm²
- 圧力換算の早見表:MPa・kPa・bar・psi・kgf/cm²
- 計算してみよう①:kgf/cm² と psi の換算係数はどこから来た?
- 計算してみよう②:よく出る換算3題と、暗算の近道
- ゲージ圧と絶対圧の違い:床から測るか、海面から測るか
- 計算してみよう③:0.7 MPa の空気は、何倍に押し縮められている?
- 計量法で決まっている圧力の単位:kgf/cm² はなぜ消えた?
- 電気・制御の設計者から見た注意点:圧力センサの値を PLC で直す
- よくある間違い:桁・2%の差・ゲージと絶対
- よくある質問
- まとめ:圧力の単位は通貨。MPa にそろえて、レートを掛ける
圧力とは?面積あたりにかかる力の強さ
雪の上を歩くところを想像してください。スキー板をはくと、ほとんど沈みません。同じ人がハイヒールで立つと、ずぶずぶ沈みます。体の重さ(力)は同じなのに、雪を押す面積が違うからです。雪が感じているのは「力」ではなく、「面積あたりの力」=圧力です。
式で書くと、次のとおりです。ここでの力は、重さによる力や、空気や油が押す力のことです。
圧力 P = 力 F ÷ 面積 A
- P:圧力。単位は Pa(パスカル)
- F:力。単位は N(ニュートン)。地球の上では、1 kg のものは約 9.8 N の力で下に引かれます
- A:力を受ける面積。単位は m²(平方メートル)
つまり、1 Pa は「1 m² の面に 1 N の力がかかったときの圧力」です。計量単位令でも、パスカルは「一平方メートルにつき一ニュートンの圧力」と決められています。
工場の空気(圧縮空気)や油の圧力も同じ考え方です。タンクや配管の中の空気が、内側の壁の1 m² あたりをどれだけの力で押しているか、を表しています。
N(ニュートン)と kg の関係が、トルクの計算でわかる

パスカル(Pa)と kPa・MPa:千円札と百万円の束
1 Pa がどれくらい小さいかを確かめます。A4 の紙1枚(重さを 4 g とします)を机に置くと、紙の重さによる力は 0.004 kg × 9.8 = 約0.039 N、紙の面積は 0.21 m × 0.297 m = 約0.062 m² です。割ると約0.63 Pa。紙1枚が机を押す圧力より少し大きい程度が 1 Pa です。
お金で、1円玉を何十万枚も数えるのは大変です。だから千円札や、百万円の束を使います。圧力も同じで、1 Pa を千個まとめたものが 1 kPa(千円札)、百万個まとめたものが 1 MPa(百万円の束)です。
上から順に1000倍ずつ大きくなります。工場の空気の圧力は MPa、大気圧は kPa で書くことが多いです
| 単位 | 読み方 | Pa にすると | よく出てくる場面 |
|---|---|---|---|
| Pa | パスカル | 1 Pa | ごく小さい圧力の差(クリーンルームの室内と外の差など) |
| kPa | キロパスカル | 1000 Pa | 大気圧(約101.3 kPa)、タイヤの空気圧、真空の度合い |
| MPa | メガパスカル | 1,000,000 Pa | 工場の空気(0.5〜0.7 MPa くらい)、油圧、配管の耐える圧力 |
1 MPa = 1000 kPa = 1,000,000 Pa です。ここが1000倍ずれると、10倍どころではない大きな間違いになるので、桁は毎回確かめます(⑫)。

圧力の単位は「お金の通貨」:MPa・bar・psi・kgf/cm²
100ドルを円に直すときは、為替レートを掛けます。ドルも円も、同じお金を違う数字で表しているだけです。圧力の単位も同じで、「1 bar は 0.1 MPa」というレートを覚えておけば、どの単位でも行き来できます。圧力のレートは、為替と違って毎日変わりません。定義で決まっています。
工場でよく見る単位を、生まれた考え方ごとに並べます。
右の列は「1 MPa はその単位でいくつか」。数字が大きいほど、その単位の1つ分が小さいということです
| 単位 | 読み方 | どんな考え方の単位か | 1 MPa にすると |
|---|---|---|---|
| MPa・kPa | メガ/キロパスカル | 国際単位系(SI)。N ÷ m² | 1 MPa |
| bar | バール | ちょうど 100,000 Pa。大気圧に近い大きさの区切りのよい単位 | 10 bar |
| kgf/cm² | キログラム重毎平方センチメートル | 1 kg の重さの力 ÷ 1 cm²。昔の日本の図面や圧力計に多い | 約10.2 kgf/cm² |
| psi | ピーエスアイ | 1 ポンドの重さの力 ÷ 1 平方インチ。アメリカで使われる | 約145 psi |
| atm | 気圧 | 海面の平均の大気圧をもとにした単位(101,325 Pa) | 約9.87 atm |
| mmHg | 水銀柱ミリメートル | 水銀の柱を何 mm 押し上げるか。血圧で使う | 約7501 mmHg |
kgf/cm² は「キロ」とつくので、キログラム(重さ)と混ざりやすい単位です。正しくは「1 kg の物の重さが生む力(約9.8 N)が、1 cm² にかかった圧力」です。

圧力換算の早見表:MPa・kPa・bar・psi・kgf/cm²
1つ目は、左の単位の「1」が、右の単位でいくつになるかの表です。計量単位令と NIST(アメリカ国立標準技術研究所)の定義から計算し、メーカーの換算表と6けたまで一致することを確かめました。
左の列の単位の「1」を、右の各単位で表した値です。たとえば 1 kgf/cm² の行を右へ読むと、0.0980665 MPa・98.0665 kPa…となります
| 1 の単位 | MPa | kPa | bar | psi | kgf/cm² |
|---|---|---|---|---|---|
| 1 MPa | 1 | 1000 | 10 | 145.038 | 10.1972 |
| 1 kPa | 0.001 | 1 | 0.01 | 0.145038 | 0.0101972 |
| 1 bar | 0.1 | 100 | 1 | 14.5038 | 1.01972 |
| 1 psi | 0.00689476 | 6.89476 | 0.0689476 | 1 | 0.0703070 |
| 1 kgf/cm² | 0.0980665 | 98.0665 | 0.980665 | 14.2233 | 1 |
| 1 atm | 0.101325 | 101.325 | 1.01325 | 14.6959 | 1.03323 |
2つ目は、工場の空気でよく使う 0.1〜1.0 MPa を、ほかの単位で表した早見表です。
左の MPa の値を、右の単位に直した値です(psi は小数第1位、kgf/cm² は小数第2位で四捨五入)。0.9 MPa は 9 bar・130.5 psi・9.18 kgf/cm² です
| MPa | kPa | bar | psi | kgf/cm² |
|---|---|---|---|---|
| 0.1 | 100 | 1 | 14.5 | 1.02 |
| 0.2 | 200 | 2 | 29.0 | 2.04 |
| 0.3 | 300 | 3 | 43.5 | 3.06 |
| 0.4 | 400 | 4 | 58.0 | 4.08 |
| 0.5 | 500 | 5 | 72.5 | 5.10 |
| 0.6 | 600 | 6 | 87.0 | 6.12 |
| 0.7 | 700 | 7 | 101.5 | 7.14 |
| 0.8 | 800 | 8 | 116.0 | 8.16 |
| 1.0 | 1000 | 10 | 145.0 | 10.20 |
この表の値はすべて「ゲージ圧どうし」「絶対圧どうし」の換算です。ゲージ圧を絶対圧に直すときは、単位を変えるのとは別に、大気圧を足す計算が要ります(⑧)。
- 換算係数:NIST SP 811 Appendix B.8(bar・kgf/cm²・atm は定義どおりの値、psi は 6.894757 kPa)
- 照らし合わせた表:パナソニック「圧力単位の換算」
- バール・気圧の定義:計量単位令
- NIST Guide to the SI(SP 811)Appendix B.8 Factors for Units Listed Alphabetically
- パナソニック インダストリー「圧力単位の換算」(kPa・bar・psi・mmH2O・mmHg・atm・kgf/cm² の換算表)
- 計量単位令(平成4年政令第357号)別表第一・別表第三・別表第六(e-Gov 法令検索)
情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

計算してみよう①:kgf/cm² と psi の換算係数はどこから来た?
換算係数を丸暗記していると、桁を1つ間違えても気づけません。係数がどこから来たかを1回たどっておくと、「だいたい合っているか」を自分で確かめられます。そのための計算です。
為替レートの裏に「1ドルで買えるものの量」があるように、kgf/cm² の裏には「1 kg のおもりを、1 cm² の上に置いた」という具体的な場面があります。場面を思い浮かべると、レートが腑に落ちます。
式の出どころ:②の「圧力 = 力 ÷ 面積」そのものです。力は「質量 × 重力の加速度」で出します。重力の加速度は、計量の世界で 9.80665 m/s² と決められた値(標準の重力加速度)を使います。
1 kgf/cm² = (1 kg × 9.80665 m/s²) ÷ 1 cm²
1 kg × 9.80665 m/s² = 9.80665 N
1 cm² = 0.0001 m²
9.80665 N ÷ 0.0001 m² = 98,066.5 Pa
98.0665 kPa = 0.0980665 MPa
同じやり方で psi も出せます。ポンド(lb)とインチ(in)は、どちらもメートル法の値で定義されています(1 lb = 0.45359237 kg、1 in = 25.4 mm)。
- lbf(重量ポンド):1 ポンドの物が生む力
- in²(平方インチ):1 インチ × 1 インチの面積。1 in = 0.0254 m
1 lb = 0.45359237 kg
0.45359237 kg × 9.80665 m/s² = 4.448222 N
0.0254 m × 0.0254 m = 0.00064516 m²
4.448222 N ÷ 0.00064516 m² = 6894.757 Pa
6894.757 Pa = 6.894757 kPa
1,000,000 Pa ÷ 6894.757 Pa = 145.04 psi
桁の感覚も確かめます。1 kgf/cm² は「1 kg を小指の先ほどの面積に載せた」圧力で、約0.1 MPa。1 psi はそれより1けたほど小さい約0.007 MPa。工場の空気の 0.7 MPa が「約7 kgf/cm²」「約100 psi」になるのも、この大きさの関係から納得できます。
- kgf/cm²・psi の換算係数:NIST SP 811 Appendix B.8
- パスカルの定義:計量単位令
- NIST Guide to the SI(SP 811)Appendix B.8 Factors for Units Listed Alphabetically
- 計量単位令(平成4年政令第357号)別表第一・別表第三・別表第六(e-Gov 法令検索)
情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

計算してみよう②:よく出る換算3題と、暗算の近道
ここでは、図面やカタログを読むときに実際に出てくる3つの場面を、⑤の表の値で解きます。
旅行先で「ドルを円にするには、だいたい×◯」と覚えておくと、値札をすぐ読めます。圧力も「MPa から行くときに掛ける数」を4つ覚えておけば、図面を見た瞬間に大きさがつかめます。
7 × 0.0980665 MPa
= 0.6865 MPa
≒ 0.69 MPa
100 × 6.89476 kPa = 689.476 kPa
689.476 kPa ÷ 1000 = 0.6895 MPa
0.7 × 145.038 = 101.5 psi
0.7 × 10.1972 = 7.138 kgf/cm²
暗算でよく使う近道に「1 MPa ≒ 10 kgf/cm²」があります。計算すると、本当の値(10.1972)との差は約1.9%です。圧力計の読みの目安には十分ですが、部品が耐える圧力の上限の近くで比べるときは、近道を使わず表の値で計算します。「1 MPa ≒ 145 psi」の差は約0.03%なので、ほぼそのまま使えます。
左の近道を使ったとき、本当の値とどれだけずれるか。右の列が、その近道を使ってよい場面です
| 近道 | 本当の値 | 差 | 使ってよい場面 |
|---|---|---|---|
| 1 MPa ≒ 10 bar | 10 bar(ぴったり) | 0% | いつでも |
| 1 MPa ≒ 145 psi | 145.038 psi | 約0.03% | ほぼいつでも |
| 1 MPa ≒ 10 kgf/cm² | 10.1972 kgf/cm² | 約1.9% | 目安。上限の近くの比較では使わない |
| 1 bar ≒ 1 kgf/cm² | 1.01972 kgf/cm² | 約1.9% | 目安。同じ単位とみなさない |

ゲージ圧と絶対圧の違い:床から測るか、海面から測るか
高台の展望台に立つ人の「高さ」は、足もとの床から測れば身長の 1.7 m ですが、海面から測れば 101.7 m かもしれません。同じ頭の位置でも、どこをゼロにするかで数字が変わります。ゲージ圧は「床(まわりの大気)から測った高さ」、絶対圧は「海面(真空)から測った高さ」です。
私たちのまわりには、いつも空気の重さによる圧力(大気圧)がかかっています。海面の平均でおよそ 101.3 kPa(= 0.1013 MPa)です。ふつうの圧力計は、この大気圧をゼロとして目盛りを付けています。長野計器の絶対圧力計のカタログでも、「大気圧をゼロの基準とするゲージ圧を計測する通常の圧力計に対し、絶対圧力計は、完全真空状態をゼロの基準とする」と説明しています。
絶対圧 = ゲージ圧 + 大気圧(約0.1013 MPa)
同じ圧力を2通りで表しています。工場で何も書いていない「◯ MPa」は、ふつうゲージ圧です
| 呼び方 | ゼロの基準 | 書き方の例 | よく使う場面 |
|---|---|---|---|
| ゲージ圧 | まわりの大気圧 | 0.7 MPa、0.7 MPa(G)、psig | 工場の空気・油圧の圧力計、機器の使用圧力、法令の圧力容器の区分 |
| 絶対圧 | 真空 | 0.8013 MPa abs.、psia | 真空の度合い、空気が何倍に縮むかの計算、気体の計算 |
たとえば、空気タンクの圧力計が 0.7 MPa を指しているとき、タンクの中の空気の絶対圧は 0.7 + 0.1013 = 0.8013 MPa です。法令もゲージ圧で書かれていて、労働安全衛生法施行令では、第二種圧力容器を「ゲージ圧力0.2メガパスカル以上の気体をその内部に保有する容器」のうち内容積などの条件に当てはまるもの、としています。
大気圧は天気や標高で少し変わります。ここでは計算をわかりやすくするため、海面の平均の 0.1013 MPa を使っています。真空や気体の量をくわしく計算するときは、その場所の大気圧を使ってください。
- ゲージ圧と絶対圧のゼロの基準・abs. の表記:長野計器 絶対圧力計 DA1 カタログ
- 第二種圧力容器の定義(ゲージ圧力):労働安全衛生法施行令 第1条第7号
- 気圧(101,325 Pa)の定義:計量単位令 別表第三
- 長野計器「絶対圧力計 DA1」カタログ(ゲージ圧と絶対圧の基準、abs. の表記)
- 労働安全衛生法施行令 第1条第7号(第二種圧力容器=ゲージ圧力 0.2 MPa 以上の気体を保有する容器のうち…)(e-Gov 法令検索)
- 計量単位令(平成4年政令第357号)別表第一・別表第三・別表第六(e-Gov 法令検索)
情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

計算してみよう③:0.7 MPa の空気は、何倍に押し縮められている?
コンプレッサーやエアシリンダが使う空気の量を考えるとき、「タンクの空気は、外の空気の何倍に縮められているか」を知りたくなります。ここで絶対圧を使わないと、答えが大きくずれます。
ふとん圧縮袋を思い浮かべてください。ぎゅっと押すほど、ふとんは小さくなります。空気も、押す力(圧力)が2倍になると、体積は半分になります。ただし、ここで言う「押す力」は真空から測った絶対圧です。床から測ったゲージ圧では、この比例が成り立ちません。
式の出どころ:温度が変わらないとき、気体の「圧力 × 体積」は一定です(ボイルの法則)。大気(絶対圧 0.1013 MPa)の空気を、絶対圧 p まで縮めると、体積は 0.1013 ÷ p 倍、つまり p ÷ 0.1013 分の1になります。
縮む倍率 = 絶対圧 ÷ 大気圧 = (ゲージ圧 + 0.1013) ÷ 0.1013
0.7 MPa + 0.1013 MPa = 0.8013 MPa
0.8013 MPa ÷ 0.1013 MPa = 7.91
0.7 ÷ 0.1013 = 6.91
つまり、0.7 MPa のタンクに 100 L 分の空気が入っているなら、外に出すと約 790 L の空気になります(温度が同じとき)。カタログの「吐き出し空気量」や「空気消費量」が、大気圧の状態に直した量で書かれているのは、この倍率で比べるためです。
水の柱の高さで圧力を表す「水柱(すいちゅう)メートル」や、水力発電の「圧力水頭」の考え方は、同じ筆者が運営する電気と品質管理のブログ shirasusolo.net のベルヌーイの定理の記事で解説しています。

計量法で決まっている圧力の単位:kgf/cm² はなぜ消えた?
古い図面や圧力計に kgf/cm² が多いのは、昔はそれがふつうの単位だったからです。いまの日本では、計量法という法律が「取引や証明に使ってよい単位(法定計量単位)」を決めています。
国が「お店の値札は円で書く」と決めているようなものです。外国の通貨が使えなくなったわけではありませんが、値札(取引や証明)では決められた通貨を使います。
上の3つは、いまも取引や証明に使える単位です。下の2つは、使える場面が限られるか、猶予の期間が終わった単位です
| 単位 | 計量法での扱い | どこに書かれているか |
|---|---|---|
| パスカル(Pa)・kPa・MPa | 法定計量単位 | 計量法 別表第一 |
| バール(bar) | 法定計量単位(パスカルの十万倍) | 計量法 別表第一・計量単位令 |
| 気圧(atm) | 法定計量単位(パスカルの101,325倍) | 計量法 別表第三・計量単位令 |
| 水銀柱ミリメートル(mmHg) | 血圧・生体内の圧力の計量に限って使える | 計量単位令 別表第六 |
| 重量キログラム毎平方メートル(kgf/m²。kgf/cm² はその1万倍) | 平成11年(1999年)9月30日までの猶予で法定計量単位とみなされた。いまは非法定 | 計量法 附則第3条第3項・附則別表第三 |
このため、国内向けの新しい機器は MPa・kPa で表示するのが基本です。たとえば、ある流量スイッチのカタログでは、表示の単位を切り替えられる品番に「新計量法上(日本国内は SI 単位)、海外向けのみの販売」と注記しています。
一方で、海外から入ってくる機械の銘板や取扱説明書には、psi や bar がそのまま残っていることがよくあります。だから、換算の力が今も必要なのです。
- 法定計量単位(パスカル・バール・気圧)と猶予の期限:計量法 別表第一・別表第三・附則第3条・附則別表第三
- 単位の定義と、水銀柱ミリメートルの用途:計量単位令
- SI 単位の表示の例:SMC PF2W カタログの注記
- 計量法(平成4年法律第51号)別表第一・別表第三・附則第3条と附則別表第三(e-Gov 法令検索)
- 計量単位令(平成4年政令第357号)別表第一・別表第三・別表第六(e-Gov 法令検索)
- SMC「デジタルフロースイッチ PF2W シリーズ」カタログ(単位切換機能付は「新計量法上(日本国内は SI 単位)、海外向けのみの販売」の注記)
情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

電気・制御の設計者から見た注意点:圧力センサの値を PLC で直す
工場の機械では、圧力を人が読むだけでなく、PLC(機械の動きを決める小さなコンピューター)が読んで「圧力が下がったら止める」といった判断をします。そのとき、圧力センサは圧力の大きさを電流の大きさに置きかえて送ります。
体温計が熱さを数字に置きかえるように、圧力センサは圧力を電流の強さに置きかえる「通訳」です。0 MPa なら 4 mA、1 MPa なら 20 mA、のように、決まった比例で話します。
式の出どころ:センサの出力は、圧力に比例する直線です。4 mA が測れる範囲の下限、20 mA が上限なので、電流のうち 4 mA を引いた分(0〜16 mA)が、圧力の範囲全体にあたります。
圧力 = 範囲の下限 + (電流 − 4 mA) ÷ 16 mA × (範囲の上限 − 下限)
10.4 mA − 4 mA = 6.4 mA
6.4 mA ÷ 16 mA = 0.4
0 + 0.4 × 1 MPa = 0.4 MPa
0.4 MPa = 4 bar = 58.0 psi = 4.08 kgf/cm²
次の動く図で、圧力を動かすと、7つの単位の数字とセンサの電流が同時に変わる様子を確かめてみましょう。
動かして確かめる
スライダーでタンクの圧力(ゲージ圧)を変えると、同じ圧力を7通りの書き方で表した数字と、0〜1 MPa・4〜20 mA の圧力センサの電流が同時に変わります。
いまの様子:スライダーを動かすと、ここに説明が出ます。
動きは説明のための作り物です。換算係数は本文⑤の表(NIST SP 811 と計量単位令の定義)、大気圧は海面の平均の 0.1013 MPa、センサは 0〜1 MPa・4〜20 mA の例です。
見てほしいのは、単位の数字はばらばらに変わっても、棒の長さ(本当の圧力)は1つという点です。そして、絶対圧だけはゼロの位置が違うので、ゲージ圧が 0 でも約0.1 MPa を指します。
- センサの銘板やデータシートで、測れる範囲と単位(0〜1 MPa か、0〜150 psi か)と、ゲージ圧用か絶対圧用かを先に確かめます。海外の機器は psig(ゲージ)・psia(絶対)と書き分けていることがあります
- PLC の中で換算するときは、計算に使った範囲・単位・ゲージか絶対かを、プログラムのコメントや図面に書いておくのがおすすめです。センサを別の範囲の品に替えたとき、直す場所がすぐわかります
- 4 mA を下回る電流は、線が切れた・センサが壊れたサインとして扱える範囲です。0 MPa と区別できるのが 4〜20 mA の利点です
センサの信号を受け取る PLC が、中で何をしているかがわかる

よくある間違い:桁・2%の差・ゲージと絶対
両替で多いのは、レートの小数点の位置の見まちがいと、「だいたい同じ」と思った通貨の取りちがえです。圧力換算も同じところでつまずきます。
上から、よく起きる順の目安に並べました。右の列の防ぎ方をチェックリストとして使えます
| よくある間違い | 起きること | 防ぎ方 |
|---|---|---|
| kPa と MPa を取りちがえる | 1000倍ずれる。500 kPa を 500 MPa と書くなど | 単位を毎回書く。工場の空気は 0.5〜0.7 MPa くらい、と桁の感覚で確かめる |
| bar と kgf/cm² を同じとみなす | 約2%ずれる。上限の近くで部品を選ぶと余裕が減る | 1 kgf/cm² = 0.0980665 MPa、1 bar = 0.1 MPa と分けて計算する |
| ゲージ圧と絶対圧を混ぜる | 約0.1 MPa ずれる。空気の倍率の計算は約1割ずれる | 「G」「abs.」「psig」「psia」の表記を確かめる。気体の計算は絶対圧で |
| psi の表示を MPa と読む | 145倍ずれる。100 psi を 100 MPa と読むなど | 海外の銘板は単位の文字を必ず見る。0.7 MPa ≒ 100 psi を覚えておく |
| 近道(1 MPa ≒ 10 kgf/cm²)で上限を比べる | 約1.9%甘く見積もる | 上限の近くの比較は表の値で計算する(⑦) |
- □ 数字の後ろに単位(MPa・kPa・bar・psi・kgf/cm²)が書いてあるか
- □ ゲージ圧か絶対圧か(G・abs.・psig・psia)を確かめたか
- □ MPa に直してから目的の単位へ換算したか
- □ 答えの桁が、工場の空気(0.5〜0.7 MPa くらい)と比べて不自然でないか
- □ 部品が耐える圧力の上限と比べるときは、近道でなく表の値を使ったか

よくある質問
まとめ:圧力の単位は通貨。MPa にそろえて、レートを掛ける
- 圧力は「力 ÷ 面積」。1 Pa は 1 m² に 1 N の力がかかった圧力で、とても小さい
- 1 MPa = 1000 kPa = 10 bar = 約145 psi = 約10.2 kgf/cm²。迷ったらまず MPa にそろえる
- kgf/cm² は「1 kg の重さの力 ÷ 1 cm²」で 0.0980665 MPa。bar より約2%小さい
- 絶対圧 = ゲージ圧 + 大気圧(約0.1013 MPa)。空気が何倍に縮むかは絶対圧で計算する
- 日本の取引や証明の単位はパスカル・バール・気圧など。kgf/cm² は1999年9月30日までの猶予で外れた
- 圧力センサの 4〜20 mA は、4 mA を引いて 16 mA で割り、範囲を掛けると圧力になる
単位がそろったら、その圧力の空気を作る機械(コンプレッサー)や、圧力を測るセンサの選び方へ進みましょう。
PLC・サーボ・インバーターを実務で扱ってきた電気・制御の設計者です。制御の記事は、選び方・設定の順番・止まったときの切り分けを、実務の判断のしかたから書いています。機械(材料・機械要素・図面)の記事は本職ではないため、JIS とメーカーの技術資料を調べてまとめ、出典を示しています。
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圧力の数字が読めるようになったら、その数字を PLC やセンサがどう扱うかを知ると、機械の動きがもっとよく見えてきます。

