スイッチング電源(DC24V)の選び方|容量の計算と配線を図解

DC24V電源は盤の元栓。DINレールに付いたスイッチング電源から電気の流れが出ていくイラスト 制御盤

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スイッチング電源(DC24V)は、工場の AC100V・200V を、PLC やセンサが使う DC24V に作り直す装置です。容量は、24V につなぐ機器の電流を全部足し、余裕を足して、盤の温度で出せる量が減る分(ディレーティング)で割って決めます。

そのうえで、電源を入れた瞬間の大きな電流(突入電流)で止まらないか、遠い機器は電線で電圧が下がりすぎないかを確かめます。

この記事では、スイッチング電源を盤の中の「水道の元栓とタンク」にたとえて説明します。最後は、自分の盤に合う電源の大きさを計算で決められるところまで進みます。

出典

情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

スイッチング電源とは?盤の中の「水道の元栓」

ひとことで言うと工場の AC100V・200V を、PLC やセンサが使う DC24V に作り直して配る箱です。

工場の壁のコンセントや配電盤から来る電気は、AC(交流)の 100V や 200V です。向きが1秒に50回や60回入れかわる、勢いの強い電気です。

ところが、PLC・センサ・電磁弁・リレーといった制御の機器の多くは、DC(直流)の 24V で動くように作られています。向きが変わらず、勢いもおだやかな電気です。そこで、制御盤の中に AC を DC24V に作り直す箱を1つ置き、そこから各機器へ配ります。この箱がスイッチング電源です。メーカーによっては「パワーサプライ」とも呼びます。

たとえると

家の水道にたとえると、工場の AC は太い水道管を勢いよく流れる水です。そのままでは強すぎるので、盤の中に元栓とタンクを置き、ちょうどよい水圧(24V)にそろえてから、各部屋の蛇口(PLC やセンサ)へ配ります。スイッチング電源は、この元栓とタンクの役目です。

この記事では、このたとえを最後まで使います

水道のたとえスイッチング電源では単位
水圧電圧(24V)V(ボルト)
流れる水の量電流A(アンペア)
元栓が一度に出せる水の量電源の容量(定格電流)A
各部屋の蛇口PLC・センサ・電磁弁などの機器–

元栓に「一度に出せる水の量」の上限があるように、電源にも一度に流せる電流の上限があります。これが電源の容量で、カタログでは「24V 5A」「120W」のように書かれます。この記事の目的は、この容量を決めることです。

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中では何をしている?「細かく刻んで、小さな変圧器で下げる」

ひとことで言うとAC をいったん DC にし、とても速く ON・OFF して小さな変圧器で 24V に下げ、また DC に戻しています。

スイッチング電源の中では、電気が4つの段を通ります。

STEP 1

交流を直流にする:入ってきた AC を、ダイオードとコンデンサで DC にします(このコンデンサが⑪の入力の突入電流の原因です)。

STEP 2

とても速く刻む:その DC を、半導体のスイッチで1秒に何万回も ON・OFF します。これが「スイッチング」の名前の由来です。

STEP 3

小さな変圧器で下げる:小さな変圧器(トランス)で 24V 近くまで下げます。入力と出力は、ここで電気的に切り離されます。

STEP 4

また直流に戻してならす:もう一度なめらかな DC24V にし、出口の電圧を見て刻み方を自動で調整します。

たとえると

水道でいうと、太い管の水をいったんタンクにため、小さな弁をパタパタと速く開け閉めして、出ていく量をちょうどよく調整しているイメージです。弁が速いほど部品が小さく済むので、昔の大きな変圧器の電源より小さく軽くできます。

ここはざっくり言うと、の話です。中の回路の方式はいくつもあり、設計の話になります。くわしく知りたい方は、同じ筆者が運営する電気と品質管理のブログ shirasusolo.net のスイッチング電源トポロジー一覧で説明しています。盤に付ける電源を選ぶだけなら、ここから先の「容量」と「配線」がわかれば十分です。

スイッチング電源の中で交流を直流にし、速く刻み、小さな変圧器で下げ、直流に戻す流れの図

選ぶ順番の全体像:5つのステップ

ひとことで言うと電流の合計 → 余裕と温度 → 突入電流 → 配線の電圧 → 取り付け、の順に決めます。

電源の選び方は、カタログの「W(ワット)」の数字から考えるのではなく、つなぐ機器から逆算します。順番はこうです。

上から順に決めます。1と2で容量が決まり、3〜5で「その容量で本当に大丈夫か」を確かめます

順番決めることたとえるとこの記事の段
124V につなぐ機器の電流を全部書き出して合計する家族が同時に使う水の量を数える⑤
2あとで増える分の余裕を足し、盤の温度で出せる量が減る分で割る来客の分と、暑い日にポンプが弱る分を見る⑥〜⑧
3電源を入れた瞬間の大きな電流で止まらないか確かめる全部の蛇口を一気に開けても元栓が止まらないか⑨〜⑪
4遠い機器は、電線で電圧が下がる分を計算する長いホースの先で勢いが落ちないか⑫⑬
5分け方・取り付け・配線を決める元栓を分けるか、どこに置くか⑭⑮
DC24V電源を機器の電流の合計から逆算して選ぶ5つの順番の図

ステップ1:つなぐ機器の電流を全部書き出す

ひとことで言うと24V につなぐ機器を1つ残らず書き出し、それぞれの電流を足します。

最初にやるのは、DC24V につなぐ機器の一覧づくりです。24V を使うものを全部書き出し、それぞれの電流をカタログや取扱説明書で調べます。

たとえると

元栓の大きさを決めるには、まず家族全員が同時に使う水の量を数えます。電源も同じで、機器の電流を全部足した合計が出発点です。

W(ワット)で書かれていたら、24V で割って A にする

カタログには電流(A・mA)ではなく、消費電力(W)で書かれていることがあります。そのときは、電力 = 電圧 × 電流(P = V × I)の関係を使って、電流 = 電力 ÷ 電圧で直します。たとえば 1.5 W の電磁弁なら、1.5 W ÷ 24 V = 0.0625 A(62.5 mA)です。

PLC の 30 W は三菱電機 FX5U-32M/D の取扱説明書にある最大構成時の消費電力。ほかはすべて架空の例です。実際の値は、お使いの機器のカタログで確かめます

機器(数値は例)1つあたり数電流の合計
PLC 本体(DC 電源タイプ)30 W → 1.25 A11.25 A
タッチパネル0.5 A10.50 A
近接センサ15 mA200.30 A
電磁弁1.5 W → 62.5 mA80.50 A
リレー(コイル)0.6 W → 25 mA60.15 A
表示灯20 mA40.08 A
合計2.78 A

間違えやすいのが mA と A の取り違えです。1 A = 1,000 mA なので、15 mA は 0.015 A。全部を A にそろえてから足します。

実務の判断のコツ

電源の容量は、電源のカタログから選び始めるのではなく、24V につなぐ機器を全部書き出した一覧から決めます。その一覧は計算の途中ごと盤の図面や設計書に残しておきます。あとで機器を足すことになったとき、残りがどれだけあるかがすぐわかり、「足したら止まるようになった」を防げるからです。

家族が同時に使う水の量を足すと元栓の大きさが決まることを示した家のイラスト

ステップ2:必要な容量の式は「合計 → 余裕 → 温度」の3段

ひとことで言うと必要な容量 = 電流の合計 ×(1 + 増設の余裕)÷ 温度で使える割合 です。

ここで計算するのは、「この盤には何アンペアの電源が要るか」を決めるためです。合計ぴったりの電源では、機器を1つ足したときや、夏に盤が暑くなったときに足りなくなります。

式の出どころ:足し算と割り算を順にするだけ

この式は物理の法則ではなく、メーカーの資料の考え方を組み合わせた見積もりです。①機器の電流を全部足す、②あとで増える分(機器の追加・カタログ値のばらつき)を掛け足す、③盤の温度で電源が出せる割合に下がる分(⑧)で割る、の3段です。

I_必要 = I_合計 × (1 + α) ÷ k_温度

α と k_温度 は割合なので単位がなく、答えは I_合計 と同じ A になります

記号意味単位どこから取るか
I_合計24V につなぐ機器の電流の合計A機器のカタログ(ステップ1)
αあとで増える分の余裕の割合(この記事の例では 0.2 = 2割)なし(割合)会社の設計基準や、装置の増設の予定
k_温度盤の温度で、電源が出せる割合(1 = 100%)なし(割合)電源の取扱説明書のディレーティング曲線
I_必要必要な電源の容量A計算で出す
たとえると

家族4人が同時に使う水が毎分 30 リットルだとします。来客が来ても困らないよう2割足して 36 リットル。さらに「真夏はポンプが4分の3しか出せない」なら、36 ÷ 0.75 = 48 リットル出せる元栓を選びます。足して、割る。それだけです。

余裕の割合 α をいくつにするかは、会社や装置ごとの設計基準で決まっていることが多い値です。この記事では例として2割(0.2)で計算します。

必要な容量を機器の電流の合計に余裕を掛け温度の割合で割って出す式の組み立て図

計算してみよう1:盤の中が 40℃ なら何アンペア?

ひとことで言うと例では、2.78 A × 1.2 ÷ 1.0 = 3.34 A なので、5 A(120 W)の電源を選びます。

ステップ1の表の機器(合計 2.78 A)を、盤の中の温度が 40℃ の盤に付けるとします。⑧で見るとおり、例に使う電源は 50℃ までなら容量どおり出せるので、温度の割合は 1.0 です。

計算例
計算例1:盤の中が 40℃ のときの必要な容量(数値は例)
① 機器の電流を合計する
1.25 + 0.50 + 0.30 + 0.50 + 0.15 + 0.08 = 2.78 A
② 増設の余裕2割を掛け足す(1 + 0.2 = 1.2)
2.78 A × 1.2 = 3.336 ≒ 3.34 A
③ 温度で使える割合で割る(40℃ は 100% = 1.0)
3.34 A ÷ 1.0 = 3.34 A
④ 3.34 A 以上の容量の電源を選ぶ(例:2.5 A・5 A・10 A の並びなら)
2.5 A では足りない → 5 A を選ぶ
⑤ W で確かめる(P = V × I)
24 V × 5 A = 120 W
⑥ ふだん使う割合を確かめる
2.78 A ÷ 5 A = 0.556 → 約56%
24V・5 A(120 W)の電源を選ぶ。ふだんは容量の約56%で、余裕がある

つまり、この盤には 120 W クラスの電源がちょうどよい、ということです。答えが 30 A のように大きすぎたら、mA の直し忘れや W の割り忘れを見直します。

「5 A では余りすぎでは?」と思うかもしれません。容量は飛び飛びなので、この程度の余りは出ます。この余りが、次に見る「暑い日」や「電源を入れた瞬間」の逃げ場になります。

機器の電流の合計2.78Aに余裕を足した3.34Aから5Aの電源を選ぶ計算例1の棒グラフ

暑い盤の中では出せる量が減る:ディレーティング

ひとことで言うと電源は、まわりが暑いと容量どおりには出せません。温度ごとの「出せる割合」の曲線で確かめます。

電源の中の部品は熱を出し、まわりが熱いと冷えにくくなります。そこで、温度が上がると出してよい電流を下げる決まりがあります。この「温度で出せる量を下げること」をディレーティングと呼びます。

たとえると

真夏の暑い日に、ポンプが熱を持って全力を出せなくなるのと同じです。その「暑い日の出せる量」で元栓の大きさを考えます。

例として、MEAN WELL の DIN レール取り付けの電源 NDR-240 の仕様書では、縦に取り付けたとき、まわりの温度が 50℃ までは容量の100%、そこから下がって 70℃ で50% になる曲線が示されています。50℃ と 70℃ の間はまっすぐ下がるので、60℃ ならちょうど中間の 75% です。コーセルの資料でも、自然空冷の電源は取り付け方によって使える温度の範囲が変わると書かれています。

計算例
計算例2:盤の中が 60℃ で、電磁弁を8個足した場合(数値は例)
① 電磁弁8個(0.50 A)を足して合計し直す
2.78 A + 0.50 A = 3.28 A
② 増設の余裕2割を掛け足す
3.28 A × 1.2 = 3.936 ≒ 3.94 A
③ 60℃ の出せる割合を出す(50℃ で 100%、70℃ で 50% の中間)
(100% + 50%) ÷ 2 = 75% → 0.75
④ 温度で使える割合で割る
3.94 A ÷ 0.75 = 5.25 A
⑤ 5 A の電源と比べる
5.25 A > 5 A → 足りない
⑥ 1つ上の容量にする
10 A(24 V × 10 A = 240 W)を選ぶ
同じ盤でも、暑い場所で機器が増えると、5 A では足りず 10 A の電源が要る

機器が 0.5 A 増えただけなのに、温度の分も重なって、電源が1段大きくなりました。カタログの容量は「涼しいときの値」です。温度の曲線は機種・取り付けの向きごとに違うので、使う機種の取扱説明書で確かめます。

出典

情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

電源のまわりの温度が上がると出してよい電流が減る曲線と、60℃で必要な容量が5.25Aになる計算例2

容量を超えると何が起きる?電源は自分を守って電圧を下げる

ひとことで言うと電流が上限を超えると、電源は「過電流保護」で電流を抑えます。そのとき出力の電圧が下がります。

容量を超える電流を流すと、電源の部品が熱で壊れます。そこで電源には、流れすぎたら電流を抑える過電流保護が入っています。コーセルの資料では、過電流保護は定格電流の105%以上で働くと書かれています。

たとえると

元栓にたとえると、使いすぎたときに自動で水を絞る安全弁です。弁が絞られると、どの蛇口からも水の勢い(水圧)が落ちます。電源も同じで、電流を抑えると、つながっている全部の機器の電圧が下がります。

では、動く図で確かめましょう。機器を1つずつつないで、電流の合計の棒が「余裕を2割見た線」と「出せる上限」に近づいていく様子と、上限を超えたときの電圧を見てください。

動かして確かめる

DC24V・5 A(例)の電源に、機器を1つずつつないでみます。機器の名前を押すと、つないだり外したりできます。電流の合計が電源の容量に近づくと何が起きるかを、下の棒と「出力の電圧」で見てください。

DC24V 電源 容量 5 A(例) 24.0 V +24V 0V 電流の合計 余裕を2割見た線 出せる上限 0 A123456 A 合計:0.00 A 出せる上限:5.00 A 使っている割合:0% 出力の電圧:24.0 V

いまの様子:機器の名前を押してつないでみてください。

動きは説明のための作り物です(機器の電流はすべて例。60℃で75%は、本文で例に使った電源の温度の曲線の値です。容量を超えたときに電圧が下がる様子は、電流を一定に抑える方式の電源をざっくり表したもので、方式によっては出力を止めたり、入り切りをくり返したりします)。

見てほしいのは2つです。1つは、上限を超えるまでは電圧は 24V のままで、超えた瞬間から下がり始めること。もう1つは、盤の中の温度を 60℃ にすると、同じ機器でも上限の線が左へ動き、早く超えてしまうことです。

抑え方は2通り:絞り続けるか、入り切りをくり返すか

コーセル PBA の資料(垂下間欠型・逆L垂下シャットダウン型)と MEAN WELL NDR-240(定電流制限・自動復帰)をもとにまとめました。どちらの方式かは機種の仕様書の「過電流保護」「過負荷保護」の欄で確かめます

方式上限を超えたときよい点気をつける点
電流を一定に抑える(垂下・定電流)電流を上限あたりに保ち、電圧を下げる立ち上がりやすい電流が流れ続け、電線が熱を持つ
入り切りをくり返す(間欠)出力の ON・OFF をくり返す電線の発熱が少ない立ち上がりに大きな電流が要る負荷で、電圧が立ち上がらないことがある

電圧が下がると機器も困ります。三菱電機の FX5U の取扱説明書には、PLC 自身の 24V サービス電源が過負荷になると電圧が下がり、入力が無効になり、出力がすべて OFF になると書かれています。「ときどき PLC が止まる」原因が電源の容量不足のこともあります。止まったときの見方はPLC のエラーで止まったときの切り分けで説明しています。

出典

情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

電源の容量を超えたとき、電流を一定に抑える方式と入り切りをくり返す方式で出力の電圧が下がる様子のグラフ

電源を入れた瞬間の大きな電流:出力側の突入電流

ひとことで言うと機器は電源を入れた瞬間だけ、ふだんの何倍もの電流を吸い込みます。合計が上限の内でも、立ち上がりで止まることがあります。

PLC やタッチパネルの中には、電気をためるコンデンサがあります。電源を入れた瞬間、空っぽのコンデンサに電気が流れ込むので、一瞬だけ大きな電流が流れます。これを突入電流と呼びます。

たとえると

家じゅうの蛇口を一気に全開にした瞬間を想像してください。空っぽのホースやバケツに水がどっと流れ込み、一瞬だけ元栓に大きな量が求められます。その一瞬で安全弁が働くと、水がうまく出始めません。

どれくらい大きいかの例として、三菱電機の FX5U の取扱説明書では、DC 電源タイプの FX5U-32M/D の突入電流は最大 50 A・0.5 ms 以下(24 V DC のとき)と書かれています。ふだんの消費電力 30 W(約 1.25 A)と比べると、50 A ÷ 1.25 A = 40 倍です。ただし時間は 0.5 ms(2,000分の1秒)以下と、ごく短い間です。

この一瞬で、電源の過電流保護が働くことがあります。コーセルの資料では、保護は数十〜数百 μs(マイクロ秒)の過電流でも動作し、「入り切りをくり返す」方式では立ち上がりに大きな電流が要る負荷で出力の電圧が立ち上がらないことがあると注意されています。

機器の突入電流の値は、取扱説明書の電源の仕様の欄に書かれています

立ち上がりで止まるときの対策考え方
突入電流の大きい機器を、別の電源に分ける一度に吸い込む量を分ける(⑭)
電源を入れる順番をずらす全部の蛇口を同時に開けない
一瞬なら上限を超えて出せる機種を選ぶピーク電流に対応した機種がある(コーセル PBA の一部など)
過電流保護の方式を確かめる電流を一定に抑える方式は、立ち上がりやすい傾向
出典

情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

蛇口を一気に開けると安全弁が閉じ、順にずらして開けると落ち着いて出ることを比べた突入電流のたとえのイラスト

入力側にも突入電流:電源の手前のブレーカーとヒューズ

ひとことで言うと電源そのものも、AC を入れた瞬間に大きな電流を吸い込みます。手前のブレーカーやヒューズが落ちないように選びます。

電源の入り口のコンデンサにも、AC を入れた瞬間に電気が流れ込みます。これが入力側の突入電流です。

コーセルの資料では、この電流は AC の波のてっぺん(位相90度・270度)で入れたときに最大になり、長くても 5 ms と説明されています。MEAN WELL NDR-240 の仕様書では、標準値で 20 A(AC115V)・35 A(AC230V)です。

たとえると

元栓のさらに手前の水道メーターにも、出し始めの「どっ」という勢いがかかります。メーターの安全装置がその勢いで閉じないようにする話です。

コーセルの資料の「外付けヒューズの選定方法」をもとにまとめました。電源を何台も同じブレーカーにつなぐと、突入電流も重なります

手前の保護を選ぶときに見ることなぜ
突入電流の一瞬で落ちないブレーカー・ヒューズの「電流と時間」の特性で確かめる。仕様書の値は標準値(typ)のことがあるので余裕を見る
電源の先で短絡したら、すぐ落ちる異常のときに安全に切れることが本来の役目
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出典

情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

ACを入れた瞬間に入力の突入電流が一瞬だけ大きく流れる様子の図

ステップ4:電線が長いと電圧が下がる。式はオームの法則

ひとことで言うと電線にも少し抵抗があるので、遠い機器ほど届く電圧が下がります。下がる分 = 電流 × 1 m の抵抗 × 長さ × 2(往復)です。

ここで計算するのは、「遠くの機器に動ける電圧が届くか」を知るためです。足りないと、動いたり動かなかったりする、見つけにくい不具合になります。

たとえると

庭の水まきで、長いホースの先ほど水の勢いが弱くなるのと同じです。ホースが細く長いほど、勢いは落ちます。電線も、細く長いほど電圧が下がります。

式の出どころ:オームの法則を、行きと帰りの2本に使う

電線の抵抗 R に電流 I が流れると、電線の両端に V = I × R の電圧がかかります(オームの法則)。この分だけ、機器に届く電圧が減ります。電線の抵抗は「1 m あたりの抵抗 × 長さ」です。そして電流は、+24V の線で行って、0V の線で帰ってくるので、電線の長さは片道の2倍になります。

ΔV = I × r × L × 2

Ω × A = V なので、答えは V(ボルト)になります

記号意味単位どこから取るか
ΔV電線で下がる電圧V計算で出す
Iその電線に流れる電流A先につながる機器の電流の合計
r電線 1 m あたりの抵抗Ω/m電線の仕様書(Ω/km を 1,000 で割る)
L電源から機器までの片道の長さm配線のルート

稲葉電線の KIV の仕様書(JIS C 3316 準拠)の値。温度が上がると抵抗は少し増えます

電線の太さ(KIV)最大導体抵抗(20℃)1 m あたり
0.75 mm²24.4 Ω/km0.0244 Ω/m
1.25 mm²14.7 Ω/km0.0147 Ω/m
2.0 mm²9.50 Ω/km0.0095 Ω/m

電圧が下がるしくみそのものは、同じ筆者の shirasusolo.net の電圧降下とはでくわしく説明しています。ここでは盤の DC24V の配線に絞って計算します。

出典

情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

電線の行きと帰りの抵抗で電圧が下がる電圧降下の式の組み立て図

計算してみよう2:25 m 先の機器に、24V は届く?

ひとことで言うと例では、0.75 mm² だと 21.6 V を下回って足りず、1.25 mm² にすると 22.5 V で足ります。

盤から片道 25 m(例)離れた場所に、合計 2.0 A(例)の機器があるとします。機器は、定格 24 V の ±10%、つまり 21.6〜26.4 V で動く(例)ものとします。

計算例
計算例3:0.75 mm² の電線で配線した場合(数値は例)
① 往復の長さを出す
25 m × 2 = 50 m
② 電線の抵抗を出す(0.0244 Ω/m)
0.0244 Ω/m × 50 m = 1.22 Ω
③ 下がる電圧を出す(ΔV = I × R)
2.0 A × 1.22 Ω = 2.44 V
④ 機器に届く電圧
24.0 V − 2.44 V = 21.56 V
⑤ 機器が動く範囲の下限(24 V × 0.9)と比べる
21.56 V < 21.6 V → わずかに足りない
0.75 mm² では、機器の動く範囲の下限を下回る
計算例
計算例4:1.25 mm² の電線にした場合(数値は例)
① 往復の長さ
25 m × 2 = 50 m
② 電線の抵抗(0.0147 Ω/m)
0.0147 Ω/m × 50 m = 0.735 Ω
③ 下がる電圧
2.0 A × 0.735 Ω = 1.47 V
④ 機器に届く電圧
24.0 V − 1.47 V = 22.53 V
⑤ 下限と比べる
22.53 V ≧ 21.6 V → 足りる(余裕 約 0.9 V)
電線を1段太くすると、下がる電圧が約6割になり、足りるようになる

つまり、遠い機器ほど電線の太さが大事です。答えが何十ボルトも下がったら、往復の2倍や Ω/km と Ω/m の換算を見直します。

どこまで下がってよいかは、つながる機器のうち、いちばん範囲がせまいもので決めます(例えば FX5U の入力は DC24V の +20%/−15%で、例の機器より広い)。多くの電源には出力電圧を少し上げるつまみ(V.ADJ。NDR-240-24 は 24〜28 V)がありますが、近くの機器にも高い電圧がかかるので、上げる前に次のコツを考えます。

実務の判断のコツ

遠くの機器で電圧が足りないとき、電源の出力電圧を上げるのは最後の手段にします。先に、電線を太くする、帰りの 0V の線も同じ太さにする、遠い機器のまとまりの近くに電源を置く、のどれかで考えます。出力電圧を上げると、電源の近くにある機器には高めの電圧がかかり続けるからです。

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センサの電源も同じ 24V。2線式を入力につなぐ計算がわかる

出典

情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

片道25mで0.75mm²の電線だと機器の下限21.6Vを下回り、1.25mm²なら22.53Vで足りることを示したグラフ
おすすめの道具

計算した電圧が機器の端子に本当に届いているかは、テスターで測って確かめます。その例です。三和電気計器のデジタルマルチメータ CD771 は、販売ページの表示では、直流・交流とも1000Vまでの電圧、10Aまでの電流、抵抗、導通(ブザーとLED)などを測れる汎用のテスターです(交流は平均値整流)。測る場所の電圧に合ったレンジかを、取扱説明書で確かめてから使ってください。

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電源を分ける・並べる:1台で全部まかなわない選択肢

ひとことで言うと負荷の性質ごとに電源を分けたり、2台を並べて容量を増やしたり、止まらないよう予備を置いたりできます。

大きな電源を1台にする以外にも、選び方があります。

たとえると

家の水道でいうと、元栓を「台所用」と「庭の散水用」に分ける、元栓を2つ並べてたくさん出す、片方が壊れてももう片方で水が出るようにしておく、という3つの考え方です。

並列・冗長ができるかどうか、つなぎ方は機種によって違います。必ず取扱説明書の方法に従います

選び方何のため気をつけること(コーセル PBA の資料の例)
負荷ごとに分ける1か所の短絡や入り切りの影響で全部が止まるのを防ぐ分けた電源ごとに容量を計算する
並列運転(容量を増やす)1台では容量が足りないとき並列に対応した機種だけ。出力電流のばらつきがあるので、合計は 定格 × 台数 × 0.9 まで
冗長運転(1+1)1台が壊れても止めないメインと同じ容量の予備をつなぐ
N+1 冗長大きな容量で壊れても止めないN 台で分担し、予備を1台足す

並列運転の例として、コーセルの PBA の資料では、5 A の電源を2台並べても 10 A ではなく、5 A × 2 × 0.9 = 9 A までと決められています。2台の電流がぴったり半分ずつにならないからです。

実務の判断のコツ

電磁弁やブレーキのように入り切りのたびに電流が大きく動く負荷と、PLC やセンサのように電圧のゆらぎに弱い機器は、電源を分けるか、少なくとも途中の保護(ヒューズやサーキットプロテクタ)を分けます。1つの負荷の短絡や電圧の落ち込みで、機械の脳にあたる PLC まで一緒に止まるのを防ぐためです。

電圧のゆらぎやノイズの通り道の考え方は、インバータのノイズ対策でも説明しています。

出典

情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

元栓を負荷ごとに分ける、2つ並べる、予備を置くという電源の分け方・並列・冗長のたとえのイラスト

取り付けと配線の注意:すきま・向き・温度を測る場所

ひとことで言うと電源は熱を出す部品です。まわりにすきまを空け、決められた向きに付け、盤の温度は電源のすぐ横で確かめます。

電源は暑いと出せる量が減るので、取り付け方で温度を上げないことが大切です。

すきまや向きの決まりは機種ごとに違います。最終的には、実際の盤で温度を測って曲線の範囲に入るかを確かめるよう、コーセルの資料にも書かれています

注意することなぜ・どう確かめるか
まわりにすきまを空ける熱がこもらないように。コーセルの資料では、自然空冷の電源どうしは 20 mm 以上が目安
決められた向きに付ける向きでディレーティングが変わる。NDR-240 の曲線は縦に取り付けたときの値
温度は電源の横で考えるコーセルの資料では、周囲温度は電源の横 50〜100 mm の空気の温度。盤の入り口の温度ではない
入力・出力・FG の端子をまちがえないAC と DC を取りちがえると壊れる。FG(フレームグラウンド)は盤の接地へ
注意|ここで間違えやすい

電源の端子に触れる作業は、必ず手前のブレーカーを切り、検電器やテスターで電圧がないことを確かめてから行います。電源を切った直後は、中のコンデンサに電気が残っていることがあります。盤の扉を開けての作業の可否は、社内のルールと機器の取扱説明書に従ってください。

出典

情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

スイッチング電源のすきま・温度を測る場所・取り付けの注意を示した図

仕事で使うとき:DC24V 電源の選定チェックリスト

ひとことで言うと電流の一覧 → 余裕と温度 → 突入電流 → 配線 → 取り付け、の順に確かめます。
DC24V 電源の選定チェックリスト
  • □ 24V につなぐ機器を全部書き出し、電流を A にそろえて合計した(W は 24V で割った)
  • □ 増設の余裕の割合を、会社の設計基準や装置の予定から決めた
  • □ 盤の中の温度(電源の横)を見積もり、取扱説明書の温度の曲線で出せる割合を読んだ
  • □ 必要な容量 = 合計 ×(1 + 余裕)÷ 温度の割合 を計算し、その次に大きい容量を選んだ
  • □ PLC・タッチパネルなど、突入電流の大きい機器の値を調べた
  • □ 電源の過電流保護の方式(電流を一定に抑える/入り切りをくり返す)を確かめた
  • □ 手前のブレーカー・ヒューズが、電源の入力の突入電流で落ちないことを確かめた
  • □ 遠い機器は、往復の長さで電圧降下を計算し、いちばん範囲がせまい機器の下限と比べた
  • □ 電磁弁などの負荷と、PLC・センサの電源(か保護)を分けるか決めた
  • □ 取り付けの向き・すきま・熱い機器との位置を、取扱説明書で確かめた

よくある質問

Q. スイッチング電源とは何ですか?

A. AC を速く ON・OFF して小さな変圧器で下げ、DC24V などに作り直す電源です。小さく軽く、制御盤で広く使われます。

Q. DC24V 電源の容量はどう決めますか?

A. つなぐ機器の電流を全部足し、増設の余裕を掛け足して、盤の温度で出せる割合で割ります。その次に大きい容量を選びます。

Q. スイッチング電源のディレーティングとは何ですか?

A. まわりが暑いと、出してよい電流を下げる決まりです。例えば 50℃ まで100%、70℃ で50% のように示されます。

Q. 電源を入れたときに PLC が立ち上がらないのはなぜですか?

A. 機器の突入電流で電源の過電流保護が働いた可能性があります。電源を分ける、入れる順をずらす、保護の方式を確かめます。

Q. 24V の配線で電圧降下はどれくらいですか?

A. 電流 × 1 m の抵抗 × 片道の長さ × 2 です。0.75 mm² で片道 25 m・2 A なら約 2.4 V 下がります。

まとめ:DC24V 電源は「機器の一覧」から逆算して選ぶ

POINT
  • スイッチング電源は、AC を DC24V に作り直して配る、盤の中の「水道の元栓とタンク」
  • 容量は、機器の電流の合計 ×(1 + 増設の余裕)÷ 温度で出せる割合 で計算し、その次に大きいものを選ぶ
  • カタログの容量は涼しいときの値。暑い盤ではディレーティングの曲線で出せる量が減る
  • 上限を超えると過電流保護で電圧が下がる。電源を入れた瞬間の突入電流で止まることもある
  • 遠い機器は、往復の長さで電圧降下を計算し、電線の太さを決める
  • 電磁弁などの負荷と PLC・センサは、電源か保護を分けると止まりにくい

電源が決まったら、その電源で動く PLC やタッチパネルの側で、止まったときの見方も確かめておきましょう。

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シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

PLC・サーボ・インバーターを実務で扱ってきた電気・制御の設計者です。制御の記事は、選び方・設定の順番・止まったときの切り分けを、実務の判断のしかたから書いています。機械(材料・機械要素・図面)の記事は本職ではないため、JIS とメーカーの技術資料を調べてまとめ、出典を示しています。

次に読むべき記事

電源の選び方がわかったら、同じ DC24V で動く機器のつながりや、画面の選び方も読んでおきましょう(制御盤の記事は公開しだい、ここに並べます)。

制御盤とは?中身の機器と設計の流れをやさしく図解|熱の計算つき
まずはここから
制御盤とは?中身の機器と設計の流れをやさしく図解|熱の計算つき

盤の中の機器の全体像と設計の流れ。電源の置き場所と熱の計算もわかる

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