- モーターのトルク計算をしたいが、式にどの値を入れればいいかわからない
- T = 9550 × P ÷ N の「9550」がどこから来たのかわからず、式を信じきれない
- 計算した kW と、カタログの容量(0.4kW・0.75kW…)をどうつなげばいいか迷う
- トルク・仕事・パワーとは何か(自転車のペダルのたとえで)
- トルクと kW をつなぐ式と、9549 の出どころ(物理の基本から1段ずつ)
- コンベア・昇降・ポンプ・ファンの4つの計算例(途中式を飛ばさない)
- 余裕の見方と標準の容量の決め方、計算ツール
モーターのトルク計算は、式を覚えるより「その式がなぜそうなるのか」がわかると、迷わなくなります。この記事では、モーターを自転車をこぐ人にたとえて、最初から最後まで自転車の話で説明します。
前半で式の出どころを中学校の理科から組み立て、後半で4つの機械の必要なトルクと kW を出し、カタログの容量を選びます。
モーターのトルクとは、軸を回す力の強さで、「力 × 回す腕の長さ(半径)」で決まります。自転車でいえば、ペダルを踏む力 × クランクの長さです。計算では、機械を動かす力と速さから必要なパワー(力 × 速さ)を出し、伝動の効率で割り、T[N·m] = 9549 × P[kW] ÷ N[r/min] でトルクに直します。9549 は単位をそろえる数(60×1000÷2π)です。最後に余裕を見て、それを上回る標準の容量(0.4・0.75・1.5kW…)を選びます。
- ギヤードモータの所要動力・所要トルクの式と選定例:三菱電機 ギヤードモータ カタログ 技術編
- ポンプの水動力・軸動力の量と記号:JIS B 8301:2018
- 送風機の空気動力・軸動力:JIS B 8330(送風機の試験及び検査方法。版は最新版で確かめてください)
- 三菱電機 ギヤードモータ カタログ 技術編(選定のフロー・所要動力と所要トルクの式・選定例・標準の出力)
- JIS B 8301:2018 遠心ポンプ,斜流ポンプ及び軸流ポンプ-試験方法(日本規格協会の閲覧用の見本)
情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。
- トルクとは?「回す力」は、力 × 腕の長さ
- トルクの前に:力・仕事・パワーを1段ずつ
- 回るもののパワー:トルク × 回る速さ
- 9549(9550)はどこから来る?単位をそろえただけの数
- 回転と直線をつなぐ:プーリー・ドラムの2つの式
- 減速機は自転車の「軽いギア」:回転を落としてトルクを増やす
- モーターのトルク計算の流れ:6つの段
- 計算例1:ベルトコンベア(水平)の必要トルクと kW
- 計算例2:昇降(巻き上げ)は、釣合いおもりで大きく変わる
- 計算例3:ポンプは「水を持ち上げる仕事」から出す
- 仕事で使うとき1:4つの計算例の結果を並べる
- 仕事で使うとき2:余裕率と標準の容量の決め方
- モーターのトルク計算でよくある間違い
- 計算ツール:用途を選んで必要 kW とトルクを出す
- モーターの容量を決めるチェックリスト
- よくある質問
- まとめ:トルクはペダル、パワーは坂を上る速さ。力 × 速さで出し、効率で割り、余裕を見て切り上げる
トルクとは?「回す力」は、力 × 腕の長さ
かたいボルトをレンチで回すとき、短いレンチでは回らなくても、長いレンチに持ちかえると、同じ力でぐっと回せます。押す力は同じなのに、回す効き目が違います。この「回す効き目」の大きさをトルクと呼びます。
自転車のペダルを思い浮かべてください。ペダルは、クランクという腕の先についています。ペダルを踏む力 × クランクの長さが、車輪を回そうとするトルクです。坂道で立ちこぎをするのは、体重をかけて踏む力を大きくし、トルクを増やすためです。
トルク T [N·m] = 力 F [N] × 腕の長さ(半径)r [m]
単位の N·m(ニュートンメートル)は、「N(力)× m(長さ)」をそのまま並べたものです。N は力の単位で、1 kg の物を持ち上げるのに要る力が約 9.8 N です。たとえば、クランクの長さ 0.17 m のペダルを 300 N(約30 kg 分の体重)で真下に踏むと、トルクは 300 × 0.17 = 51 N·m です。
| 自転車のたとえ | 本物の工場では |
|---|---|
| ペダルを踏む力 | モーターが出す力 |
| クランクの長さ | 回す腕の長さ(プーリー・ドラムの半径) |
| ペダルを回す速さ | モーターの回転速度(r/min) |
| 坂道・荷台の荷物 | 機械の負荷(荷・摩擦・水・空気) |
| 変速ギア | 減速機 |
| こぐ人の体力(どれだけ速く強くこげるか) | モーターの出力(kW) |
ここはたとえと違うところですが、人はペダルの位置で踏む力が変わり、モーターはぐるりと回る間ずっとほぼ同じトルクを出します。「回す力の強さ=トルク」という意味は同じです。

トルクの前に:力・仕事・パワーを1段ずつ
モーターの大きさ(kW)を決めるには、トルクのほかにパワー(出力)という考え方が要ります。力・仕事と一続きの言葉なので、順番に見ます。
段1:力 = 質量 × 加速度(重さは 質量 × 9.8)
重いもの(質量が大きい)ほど、また急に速くする(加速度が大きい)ほど、大きな力が要ります。これを式にしたのが力 = 質量 × 加速度です。
地球の上では、すべてのものが下向きに 9.8 m/s² の加速度で引かれています(重力加速度 g)。だから、ものを持ち上げるのに要る力(重さ)は、質量 × 9.8 です。200 kg の荷物なら 200 × 9.8 = 1,960 N です。
段2:仕事 = 力 × 動かした距離
力を加えて、ものをある距離だけ動かすことを仕事と呼びます。仕事は「力 × 動かした距離」で、単位は J(ジュール)です。10 kg の荷物(重さ 98 N)を 3 m の高さまで持ち上げる仕事は、98 × 3 = 294 J です。
段3:パワー = 仕事 ÷ かかった時間
同じ荷物を持って階段で2階まで上る人が2人います。1人はゆっくり歩いて20秒、もう1人は駆け上がって10秒。持ち上げた荷物と高さは同じなので、仕事は同じです。でも、駆け上がったほうが息が切れます。速くこなすほど、大きなパワーが要るからです。自転車でも、同じ坂を速く上るほど、脚にたくさんのパワーが要ります。
パワーは1秒あたりにこなす仕事で、単位は W(ワット)です。1 W は「1秒に 1 J の仕事」。モーターのカタログの kW(キロワット)は、1,000 W のことです。

段4:パワー = 力 × 速さ(モーターの kW はここから出る)
段2と段3をつなぐと、パワーをもっと使いやすい形にできます。
P = W ÷ t
P = (F × s) ÷ t
P = F × (s ÷ t)
P = F × v
= W(ワット)
F = 200 kg × 9.8 m/s² = 1,960 N
P = 1,960 N × 0.5 m/s = 980 W
980 W ÷ 1,000 = 0.98 kW
つまり、重いものを速く動かすほど、大きな kW が要るということです。桁の確かめ方として、「人が階段を上るパワーは数百 W」と覚えておくと便利です。体重 60 kg の人が1秒に 0.3 m ずつ高くなるペースで上ると、60 × 9.8 × 0.3 ≒ 176 W です。

回るもののパワー:トルク × 回る速さ
自転車のペダルで考えます。ペダルに力 F をかけたまま1回転させると、ペダルは半径 r の円の周りを1周します。円の周りの長さは 2π × r(π は約3.14)です。
s = 2π × r
1秒の回転数 = N ÷ 60
v = 2π × r × N ÷ 60
P = F × 2π × r × N ÷ 60
P = T × 2π × N ÷ 60
「2π × N ÷ 60」は角速度(ω、オメガ。単位 rad/s)と呼ばれます。「1秒に回る速さを表す数」と思っておけば十分です。
つまり、回るもののパワーは「トルク × 回る速さ」です。ペダルを強く踏むほど、速く回すほど、パワーは大きくなります。同じパワーなら、ゆっくり回すほどトルクは大きくなります。

9549(9550)はどこから来る?単位をそろえただけの数
カタログには、トルクと kW をつなぐ式として次の形がよく出てきます。
T [N·m] = 9549 × P [kW] ÷ N [r/min](P = T × N ÷ 9549)
この 9549 は、前の段の式を kW に直すだけで出てきます。
P [W] = T × 2π × N ÷ 60
P [kW] = T × 2π × N ÷ 60 ÷ 1,000
P [kW] = T × N ÷ (60 × 1,000 ÷ 2π)
60 × 1,000 ÷ (2 × 3.14159) = 60,000 ÷ 6.2832 ≒ 9,549.3
P [kW] = T × N ÷ 9549、T = 9549 × P ÷ N
T はトルク [N·m]、P は出力 [kW]、N は1分間の回転数 [r/min](rpm とも)です。この3つの単位で入れたときだけ 9549 が使えます。
P = 1.5 kW、N = 1,450 r/min
T = 9549 × 1.5 ÷ 1,450
9549 × 1.5 = 14,323.5
14,323.5 ÷ 1,450 ≒ 9.88 N·m
桁の確かめ方:4極のモーター(約1,450〜1,750 r/min)なら、トルク[N·m]は kW の数字のおよそ5〜7倍です。1.5 kW で 9.9 N·m なら、その範囲に入っています。
誘導電動機のトルクと出力の関係(すべりなど)は、同じ筆者が運営する電気のブログ shirasusolo.net のトルクと出力の関係で詳しく解説しています。

回転と直線をつなぐ:プーリー・ドラムの2つの式
工場の機械の多くは、モーターの回転を、ベルトやワイヤーの「まっすぐな動き」に変えて使います。そのつなぎ役が、ベルトを巻くプーリーや、ワイヤーを巻くドラムです。
自転車の後ろの車輪は、地面を押して自転車を前に進めます。車輪が1回転すると、自転車は車輪の円周の分だけ進みます。プーリーも同じで、1回転するとベルトは円周の分だけ進みます。
T [N·m] = F [N] × D [m] ÷ 2
π × D
V [m/min] = π × D [m] × N [r/min]
N = V ÷ (π × D)
この2つの式を、動く図で確かめます。プーリーの直径を変えると、同じ荷物でもトルクと回る速さが入れかわるように変わることがわかります。
動かして確かめる
計算例1のコンベア(ベルトを動かす力 588 N・ベルトの速さ 20 m/min)で、プーリーの直径だけを変えます。「動かす」を押してから直径を選びかえ、オレンジの曲がった矢印(トルク)の大きさと、プーリーの回る速さを見比べてください。
いまの様子:直径 150 mm(計算例1)。腕の長さは 0.075 m で、トルクは 44.1 N·m です。
動きは説明のための作り物です(数値は計算例1の例。回る速さの見た目は縮めています。プーリーの大きさは直径に比例させて描いています)。
見てほしいのは、直径を2倍(150→300 mm)にするとトルクも2倍(44.1→88.2 N·m)になり、回る速さは半分になるのに、パワー(196 W)は変わらないところです。
カタログの直径は mm が多いので、m に直してから入れます(150 mm = 0.15 m)。D を mm のまま使う資料では V = πDN ÷ 1,000 と書かれています。

減速機は自転車の「軽いギア」:回転を落としてトルクを増やす
工場のモーターは1分に1,500回前後で回るものが多く、コンベアには速すぎます。そこで歯車で回転を落とす減速機を入れます。
坂道で自転車のギアを軽くすると、ペダルはくるくる速く回るのに、自転車はゆっくり進みます。その代わり、踏む力は小さくて済みます。減速機はこの軽いギアです。モーター(ペダル)は速く回り、機械(車輪)はゆっくり、でも強い力で回ります。
なぜトルクが増えるのか。歯車は、パワー(トルク × 回る速さ)を、ほぼそのまま次へ渡すだけだからです。回る速さが 1/40 になれば、パワーを保つためにトルクは40倍になります。実際は歯車の摩擦で少し失われるので、その割合(伝動の効率)の分だけ目減りします。
N_負荷 = N_モーター ÷ i
T_負荷 × N_負荷 = η × T_モーター × N_モーター
T_負荷 = T_モーター × i × η
T_モーター = T_負荷 ÷ (i × η)、N_モーター = N_負荷 × i
減速比を変えたときに、モーターの回る速さとトルクがどう入れかわるかを、動く図で確かめます(数値は後の計算例1と同じです)。
動かして確かめる
計算例1のコンベアを、減速比だけ変えて回します。プーリー(出力軸)の回る速さと要る力はいつも同じです。「動かす」を押して減速比を選びかえ、左のモーターの回る速さと、オレンジの曲がった矢印(モーターのトルク)の大きさを見比べてください。
いまの様子:減速比 1/40(計算例1)。モーターは 1分に約1,700回まわり、トルクは 1.38 N·m で済みます。
動きは説明のための作り物です(数値は計算例1の例。効率 0.8 はどの減速比でも同じとしました。回る速さの見た目は縮めています。オレンジの矢印の長さはモーター側のトルクどうしで比べています)。
見てほしいのは、減速比を 1/5 から 1/40 にすると、モーターの回る速さは8倍になり、トルクは 11.03 から 1.38 N·m へ8分の1になるところです。モーターの出力 0.245 kW はどれも同じです。
減速比と効率の掛け方は、shirasusolo.net の減速機のトルクと回転速度の計算で、電験の過去問を例に解説しています。

モーターのトルク計算の流れ:6つの段
後半の4つの計算例は、すべてこの順番で解きます。
負荷の力を出す。コンベアは摩擦、昇降は重さ。ポンプ・ファンは流量と圧力から。
負荷の動力を出す。力 × 速さ(m/s)。
伝動の効率で割る。モーター軸の出力にします。
トルクと回転数を出す。プーリーの式と減速比で直し、9549 の式で検算。
余裕率を掛ける。計算に入れられなかった分を見込みます。
標準の容量に切り上げる。カタログの刻みのすぐ上を選びます。
効率は「割る」。掛けると小さく出てしまう
自転車のチェーンや歯車は、こいだ力の一部を摩擦で失います。ペダルで 100 のパワーを入れても、車輪に届くのは 90 くらい(効率 90%)。車輪に 90 届けたいなら、ペダルでは 90 ÷ 0.9 = 100 をこぐ必要があります。届けたいパワーを効率で割ると、モーターが出すべきパワーが出るのです。
効率は「出ていくパワー ÷ 入ってくるパワー」なので、入ってくる側(モーター)を出すには、負荷の動力を効率で割ります。効率を掛けると、必要な出力が小さく出て、力不足のモーターを選んでしまいます。

計算例1:ベルトコンベア(水平)の必要トルクと kW
水平のコンベアでは、持ち上げる力は要りません。要るのは、ベルトや荷がこすれる摩擦の力で、「摩擦係数 μ(ミュー。すべりにくさ)× 重さ」で表します。数値はすべて例です。
動く質量 m = 200 kg、摩擦係数 μ = 0.3、速さ V = 20 m/min、プーリー直径 D = 150 mm、伝動の効率 η = 0.8
F = 0.3 × 200 kg × 9.8 m/s² = 588 N
v = 20 m/min ÷ 60 = 0.333 m/s
P = 588 N × 0.333 m/s = 196 W
P_m = 196 W ÷ 0.8 = 245 W = 0.245 kW
N_p = 20 ÷ (3.14159 × 0.15) = 42.4 r/min
T_p = 588 N × 0.075 m = 44.1 N·m
N_m = 42.4 × 40 = 1,698 r/min
T_m = 44.1 ÷ (40 × 0.8) = 1.38 N·m
1.38 × 1,698 ÷ 9549 = 0.245 kW(段3と一致)
0.245 kW × 1.25 = 0.306 kW
つまり、このコンベアは 0.4 kW で足り、余裕は 0.4 ÷ 0.245 ≒ 1.6倍です。三菱電機のギヤードモータのカタログの式 P0 = μmV ÷ (6120η)(V は m/min)でも 0.245 kW になります。6120 は 102 × 60 で、力を kgf で扱っていた時代の係数です。
動き出しの加速にも力が要ります。1秒で 0.333 m/s まで加速するなら、質量 × 加速度 = 200 × 0.333 = 66.7 N が上乗せされ、モーター軸では約 0.16 N·m 増えて約 1.53 N·m です(プーリーなどの回りにくさ=慣性は省いた値)。
コンベアの計算で一番あやふやなのは摩擦係数です。ベルトがローラーの上を走るのか、すべり板の上をこするのかで、値は大きく変わります。摩擦係数を推定で置いたときは、余裕率を大きめにし、試運転でインバーターやモーターの電流をモニタして、計算と実際の差を確かめる順番で進めます。

傾斜コンベアは「坂を上る力」を足す
自転車で坂を上るとき、平地より重く感じるのは、重さの一部が坂に沿って後ろ向きに引っぱるからです。荷を坂の上へ運ぶコンベアでも、摩擦に加えて、この「坂の力」が負荷になります。
m × g × sinα
μ × m × g × cosα
F = m × g × (sinα + μ × cosα)
sin と cos は、坂の角度から「坂に沿った分」と「面を押す分」の割合を出す数です(電卓の sin・cos ボタンで出せます)。計算例1の条件(μ = 0.3)で、水平と比べた倍率を出すと次のとおりです。
この表の見方:10°傾けるだけで、必要な出力は約1.6倍になります。傾斜の機械を、水平の計算のまま選ばないようにします
| 傾き α | sinα + μcosα | 水平(μ = 0.3)との比 | 計算例1の条件での必要な出力 |
|---|---|---|---|
| 0°(水平) | 0.300 | 1.00倍 | 0.245 kW |
| 5° | 0.386 | 1.29倍 | 0.315 kW |
| 10° | 0.469 | 1.56倍 | 0.383 kW |
| 15° | 0.549 | 1.83倍 | 0.448 kW |
| 20° | 0.624 | 2.08倍 | 0.510 kW |

計算例2:昇降(巻き上げ)は、釣合いおもりで大きく変わる
荷物を上下に運ぶ昇降機では、摩擦ではなく重さそのものが負荷です。重さは摩擦より桁が大きくなりやすく、計算の結果も大きくなります。
昔の井戸の「つるべ」は、滑車の両側に桶をつけ、片方が上がるともう片方が下がるしくみです。両側がつり合っていれば、小さな力で水を上げられます。昇降機の釣合いおもりも同じで、かごの反対側におもりをつけ、モーターが持ち上げるのを「重さの差」だけにします。自転車でいえば、荷台の荷物を誰かが後ろから半分支えてくれるようなものです。

おもりなし・ありで計算して比べる
荷とかごの質量 m = 300 kg、速さ V = 10 m/min、ドラム直径 D = 200 mm、伝動の効率 η = 0.85
F = 300 kg × 9.8 m/s² = 2,940 N
v = 10 ÷ 60 = 0.1667 m/s
P = 2,940 N × 0.1667 m/s = 490 W
P_m = 490 ÷ 0.85 = 576 W = 0.576 kW
N_d = 10 ÷ (3.14159 × 0.2) = 15.9 r/min、T_d = 2,940 N × 0.1 m = 294 N·m
N_m = 15.9 × 100 = 1,592 r/min、T_m = 294 ÷ (100 × 0.85) = 3.46 N·m
3.46 × 1,592 ÷ 9549 = 0.577 kW(段3とほぼ一致。差は丸め)
0.576 × 1.25 = 0.72 kW
かご 200 kg + 荷 300 kg、釣合いおもり 350 kg(かご + 荷の半分)。速さ・ドラム・効率は2-1と同じ
200 + 300 − 350 = 150 kg
F = 150 kg × 9.8 m/s² = 1,470 N
P_m = 1,470 × 0.1667 ÷ 0.85 = 288 W
200 − 350 = −150 kg(向きが逆になるだけで大きさは同じ)
(200 + 300 + 350) kg × 0.1667 m/s² = 142 N
(1,470 + 142) × 0.1667 ÷ 0.85 = 316 W
おもりをつけると、一定の速さでの力は半分になります。その代わり動かす質量の合計は 500 kg から 850 kg に増え、加速の力の割合が大きくなります。
昇降の機械は、停電や非常停止のときに荷が落ちないよう、保持ブレーキが要ります。下降中はモーターが荷に回される(発電する)ので、インバーター駆動では回生の処理(減速時間・ブレーキ抵抗)も同時に決めます。人が乗る昇降機や、法令の対象になる揚重機は、この記事の計算とは別の決まりに従います。

計算例3:ポンプは「水を持ち上げる仕事」から出す
ポンプでは、1秒に何 kg の水を、何 m の高さまで持ち上げるかを考えます。自転車でいえば、水を坂の上へ運ぶ仕事です。
W = m × g × H
1秒の質量 = ρ × Q(水は ρ = 1,000 kg/m³)
P_w = ρ × Q × g × H
= kg·m²/s³ = W
H は全揚程で、水を上げる高さに、配管の中で失われる分を高さに直して足したものです。液が受け取るパワーを水動力、ポンプの軸に要るパワーを軸動力と呼び、軸動力 = 水動力 ÷ ポンプ効率 です。
流量 Q = 0.5 m³/min、全揚程 H = 30 m、水の密度 ρ = 1,000 kg/m³、ポンプ効率 0.6(性能曲線の運転点の値)
Q = 0.5 ÷ 60 = 0.00833 m³/s
P_w = 1,000 × 9.8 × 0.00833 × 30 = 2,450 W = 2.45 kW
P = 2.45 ÷ 0.6 = 4.08 kW
4.08 × 1.15 = 4.70 kW
T = 9549 × 4.08 ÷ 3,500 = 11.1 N·m
間違えやすいのは「運転点」です。渦巻ポンプの軸動力は多くの場合、流量が増えるほど大きくなり、バルブを開けたときに容量を超えることがあります。
ポンプとファンは、仕様書の1点だけで容量を決めず、性能曲線で「実際に使う範囲の中で軸動力が一番大きい点」を探してから決めます。仕様点の軸動力に余裕率を掛けた値が、使う範囲の最大の軸動力より小さいなら、最大のほうで選び直します。

計算例4:ファン(送風機)は「風量 × 全圧」
ファンは空気に圧力を与えて送るので、パワーは「1秒に送る量 × 圧力」です(圧力×面積=力、面積×速さ=流量 なので、力×速さ=圧力×流量)。
風量 Q = 100 m³/min、全圧 Pt = 1,000 Pa、ファン効率 0.65、ベルトの効率 0.95
Q = 100 ÷ 60 = 1.667 m³/s
P_a = 1.667 m³/s × 1,000 Pa = 1,667 W = 1.67 kW
P = 1.667 ÷ 0.65 = 2.56 kW
P_m = 2.56 ÷ 0.95 = 2.70 kW
2.70 × 1.15 = 3.10 kW
ファンは羽根車が大きく重いので、回りにくさ(慣性)が大きい機械です。計算では小さな容量に見えても、加速に時間がかかり、短い加速時間ではモーターやインバーターが過負荷になることがあります。容量のほかに、始動のしかたと加速時間を確かめます。
直入れ・Y-Δなど始動のしかたの違いは、shirasusolo.net の誘導電動機の始動法で原理から解説しています。
仕事で使うとき1:4つの計算例の結果を並べる
この表の見方:右の2列が「計算で出た値」と「実際に選ぶ容量」です。間の差が、余裕率と標準の容量の刻みによる余りです
| 用途(例) | 負荷の動力 | モーター軸の必要な出力 | 余裕率(例)を掛けた値 | 選んだ標準の容量 |
|---|---|---|---|---|
| コンベア(水平・200kg・20m/min) | 0.196 kW | 0.245 kW | 0.306 kW(×1.25) | 0.4 kW |
| 昇降(おもりなし・300kg・10m/min) | 0.490 kW | 0.576 kW | 0.72 kW(×1.25) | 0.75 kW |
| 昇降(おもりあり・加速中の最大) | — | 0.316 kW | 0.40 kW(×1.25) | 0.4 kW(ぎりぎり。判断表で再確認) |
| ポンプ(0.5m³/min・30m) | 2.45 kW(水動力) | 4.08 kW | 4.70 kW(×1.15) | 5.5 kW |
| ファン(100m³/min・1000Pa) | 1.67 kW(空気動力) | 2.70 kW | 3.10 kW(×1.15) | 3.7 kW |
おもりありの昇降は、余裕率を掛けると 0.395 kW で、0.4 kW の容量にほぼ届きます。こういう「ぎりぎり」の結果が出たときに、どちらに倒すかを決めるのが次の判断表です。

仕事で使うとき2:余裕率と標準の容量の決め方
自転車でいえば、地図で坂の角度はわかっても、向かい風や荷物のばらつきは読めません。その「読めない分」の見込みが余裕率です。
この表の見方:当てはまる行を全部拾い、一番厳しい行に合わせます
| 状況 | 余裕の考え方 | 理由 |
|---|---|---|
| 摩擦係数・効率を推定で置いた | 余裕を大きめにし、試運転で電流を確かめる | μ が 0.2 か 0.3 かで出力が1.5倍変わる |
| 同じ機械の実測の電流・動力がある | 実測の最大値に少しの余裕を足す | 推定の要素が少ない |
| 衝撃のある荷・運転時間が長い(減速機あり) | 減速機のカタログのサービスファクタを掛ける | 減速機は衝撃と運転時間で寿命が変わる |
| ポンプ・ファン | 使う範囲の最大の軸動力で選ぶ | 流量が増えると軸動力が増える |
| 低速で長く回す(インバーター) | 低速での連続トルクで確かめる | 冷却が弱くなる |
| 結果が標準の容量にぎりぎり | 上の行のどれかに当たるなら1段上 | 止まる損のほうが大きい |
標準の容量は、モーターのメーカーが出している出力の刻みです。三菱電機のギヤードモータのカタログでは 0.1・0.2・0.4・0.75・1.5・2.2・3.7・5.5・7.5・11・15・22kW の順に並んでいます。計算の値は、この刻みの「すぐ上」に切り上げます。
計算の値が標準の容量の刻みにぎりぎりのときは、判断表の上の行(推定の摩擦、衝撃、低速の連続運転)に当たるかどうかを先に見て、どれか1つでも当たれば1段上にします。逆に、どれにも当たらず実測の裏付けもあるなら、刻みを上げずに試運転の電流で確かめます。1段上げるとモーター・減速機・インバーター・ブレーカーまで大きくなるので、上げる理由を言えるときだけ上げます。
インバーターで回すときは、選んだモーターの定格電流からインバーターの容量を決めます。モーターの kW をそのままインバーターの kW にすると、加速中の電流で止まることがあります。
- 所要動力の式・標準の出力の並び・サービスファクタの考え方:三菱電機 ギヤードモータ カタログ 技術編
- 三菱電機 ギヤードモータ カタログ 技術編(選定のフロー・所要動力と所要トルクの式・選定例・標準の出力)
情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。
モーターのトルク計算でよくある間違い
この表の見方:左の列に心当たりがあれば、右の列のやり方で計算し直します。どれも、この記事の式の組み立てに戻れば防げます
| よくある間違い | 起きること | 正しいやり方 |
|---|---|---|
| 速さを m/min のまま P = F × v に入れる | 出力が60倍になる | m/s に直す(÷60)。6120 の式は m/min のまま使う形 |
| 直径と半径を取り違える | トルクが2倍・半分になる | T = F × D ÷ 2(D は直径)。mm は m に直す |
| 効率を掛けてしまう | 必要な出力が小さく出る | 負荷の動力 ÷ 効率 = モーター軸の出力 |
| 減速比の向きを逆にする | トルクが減速比の2乗倍ずれる | モーター軸のトルク = 負荷のトルク ÷ (i × η)。回転数は掛ける |
| 加速の力を省く | 加速中に止まる・トリップする | 一定の速さの計算に、加速の分を足して最大値で確かめる |
| 質量 kg を力 N のまま使う | 力が 1/9.8 になる | 力 = 質量 × 9.8 |
| ポンプを仕様点の1点で選ぶ | 流量が増えたとき過負荷になる | 性能曲線の使う範囲の最大の軸動力で確かめる |
計算ツール:用途を選んで必要 kW とトルクを出す
用途を選び、値を入れると、負荷の動力・モーター軸の必要な出力・トルク・余裕率を掛けた値・標準の容量の候補が出ます。式は計算例と同じです(加速の力は含みません)。
入れた数字は画面の中で計算するだけで、どこにも送信されません。初期値は計算例1(水平コンベア)の値です。標準の容量の並びは一般的な刻みの例で、実際の品ぞろえはメーカーのカタログで確かめてください。
結果は「一定の速さで回すときの値」です。加速が速い機械・回りにくい機械は、加速の力を足して確かめてください。サーボで位置決めをする機械は、実効トルクと慣性比を見る別の手順です。
モーターの容量を決めるチェックリスト
- □ 負荷の種類(コンベア・昇降のように速さで力が変わらないか、ポンプ・ファンか)を決めた
- □ 必要な値を単位つきでそろえた(m・μ・V・D・Q・H・Pt・η・N)
- □ 速さは m/s、直径は m に直して計算した
- □ 負荷の動力を効率で割って、モーター軸の出力にした
- □ 減速比の向き(トルクは割る・回転数は掛ける)を確かめた
- □ 加速の力を足して、最大のトルクを確かめた
- □ ポンプ・ファンは、使う範囲の最大の軸動力で確かめた
- □ 余裕率の判断表で、余裕を決めた理由を言える
- □ 標準の容量のすぐ上に切り上げた
- □ 低速の連続運転・保持ブレーキ・回生の要否を確かめた
よくある質問
まとめ:トルクはペダル、パワーは坂を上る速さ。力 × 速さで出し、効率で割り、余裕を見て切り上げる
- トルク = 力 × 腕の長さ(N·m)。自転車のペダルを踏む力 × クランクの長さ
- パワー = 仕事 ÷ 時間 = 力 × 速さ(W)。回るものでは P = T × 2πN ÷ 60
- 9549 は 60 × 1000 ÷ 2π。T = 9549 × P[kW] ÷ N[r/min] でトルクと kW を行き来する
- コンベア・昇降は「力 × 速さ」、ポンプは ρgQH、ファンは Q × Pt から出す
- 負荷の動力は効率で割り、減速機はトルクを i × η で割ってモーター軸に直す
- 余裕率は計算の不確かさと使われ方で決め、標準の容量のすぐ上に切り上げる
容量が決まったら、次はモーターを回すインバーターの選定、位置決めならサーボの容量選定に進みます(記事は公開しだい、ここに並べます)。
PLC・サーボ・インバーターを実務で扱ってきた電気・制御の設計者です。制御の記事は、選び方・設定の順番・止まったときの切り分けを、実務の判断のしかたから書いています。機械(材料・機械要素・図面)の記事は本職ではないため、JIS とメーカーの技術資料を調べてまとめ、出典を示しています。


