ボルトの規格と寸法表|六角ボルトM3〜M24の早見表とスパナのサイズ

大きさの違う3本の六角ボルトとナットが定規の上に並んだイラスト。M10 はサイズの札 機械要素

六角ボルトの規格と寸法は JIS B 1180 で決まっています。「M10」の M はメートルねじ、10 はねじの外径 10 mm のことで、この数字が決まるとピッチ(並目 1.5 mm)、二面幅(スパナのサイズ。ISO の寸法で 16 mm、昔の JIS では 17 mm)、頭の高さ(6.4 mm)が決まります。

長さだけは自分で決めます。ナットで締めるなら「板の厚さ+座金+ナットの高さ+少しの余り」から、規格にある長さを選びます。

この記事では、ボルトを服のサイズ表にたとえて説明します。「M10」はサイズの札、寸法表はサイズ表の実寸です。M3〜M24 の早見表もあります。

出典

情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

調べてまとめたこの記事は、筆者(電気・制御の設計者)の本職の外の内容です。JIS の規格票のプレビュー、メーカーの技術資料、大学の講義資料を調べてまとめました。寸法の全部の値・許容差は、規格票で確かめてください。

ボルトとは?ねじとどう違うの?

ひとことで言うとボルトは、ナットやめねじと組み合わせて、部品どうしを締めつける「おねじ」の部品です。

ねじには、外側に山があるおねじと、穴の内側に山があるめねじがあります。ボルトはおねじの一種で、頭が六角形のものを六角ボルトと呼びます。スパナで回せるので、機械の部品や架台、制御盤の取り付けなど、工場のあちこちで使われます。

ボルトだけでは何も留められません。相手がいります。穴を通してナットで締めるか、部品に切っためねじ(タップ穴)にねじ込むかのどちらかです。

たとえると

ボルトは服、規格はサイズ表です。服に「M」「L」の札があるように、ボルトにも「M10」のようなサイズの札があります。札を見れば、肩幅や着丈の実寸がサイズ表で決まっているのと同じで、M10 と言えば頭の幅や高さが規格で決まっています。

この記事では、このたとえを最後まで使います

服のサイズ表のたとえボルトでは
サイズの札(S・M・L)呼び(M3・M10・M24 など)
サイズ表の実寸(肩幅・着丈)寸法表(ピッチ・二面幅・頭の高さ)
着丈は自分で選ぶ長さ L は自分で選ぶ(規格の長さの中から)
生地の丈夫さ強度区分(8.8 など)と材質

ここで「え、ねじとボルトは別物?」と思った方へ。ざっくり言うと、ボルトは「ねじ」という大きな仲間の一員です。ドライバーで回す小ねじ(なべ小ねじなど)と区別して、スパナで回す太めのおねじをボルトと呼ぶことが多い、という程度の使い分けです。

2枚の板をボルトとナットではさんで締める使い方と、金具を台のタップ穴に直接ねじ込む使い方を並べたイラスト

「M10×40」の読み方:太さ×長さ

ひとことで言うとM はメートルねじ、10 はねじの外径 10 mm、40 は首の下から先までの長さ 40 mm です。

ボルトを注文するときは、「六角ボルト M10×40」のように書きます。読み方を1つずつ見ていきましょう。

長さ L に頭の高さは入りません。ここは間違えやすいところです

書き方意味たとえ
Mメートルねじ(ISO のねじ。山の角度は 60°)サイズ表の種類(日本サイズ・海外サイズ)
10呼び径 d:ねじの山の外側の直径が 10 mmサイズの札(M・L)
×40長さ L:頭の下(首の下)から先までが 40 mm着丈
(×1.25 などが付く場合)細目ねじのピッチ。書かなければ並目特注の袖の長さ

並目(なみめ)は、ふつうに使うねじの山の間隔で、何も書かなければ並目です。細目(ほそめ)は山の間隔が細かいねじで、「M10×1.25」のようにピッチを書き足します。並目と細目の違いとピッチの一覧は、ねじの規格の記事でくわしく扱います(公開しだい、ここにリンクします)。

注意|ここで間違えやすい 長さ L は頭を含みません。首の下から先までです。ボルトを並べて長さを比べるときに、頭まで含めて測ると 1 サイズ長いボルトを選んでしまいます。
たとえると

服の着丈を肩から測る決まりがあるように、ボルトの長さも「首の下から」測る決まりです。測り始めの位置を間違えると、同じ服でもサイズが違って見えます。

六角ボルト M10×40 の読み方。M はメートルねじ、10 はねじの外径、40 は首の下から先までの長さ

六角ボルトの各部の名前:頭・首・円筒部・ねじ部

ひとことで言うと寸法表に出てくる記号は、d・P・s・e・k・b・L の7つを覚えれば読めます。

寸法表には、アルファベットの記号がずらりと並びます。記号は規格で決まっていて、メーカーの表でも同じ記号が使われます。

上の4つ(d・P・s・e)は太さで決まる寸法、下の3つは長さ方向の寸法です

記号名前どこの寸法か何に使うか
d呼び径ねじの外側の直径サイズの札。穴の大きさを決める
Pピッチとなりの山との間隔1回転で進む距離(1条ねじの場合)
s二面幅(対辺)頭の平らな面と面のあいだスパナ・ソケットのサイズ
e対角頭の角と角のあいだ工具を回すすき間・座ぐりの大きさ
k頭部の高さ頭の厚さ盤や機械の中で頭が当たらないか
bねじ部の長さねじが切ってある部分の長さナットがねじの上に乗るか
L呼び長さ首の下から先まで注文する長さ
たとえると

サイズ表で「肩幅」「身幅」「着丈」「袖丈」と測る場所に名前があるように、ボルトにも測る場所ごとに名前があります。名前さえわかれば、どのメーカーの表も同じように読めます。

ボルトには、全体にねじが切ってある全ねじと、首の下にねじのない円筒の部分がある半ねじがあります。JIS B 1180 の本体では、半ねじの六角ボルト(ISO 4014 など)と全ねじの六角ボルト(ISO 4017 など)を、どちらも「六角ボルト」として1つの規格にまとめています。

六角ボルトの各部の名前。頭を上から見た二面幅 s と対角 e、横から見た頭の高さ k・ねじ部の長さ b・呼び長さ L・呼び径 d

規格は JIS B 1180:本体(ISO)と附属書JA の2つの系統がある

ひとことで言うと今の JIS の本体は ISO と同じ寸法です。昔からの寸法は「附属書JA」に残っています。

六角ボルトの規格は JIS B 1180(六角ボルト)です。日本規格協会の規格票によると、今の版は 2014 年に改正されたもので、国際規格の ISO 4014〜ISO 4018・ISO 8676・ISO 8765 を基にしています。

ただし、日本では ISO と少し違う寸法のボルトも長く使われてきました。そこで規格票には、ISO によらない六角ボルトの寸法が附属書JAとして別に載っています。つまり、同じ「JIS の六角ボルト」でも、本体の寸法と附属書JA の寸法の2つの系統があります。

同じ M10 でも、系統によって二面幅などが違うことがあります(⑦で説明します)

系統中身見分け方の目安
本体(ISO による)ISO と同じ寸法。部品等級 A・B・C(仕上がりの精度)で分かれるカタログに「ISO」「JIS B 1180 本体」「部品等級A」など
附属書JA(ISO によらない)日本で昔から使われてきた寸法カタログに「附属書」「旧JIS」など
たとえると

同じ「M サイズ」の服でも、日本のブランドと海外のブランドで肩幅が少し違うことがあります。ボルトも、ISO の寸法と日本の昔からの寸法で、頭の大きさが少し違うサイズがあります。

この記事の早見表は、JIS B 1180 の本体(部品等級A)の基準寸法を、ミスミの技術データで確かめた値です。附属書JA の寸法を使う場合は、規格票かメーカーのカタログで確かめてください。

出典

情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

JIS B 1180 の本体(ISO による寸法)と附属書JA(昔からの寸法)の2つの系統と、M10 の二面幅 16 mm と 17 mm の違い

六角ボルトの寸法表 M3〜M24(早見表)

ひとことで言うと呼びが大きくなるほど、ピッチ・頭の幅・頭の高さ・ねじ部が、決まった割合で大きくなります。

よく使う M3〜M24 の主な寸法を1つの表にまとめます。服のサイズ表の「実寸」にあたる部分です。

JIS B 1180 本体・部品等級A の基準寸法(ミスミの技術データで確認)。b は長さ L が 125 mm 以下のときの参考値。許容差・e・その他の寸法は規格票で確かめてください

呼び d並目ピッチ P二面幅 s(スパナ)頭部の高さ kねじ部の長さ b(参考)
M30.5 mm5.5 mm2 mm12 mm
M40.7 mm7 mm2.8 mm14 mm
M50.8 mm8 mm3.5 mm16 mm
M61 mm10 mm4 mm18 mm
M81.25 mm13 mm5.3 mm22 mm
M101.5 mm16 mm6.4 mm26 mm
M121.75 mm18 mm7.5 mm30 mm
M162 mm24 mm10 mm38 mm
M202.5 mm30 mm12.5 mm46 mm
M243 mm36 mm15 mm54 mm

M14 は ISO の表では「なるべく使わない側」に分けられたサイズなので、表から外しました(並目ピッチ 2 mm・二面幅 21 mm・頭の高さ 8.8 mm)。

たとえると

サイズ表を横に見ると、S から L になるにつれて、肩幅も着丈も少しずつ大きくなります。ボルトも同じで、呼びが大きいほど全部の寸法がそろって大きくなります。

数字を並べてみると、目安の関係が見えてきます。二面幅 s は呼び径のおよそ 1.5〜1.8 倍、頭の高さ k はおよそ 0.6〜0.7 倍です。例えば M10 なら、s は 16 mm(1.6 倍)、k は 6.4 mm(0.64 倍)です。現物の太さだけ測れれば、頭の大きさの見当がつきます。

出典

情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

M3〜M24 の六角ボルトの二面幅・呼び径・頭の高さを並べた折れ線グラフ

二面幅はスパナのサイズ:M10 は 16 mm と 17 mm がある

ひとことで言うと二面幅 s は工具のサイズそのものです。M10・M12 は、ISO と昔の JIS で 1 mm 違います。

スパナやソケットに刻まれた「16」「17」といった数字は、二面幅 s のことです。ボルトの呼び(M10)ではありません。M10 のボルトを回すなら、ISO の寸法では 16 mm の工具を使います。

ここで間違えやすいのが、ISO の寸法と昔の JIS の寸法(附属書JA)で、二面幅が違うサイズがあることです。

ISO の値はミスミの技術データ、附属書JA の値は鍋屋バイテック会社の六角ナットの技術資料(JIS B 1181:2014 附属書JA)で確かめた二面幅です

呼びISO の寸法(JIS 本体)昔からの寸法(附属書JA)
M1016 mm17 mm
M1218 mm19 mm
M1421 mm22 mm
M8・M16・M20・M24 など13・24・30・36 mm同じ

ミスミの技術データにも、「現行流通している六角ボルト、六角ナット M10、M12 の対辺 S は旧 JIS によるものもあります」と注意書きがあります。工場の中では、両方の寸法のボルトが混ざっていることがあるということです。

たとえると

同じ「26 cm」の靴でも、メーカーによって履き心地が違うように、同じ M10 でも頭の幅が 16 mm のものと 17 mm のものがあります。工具は「ボルトの札」ではなく「頭の実寸」に合わせて選びます。

では、動く図で、呼びを変えたときに頭の大きさとねじ部がどう変わるかを見てみましょう。

動かして確かめる

呼び(M3〜M24)を選ぶと、左に頭を上から見た形(二面幅と対角)、右に横から見た形(頭の高さとねじ部)が、実寸の比で描き変わります。M10・M12 では「昔の寸法」も試してください。

頭を上から見る(実寸の比) 横から見る(縮尺は左の半分) – – – –

–

寸法は JIS B 1180 本体・部品等級A の基準寸法(ミスミの技術データ)と、附属書JA の二面幅(M10 17 mm・M12 19 mm)。横から見た図の長さ L は「ねじ部+呼び径の2倍」とした説明用の例です。

見てほしいのは、呼びが大きくなるほど頭の幅も高さもそろって大きくなること、そして M10・M12 だけは「昔の寸法」を選ぶと二面幅が 1 mm 大きくなることです。

出典

情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

スパナで六角ボルトの頭の平らな2面をはさむ様子と、ソケットで頭を回す様子のイラスト

計算してみよう1:二面幅から「角と角」の幅を出す

ひとことで言うと対角 e = 二面幅 s ÷ cos30°(約 1.155 倍)。M10 なら約 18.5 mm です。

この計算をするのは、工具を回すすき間や、頭を沈める穴(座ぐり)の大きさを考えるためです。ボルトの頭は回すと角が外側を通るので、二面幅 s ではなく、角と角の幅(対角 e)で場所をとります。

式の出どころ:正六角形の形から

六角ボルトの頭は正六角形です。正六角形は、中心から見て 60° ずつの正三角形 6 つでできています。平らな面までの距離(二面幅の半分)と、角までの距離(対角の半分)のあいだには、30° の角をはさんだ直角三角形ができます。

s ÷ 2 = (e ÷ 2) × cos30° → e = s ÷ cos30°

cos30°(コサイン30度)は約 0.866 です。直角三角形の「斜めの辺」に対する「となりの辺」の長さの割合で、角までの距離に 0.866 を掛けると、平らな面までの距離になる、という意味です。

計算例
計算例1:M10(二面幅 16 mm)の対角を出す
① 二面幅を確かめる(ISO の寸法)
s = 16 mm
② cos30° の値
cos30° ≒ 0.866
③ 式に入れる
e = 16 mm ÷ 0.866
④ 割り算する
e ≒ 18.48 mm
⑤ 規格の表の値と比べる(e の最小)
17.77 mm(角が少し丸く落ちている分だけ小さい)
M10 の頭が回ると、直径およそ 18.5 mm の円の中を角が通る。工具の分も含めて、まわりに余裕を残す

つまり、頭のまわりには、二面幅より 1〜2 割ほど広い場所が要るということです。実際には工具の厚みも加わるので、盤や機械の中でボルトを回す場所は、工具を当てて確かめるのが確実です。ミスミの技術データにも、e(最小)= 1.14 × s(最小)という関係が注に書かれています。

たとえると

四角いテーブルを回すと、角が壁にぶつかります。テーブルの幅(二面幅)だけでなく、角から角までの長さ(対角)の分、まわりを空けておく必要があるのと同じです。

出典

情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

正六角形の二面幅 s と対角 e の関係。e = s ÷ cos30° で M10 は約 18.5 mm

ねじ部の長さ b:半ねじボルトは、ねじのない部分がある

ひとことで言うと半ねじのねじ部の長さは、L が 125 mm 以下なら「2 × 呼び径 + 6 mm」になっています。

半ねじのボルトは、首の下にねじのない円筒の部分(円筒部)があり、先のほうだけにねじが切ってあります。このねじの部分の長さが b です。ナットは、ねじのある部分でしか締まりません。

早見表の b を見ると、きれいな関係があります。M10 は 26 mm、M12 は 30 mm、M24 は 54 mm で、どれも「呼び径の 2 倍に 6 mm を足した値」です。

b = 2 × d + 6 mm(L ≦ 125 mm のとき)

ミスミの技術データの b(参考)と比べて、式と表が一致することを確かめました。L が 125 mm を超えると b はもう少し長くなります(M16 で 44 mm など)

呼び2 × d + 6表の b
M62 × 6 + 6 = 1818 mm
M102 × 10 + 6 = 2626 mm
M162 × 16 + 6 = 3838 mm
M242 × 24 + 6 = 5454 mm
たとえると

長袖のシャツでも、袖の長さはサイズで決まっていて、着丈を長くしても袖は同じです。半ねじボルトも、長さ L を長くしても、ねじ部の長さ b はほぼ同じで、円筒部だけが長くなります。

では、長さ L がねじ部 b より短いボルトはどうなるかというと、全体がねじの「全ねじ」のボルトを使うことになります。短いボルトは全ねじ、長いボルトは半ねじ、と覚えておくと、カタログの品ぞろえが読みやすくなります。

出典

情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

M10×45・80・120 の半ねじボルトで、ねじ部の長さ b は 26 mm のまま円筒部だけが長くなる図

計算してみよう2:ナットで締めるボルトの長さを決める

ひとことで言うと長さ = 板の厚さの合計 + 座金 + ナットの高さ + 少しの余り。答えを規格の長さに切り上げます。

ボルトの太さは、かかる力や穴の大きさで先に決まっていることが多いです。最後に残るのが長さです。短いとナットに届かず、長すぎると先が飛び出して、ほかの部品や人に当たります。

式の出どころ:重ねたものの厚さを足すだけ

ボルトは、頭とナットのあいだに板をはさんで締めます。だから必要な長さは、はさむものの厚さを全部足し、ナットの先に少し余りを残した長さです。

L ≧ 板の厚さの合計 + 座金の厚さ + ナットの高さ m + 余り

計算例
計算例2:厚さ 16 mm と 12 mm の板を M10 のボルトとナットで締める(数値は例)
① はさむ板の厚さを足す
16 mm + 12 mm = 28 mm
② 平座金の厚さを足す(ナット側に1枚。例)
28 mm + 2 mm = 30 mm
③ ナットの高さを足す(M10 の六角ナット スタイル1 は 8.4 mm)
30 mm + 8.4 mm = 38.4 mm
④ 余りを足す(例:ねじ山 3 つ分。ピッチ 1.5 mm)
3 × 1.5 mm = 4.5 mm → 38.4 + 4.5 = 42.9 mm
⑤ 規格の長さから、42.9 mm 以上でいちばん近いものを選ぶ
40・45・50 … → 45 mm
⑥ 半ねじのとき、ねじ部 b を確かめる(M10 は 26 mm)
円筒部 = 45 − 26 = 19 mm
⑦ ナットの座る位置(頭からの距離)と比べる
30 mm > 19 mm → ナットはねじ部の上に座る
M10×45 を選ぶ。ナットが座る位置(30 mm)が円筒部(19 mm)より先なので、ナットはねじにかかって締まる

⑦の確かめを忘れると、「ナットが円筒部に乗ってしまい、いくら回しても締まらない」ということが起こります。板が薄くてボルトが長いときほど起こりやすいので、そのときは全ねじのボルトを選びます。

余りを何山にするかは、用途や社内の決まりで違います(例えば鋼構造の高力ボルトでは、余りの長さの決め方が別に定められています)。この計算例の「3 山」は説明のための例です。ナットの高さと種類は、ナットの記事でくわしく扱います(公開しだい、ここにリンクします)。

たとえると

服の着丈は「体の長さ+少しのゆとり」で選びます。ゆとりがないと動けず、ありすぎると裾を踏みます。ボルトの長さも「はさむものの厚さ+少しの余り」で選びます。

出典

情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

板16 mm・板12 mm・座金2 mm・ナット8.4 mm・余り4.5 mm を積み上げて合計42.9 mm、M10×45 を選ぶ図

計算してみよう3:タップ穴にねじ込むボルトの長さ

ひとことで言うとめねじにかかる長さは、鋼なら呼び径の 1.2 倍以上が目安。材料が弱いと 2 倍以上にします。

ナットを使わず、部品に切っためねじ(タップ穴)にボルトをねじ込むこともよくあります。このとき大事なのは、ボルトがめねじにどれだけ深くかかっているかです。浅いと、強く締めたときにめねじの山がつぶれて抜けてしまいます。

明治大学の機械要素設計の講義資料では、簡単な目安として「おねじの呼び径の 1.2 倍以上のめねじ深さを確保」(SS400 という一般的な鋼を想定)とし、めねじ側の材料が弱いときや使い方が厳しいときは 2.2 倍くらいにする、という例が示されています。

L ≧ 取り付ける部品の厚さ + 座金の厚さ + かかる長さ(1.2 × d など)

計算例
計算例3:厚さ 8 mm の金具を、鋼の台に M8 のボルトで留める(数値は例)
① かかる長さの目安(鋼なので 1.2 倍)
1.2 × 8 mm = 9.6 mm
② 金具の厚さと平座金を足す(座金は例)
8 mm + 1.6 mm = 9.6 mm
③ 必要な長さ
9.6 mm + 9.6 mm = 19.2 mm
④ 規格の長さに切り上げる
20 mm
⑤ 実際にかかる長さを確かめる
20 − 9.6 = 10.4 mm ≧ 9.6 mm → 足りる
⑥ 台が鋼より弱い材料なら(2.2 倍の例)
8 + 1.6 + 2.2 × 8 = 27.2 mm → 30 mm
鋼の台なら M8×20、鋼より弱い材料の台なら M8×30 が目安。M8 の b は 22 mm なので、20 mm は全ねじになる

もう1つ大事なのが、めねじの穴の深さです。ボルトの先が穴の底に当たると、締めたつもりでも部品を押さえる力がかかりません。穴はボルトが入る長さより深く切ってあるかを図面で確かめます。

たとえると

壁にフックをねじ込むとき、浅いとすぐ抜け、柔らかい壁ほど深くねじ込む必要があります。ボルトとタップ穴も同じで、相手の材料が弱いほど、深くかける必要があります。

出典

情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

M8 のボルトをタップ穴にかける長さ。鋼は 1.2 × d で M8×20、弱い材料は 2.2 × d で M8×30

頭の数字「8.8」は強さのしるし:強度区分と材質

ひとことで言うと頭に刻まれた「8.8」などの数字は、ボルトの強さ(強度区分)です。寸法とは別に選びます。

同じ M10×45 でも、強さの違うボルトがあります。鋼のボルトの強さは強度区分で表し、JIS B 1051(炭素鋼及び合金鋼製締結用部品の機械的性質)で決まっています。

計算例
読み方の例:強度区分 8.8
① 左の数字 × 100 = 引張強さ(最小)
8 × 100 = 800 N/mm²
② 右の数字 ÷ 10 = 引張強さに対する降伏点の割合
8 ÷ 10 = 0.8
③ 降伏点(これ以上で伸びたまま戻らない)
800 × 0.8 = 640 N/mm²
8.8 は「1 mm² あたり 800 N まで切れず、640 N を超えると伸びたまま戻らない」強さ

N/mm²(ニュートン毎平方ミリメートル)は、1 mm² の断面あたり何 N の力に耐えるかという単位です。強度区分には 4.6・8.8・10.9・12.9 などがあり、選び方は強度区分の記事で、締める強さ(締め付けトルク)の一覧は締め付けトルクの記事で扱います(どちらも公開しだい、ここにリンクします)。

ステンレスのボルトは、「A2-70」のように材質の種類と強さを組み合わせた別の表し方をします。さびにくい代わりに、同じ太さの強い鋼のボルトより強度が低いものが多いので、置きかえるときは強さを確かめます。

たとえると

同じ M サイズの服でも、薄手の生地と厚手のデニムでは丈夫さが違います。寸法(サイズ)と強さ(生地)は別々に選ぶ、と覚えておきましょう。

出典

情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

同じサイズの薄手のシャツとデニムのシャツ、同じ M10 の鋼とステンレスのボルトを並べ、寸法と強さは別に選ぶことを示すイラスト

電気・制御の設計者から見た注意点:端子のボルトは「カタログのトルク」で締める

ひとことで言うと盤の中の端子にもボルトのサイズがあり、締める強さは端子台・機器のカタログで決まっています。

制御盤の中にも、ボルトとねじはたくさんあります。特に太い電線をつなぐ端子台や機器の端子では、M10 以上の太い端子ねじに六角ボルトが使われます。例えば東洋技研の端子台のカタログでは、端子ねじの呼びごとに締付トルクが決められていて、M10・M12 の端子には「六角ボルト+ばね座金・平座金」が付いています。平座金は頭の下に敷く平らな輪、ばね座金は切れ目のあるばねの輪です(座金の種類は座金の記事で扱います。公開しだいリンクします)。

東洋技研 端子台総合カタログ(2023年9月版)の各機種の値。ほかのメーカー・機器は、その取扱説明書の値で締めます

端子ねじの呼び締付トルク(東洋技研の端子台)端子ねじの形
M30.5〜1.2 N·m小ねじ
M3.50.8〜1.4 N·m小ねじ
M41.2〜1.8 N·m小ねじ
M52.0〜3.0 N·m小ねじ
M62.5〜3.7 N·m小ねじ
M86.0〜9.0 N·m小ねじ・六角ボルト(機種による)
M1010.0〜14.7 N·m六角ボルト(ばね座金・平座金付き)
M1214.0〜20.6 N·m六角ボルト(ばね座金・平座金付き)
M1625.0〜37.3 N·m六角ボルト(ばね座金・平座金付き)

N·m(ニュートンメートル)は、ねじる力の強さの単位です。トルクの考え方は、モーターのトルク計算の記事で、式の出どころから説明しています。

モーターのトルク計算をやさしく図解|式の出どころと必要kWの出し方
あわせて読みたい
モーターのトルク計算をやさしく図解|式の出どころと必要kWの出し方

N·m って何?ねじる力の強さが式の出どころからわかる

たとえると

同じ M サイズの服でも、洗濯表示は服ごとに違います。端子のボルトも、同じ M10 でも「何 N·m で締めるか」は端子台や機器ごとに決まっていて、その服(機器)の表示に従います。

設計者の判断のコツ(電気・制御の目線)

端子のボルトは、機械の締め付けトルクの一覧表ではなく、端子台や機器のカタログ・取扱説明書に書かれたトルクで締めることをおすすめします。端子は銅の金具や樹脂の台と組み合わさった部品で、ボルトそのものの強さいっぱいまで締める前提ではないからです。トルクの値は、配線の図面か作業の手順書に、端子の呼びと一緒に書いておくと、作業する人が迷いません。

注意|ここで間違えやすい

端子のボルトを締め直すときは、必ず電源を切り、検電器やテスターで電圧がないことを確かめてから行います。作業の可否は、社内のルールと機器の取扱説明書に従ってください。

出典

情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

端子台カタログの端子ねじ M3〜M16 の締付トルクの範囲のグラフ。M10 以上は六角ボルト

盤や架台のボルトは、呼びの種類をしぼると間違いが減る

ひとことで言うと工具・予備・図面をそろえるために、使うボルトの呼びを数種類に決めておきます。

制御盤の中には、機器を取り付ける板、ダクト、レール、アースの端子など、ボルトやねじで留める所がたくさんあります。ここでいろいろな呼びを使うと、作業のたびに工具を持ちかえることになり、M10 の 16 mm と 17 mm のような取り違えも起きやすくなります。

たとえると

家族の服のサイズがばらばらだと、洗濯物をたたむたびに「これは誰の?」と迷います。サイズをそろえれば迷いません。盤のボルトも、呼びをそろえると工具と予備が少なくて済みます。

設計者の判断のコツ(電気・制御の目線)

盤や架台の取り付けに使うボルトは、呼びの種類をできるだけ少なくそろえるのがおすすめです。例えば M5・M6・M8 の3種類のように決めておくと、用意する工具(二面幅)と予備の部品が少なくて済み、M10 の 16 mm と 17 mm のような取り違えも起きにくくなります。図面には呼びと長さ(M6×16 など)まで書きます。

端子台の種類と選び方をやさしく図解|ねじ式とスプリング式
あわせて読みたい
端子台の種類と選び方をやさしく図解|ねじ式とスプリング式

端子台のねじ式とスプリング式、どう選ぶ?が表でわかる

電源を切った制御盤の中で、太い電線の端子のボルトをトルクレンチで締めるイラスト

ボルトを選ぶときのチェックリスト

ひとことで言うと呼び → 系統(二面幅) → 長さ → 全ねじか半ねじか → 強度区分と材質 → 締め方、の順に決めます。
たとえると

服を買うときに「サイズ → 着丈 → 生地 → 洗濯表示」と順に見るように、ボルトも決める順番を決めておくと迷いません。

六角ボルトの選定チェックリスト
  • □ 呼び(M8・M10 など)を、穴の大きさ・かかる力・ほかの部品と合わせて決めた
  • □ ISO の寸法(本体)か昔の寸法(附属書JA)かを確かめ、二面幅(工具のサイズ)を決めた
  • □ 工具を回す場所が、対角 e と工具の厚みの分だけ空いている
  • □ ナットで締めるなら、板+座金+ナットの高さ+余りで長さを計算し、規格の長さに切り上げた
  • □ 半ねじなら、ナットの座る位置が円筒部より先(ねじ部の上)になっている
  • □ タップ穴なら、かかる長さ(鋼で 1.2 × d 以上)と穴の深さを確かめた
  • □ 強度区分(8.8 など)と材質(鋼・ステンレス)を決めた
  • □ 締め付けトルクを決めた(端子は端子台・機器のカタログの値)
  • □ 図面に呼び・長さ・強度区分(必要なら規格の系統)を書いた
ボルトを決める順番。呼び・系統・長さ・ねじ部・強さと材質・締め方

よくある質問

Q. ボルトの M10 の 10 は何の寸法ですか?

A. ねじの山の外側の直径(呼び径)が 10 mm という意味です。頭の幅や長さではありません。

Q. M10 のボルトのスパナは何 mm ですか?

A. ISO の寸法では二面幅 16 mm です。昔の JIS の寸法のボルトは 17 mm なので、頭の実寸を確かめます。

Q. ボルトの長さはどこからどこまでですか?

A. 頭の下(首の下)からねじの先までの長さです。頭の高さは長さに含めないので、測るときは首の下から測ります。

Q. ボルトの並目と細目の違いは何ですか?

A. ねじの山の間隔(ピッチ)の違いです。何も書かなければ並目で、細目は M10×1.25 のようにピッチを書きます。

Q. ボルトの規格は何で決まっていますか?

A. 六角ボルトは JIS B 1180 で、本体は ISO と同じ寸法、昔からの寸法は附属書JA にまとめられています。

まとめ:ボルトは「サイズの札」と「実寸」を分けて読む

POINT
  • 六角ボルトの規格は JIS B 1180。本体は ISO の寸法、昔からの寸法は附属書JA にある
  • M10 は「ねじの外径 10 mm」のサイズの札。ピッチ・二面幅・頭の高さは規格で決まる
  • 二面幅 s は工具のサイズ。M10 は 16 mm(ISO)と 17 mm(昔の JIS)があるので頭の実寸で確かめる
  • 回す場所は対角 e = s ÷ cos30°(約 1.155 倍)で考える
  • 長さは「はさむものの厚さ+座金+ナットの高さ+余り」を規格の長さに切り上げる。半ねじはナットがねじ部に乗るか確かめる
  • 盤の中の端子のボルトは、端子台・機器のカタログのトルクで締める

ボルトが決まったら、相手になるナットや座金、端子台の選び方も確かめておきましょう。

S
シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

PLC・サーボ・インバーターを実務で扱ってきた電気・制御の設計者です。制御の記事は、選び方・設定の順番・止まったときの切り分けを、実務の判断のしかたから書いています。機械(材料・機械要素・図面)の記事は本職ではないため、JIS とメーカーの技術資料を調べてまとめ、出典を示しています。

次に読むべき記事

ボルトの寸法がわかったら、盤の中でボルトやねじを使う部品の選び方も読んでおきましょう(ナット・座金・ねじの規格の記事は公開しだい、ここに並べます)。

制御盤とは?中身の機器と設計の流れをやさしく図解|熱の計算つき
まずはここから
制御盤とは?中身の機器と設計の流れをやさしく図解|熱の計算つき

ボルトで組む制御盤の中身と設計の流れ。全体像がわかる

ロードマップを見る →
この記事の続きはこちら
タイトルとURLをコピーしました