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押しボタンスイッチと表示灯の色には、決まりがあるのか?
あります。機械の電気装置の規格 IEC 60204-1 で、押しボタンは始動=白(緑も可)・停止=黒・リセット=青・非常停止=赤で背景は黄、表示灯は赤=非常・黄=異常・緑=正常・青=操作が要る・白=中立が基本です。止めるボタンは、線が切れたときに止まる側に倒れる b接点でつなぎます。
この記事では、押しボタンスイッチと表示灯を押しボタン式の横断歩道と信号機にたとえて、最後までその話で説明します。
- 押しボタンの色:IEC 60204-1(2021年の版)をまとめた Schneider Electric の FAQ
- 表示灯の色・点滅:日本プラントメンテナンス協会「IEC 60204-1 の解説」
- 押しボタンの取付穴・小さな信号の最小推奨値:Eaton の 22 mm 押しボタンの仕様
- Schneider Electric FAQ「What should the colours of pushbutton heads typically represent?」(IEC 60204-1 の2021年9月の版から:始動=白・灰・黒・緑で白を優先・赤は使わない、停止=黒・灰・白で黒を優先・緑は使わない・赤も可だが非常用の近くは避ける、非常停止=赤・背景は黄、リセット=青・白・灰・黒、黄=異常)
- 日本プラントメンテナンス協会「IEC 60204-1 の解説」(押しボタンの色分け・形などで見分けるなら同じ色も可・交互切替形は危険を招かない機能だけ・表示灯の色は目的で分け合意で変えられる・点滅の目的と f1 0.4〜0.8Hz/f2 1.4〜2.8Hz(JIS C 0448:1997))
- Eaton(AutomationDirect 掲載)22 mm 押しボタンの仕様(取付穴 22 mm・IP65・IEC 60947-5-1 の AC15/DC13・小さな信号用の最小推奨 5 VDC 1 mA)
情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。
押しボタンスイッチと表示灯とは?横断歩道のボタンと信号機
押しボタン式の横断歩道を思い出してください。歩く人がボタンを押すと、しばらくして信号が青に変わります。ボタンは「渡りたい」というお願いで、信号機は「いま渡ってよいか」の知らせです。
横断歩道のボタンを押しても、信号がすぐに変わるわけではありません。信号を変えるかどうかを決めているのは、信号の制御装置です。工場の機械も同じで、押しボタンは「運転してほしい」と伝えるだけで、実際に動かすかどうかは PLC(機械を動かす小さなコンピューター)やリレーの回路が、扉が閉まっているか・異常がないかを見てから決めます。
左の言葉が出てきたら、右の本物に読みかえてください
| 横断歩道のたとえ | 工場では |
|---|---|
| 横断歩道の押しボタン | 押しボタンスイッチ(運転・停止・リセットなど) |
| 信号機の色 | 表示灯の色(運転中・異常・非常停止など) |
| 信号を変える制御装置 | PLC・リレーの回路 |
| 信号の色の意味がどこでも同じ | 色の意味を規格(IEC 60204-1)でそろえる |
信号の色の意味がどの町でも同じだから、初めての交差点でも迷いません。機械の押しボタンと表示灯も、色の意味を規格でそろえておくと、初めて触る機械でも見まちがえにくくなります。これがこの記事の後半の「色の決まり」の話です。

押しボタンの中身:a接点とb接点
押しボタンの中には、押すと動く金属の接点が入っています。接点の動き方は2種類あります。
玄関の呼び鈴は、押しているあいだだけ回路がつながって鳴ります。これが a接点です。冷蔵庫のドアのスイッチは、ドアが閉まってスイッチが押されているあいだ、明かりが消えています。ドアを開けて押されなくなると明かりがつきます。押されると切れる、これが b接点です。
- a接点:ふだんは離れていて、押すとつながる(英語では NO=ノーマリーオープン)
- b接点:ふだんはつながっていて、押すと切れる(英語では NC=ノーマリークローズ)
次の動く図で、ボタンを押したまま・離したときの2つの接点の動きを見てみましょう。動き方の選択で、モーメンタリ(離すと戻る)とオルタネイト(押すたびに切りかわり、離しても保つ)の違いも試せます。
動かして確かめる
左は押しボタンを横から切った中身です。上にa接点(押すとつながる)、下にb接点(押すと切れる)が入っています。右の2つのランプは、それぞれの接点につないだものです。「押す」ボタンを押したままにしたり、離したりしてみてください。
いまの様子:押していません。a接点は離れていて(ランプは消えている)、b接点はつながっています(ランプはついている)。
動きは説明のための作り物です。本物の押しボタンは、接点のブロックの組み合わせ(a接点1つ・b接点1つなど)を選んで注文します。
見てほしいのは、1回押すだけで a接点はつながり、b接点は切れる、という逆の動きです。最後の「b接点の線が切れた」も試してください。押していないのに、押されたのと同じ状態になりました。これが次の⑤の大事な話につながります。
運転・停止のように「押したら1回お願いする」ボタンはモーメンタリ、電源の入り切りのように「状態を保ちたい」ボタンはオルタネイトが向いています。規格の解説では、始動と停止が交互に切りかわる形は、危険な状態を招かない機能だけに使うとされています。

図面の記号と、押す前・押したあと
シーケンス図(電気の通り道の図面)では、押しボタンはだれも押していないときの形で描く決まりです。だから a接点は離れた形、b接点はつながった形で描かれます。
信号機の絵を描くとき、ふだんの状態で描くのと同じです。押したときにどう変わるかは、頭の中で動かして読みます。
左の接点が、押す前と押しているあいだにどうなるか。右の列の使い分けの理由は⑤で説明します
| 押す前(図面の形) | 押しているあいだ | よく使う所 | |
|---|---|---|---|
| a接点(NO) | 開いている(電気が通らない) | 閉じる(電気が通る) | 運転・始動・寸動のボタン |
| b接点(NC) | 閉じている(電気が通る) | 開く(電気が通らない) | 停止・非常停止のボタン |
1つの押しボタンに a接点と b接点の両方を入れたものを「1a1b」のように書きます。接点のブロックを足して、2a や 1a2b にできる機種も多くあります。
a接点とb接点の記号を、図面の中で読む練習ができる

止めるボタンは、なぜb接点でつなぐの?
停止ボタンを a接点でつないだ場合を考えます。「押されたら止める」という回路です。ふだんはなにも流れていません。もし停止ボタンの線が切れていたら、押しても何も伝わらず、止めたいときに止まりません。しかも、ふだんは何も流れていないので、線が切れていることに気づけません。
b接点でつなぐと、ふだんから電気が流れていて、「流れているあいだは運転してよい」という回路になります。押せば切れて止まり、線が切れても切れて止まります。壊れたときに、危なくない側(止まる側)に倒れるように作るわけです。
横断歩道の信号が壊れて消えたら、車も人も「止まって様子を見る」側に動きます。消えたら止まる、という決まりのほうが安全です。b接点の停止ボタンは、まさにこの考え方です。
a接点か b接点か迷ったら、「この線が切れたとき、機械はどちらに倒れてほしいか」で決めます。止める・異常を知らせる・扉が閉まっていることを確かめる信号は、切れたら止まる側に倒れる b接点にします。運転・始動のように、切れたら何も起きないほうが安全な信号は a接点にします。線の切れを「止まる側」に寄せておくと、試運転の段階で配線のミスが見つかりやすくもなります。
b接点の停止ボタンを、ラダー図ではどう書くかがわかる

a接点・b接点から自己保持回路まで、リレーのシーケンス制御を順に学びたいときの本の例です。ナツメ社の『カラー徹底図解 基本からわかるシーケンス制御』(石橋正基 著・2018年4月発行)は、電磁リレーによるシーケンス制御を、構成機器、シーケンス図とタイムチャート、基本接点回路、自己保持回路などの順に説明した本です(楽天ブックスの目次)。
押しボタンの形と動き方の種類
横断歩道のボタンが大きくて押しやすいのは、だれでもすぐ押せるようにするためです。機械のボタンも、押しやすさと押しまちがえにくさのつり合いで、形を選びます。
左の形を、右の列の目的で選びます。形・色・位置で見分けられるようにすると、押しまちがいが減ります
| 形 | 見た目 | 向いているボタン |
|---|---|---|
| 平形(フラッシュ) | 頭が枠と同じ高さ | 運転・始動(ひじや物が当たって押されにくい) |
| 突形 | 頭が枠より出ている | 停止・リセット(手袋でも押しやすい) |
| きのこ形 | 大きな丸い頭 | 非常停止(手のひらでたたける) |
| ガード付き | まわりに囲いがある | 押しまちがえると困るボタン |
| 照光式 | 頭が光る | 押せる状態や、押したことを光で知らせたいボタン |
| セレクタスイッチ | つまみを回す | 手動と自動の切りかえ・運転の方式の選択 |
規格の解説では、形・位置・触った感じなどで見分けられるなら、ちがう機能のボタンに同じ色を使ってもよいとされています(例:始動と停止に白)。色だけに頼らず、形と位置もいっしょに決めるのが基本です。
照光式の押しボタンは、ボタンと表示灯を1つにまとめたものです。盤の穴を減らせますが、光っている意味(押せる・動いている)を、盤全体でそろえて決めておく必要があります。

押しボタンの色の決まり(IEC 60204-1)
機械の電気装置の国際規格 IEC 60204-1(日本では JIS B 9960-1)には、押しボタンの色の決まりがあります。メーカーの FAQ がまとめた 2021年の版の内容は、次のとおりです。
信号の赤は、どの国でも「止まれ」です。もし赤が「進め」の国があったら、旅行者は事故を起こします。機械のボタンの色も、決まりに合わせておくと、初めての機械でも直感で押せます。
左の働きのボタンに、2列目の色から選びます。3列目が第一の候補です。正式な決まりと細部は、規格の最新版で確かめてください
| ボタンの働き | 使う色 | 優先する色 | 使わない色・注意 |
|---|---|---|---|
| 始動・入(運転) | 白・灰・黒・緑 | 白 | 赤は使わない |
| 停止・切 | 黒・灰・白(赤も可) | 黒 | 緑は使わない。赤は非常停止の近くでは避ける |
| 非常停止 | 赤 | — | 背景(台)は黄 |
| リセット | 青・白・灰・黒 | — | — |
| 押しているあいだだけ動く(寸動)・始動と停止が交互 | 白・灰・黒 | — | — |
| 異常のときに押すボタン | 黄 | — | 黄は異常の状態のためにとっておく |
ここで「え、運転は緑じゃないの?」と思った方へ。昔は運転に緑を使うことが多く、いまも緑は使える色に入っています。ただ、いまの規格では白を優先する形になっています。古い機械と新しい機械で運転のボタンの色が違うことがあるのは、このためです。
規格の解説では、既存の装置や、使う人が昔から使っている色分けも十分に考えるとされています。工場ごとに古い色分けが残っていることもあるので、新しい機械を入れるときは、その工場の決まりと規格のどちらに合わせるかを、使う人と話して決めます。
- 押しボタンの色(IEC 60204-1 の2021年9月の版から):Schneider Electric FAQ
- 形などで見分けるなら同じ色も可・従来の色分けを考慮・交互切替形の使い方:日本プラントメンテナンス協会「IEC 60204-1 の解説」
- Schneider Electric FAQ「What should the colours of pushbutton heads typically represent?」(IEC 60204-1 の2021年9月の版から:始動=白・灰・黒・緑で白を優先・赤は使わない、停止=黒・灰・白で黒を優先・緑は使わない・赤も可だが非常用の近くは避ける、非常停止=赤・背景は黄、リセット=青・白・灰・黒、黄=異常)
- 日本プラントメンテナンス協会「IEC 60204-1 の解説」(押しボタンの色分け・形などで見分けるなら同じ色も可・交互切替形は危険を招かない機能だけ・表示灯の色は目的で分け合意で変えられる・点滅の目的と f1 0.4〜0.8Hz/f2 1.4〜2.8Hz(JIS C 0448:1997))
情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

表示灯の色の決まり:信号機と同じ考え方
表示灯は、機械から人への知らせです。信号機と同じように、色を見ただけで「すぐ動くべきか」「見ておけばよいか」がわかるようにします。
規格の表の代表的な意味です。使う人と合意すれば変えられ、版によって細部が違うので、正式な意味は規格の最新版で確かめます
| 色 | 意味 | 表示灯の使い方の例 |
|---|---|---|
| 赤 | 非常・危険な状態 | 非常停止中・危険な異常(すぐに対応が要る) |
| 黄 | 異常・注意 | 軽い異常・もうすぐ限度(点検が要る) |
| 緑 | 正常 | 運転中・準備完了 |
| 青 | 人がすべき操作がある | リセットが要る・確認の操作が要る |
| 白 | どれにも当たらない知らせ | 電源が入っている・選んでいる運転の方式 |
次の動く図で、機械の状態を切りかえると、どの色の表示灯がつき、どのボタンを押せばよいかがどう変わるかを見てみましょう。
動かして確かめる
機械の操作盤の例です。上の段が表示灯(機械から人への知らせ)、下の段が押しボタン(人から機械へのお願い)です。機械の状態を選ぶと、どの色の表示灯がつき、いまどのボタンを押せばよいかが切りかわります。
いまの様子:
動きは説明のための作り物です。色の意味は IEC 60204-1 の考え方の例で、どの状態にどの表示灯を使うかは機械ごとに決めます(使う人と合意すれば変えられます)。点滅は1秒に約2回(規格の解説が示す「通常の点滅」の範囲の例)です。
見てほしいのは、表示灯の色と、次に押すボタンの色がつながっていることです。青の表示灯がついたら、青のリセットボタンを押す。こうしておくと、慣れていない人でも次の操作に迷いません。
色の割り当ては、機械ごとに決めずに、工場や装置のまとまりで「色の表」を1枚作ってから決めます。同じ工場の中で、ある機械は黄が「運転準備中」、別の機械は黄が「異常」だと、黄を見ても意味がわからなくなるからです。表には、押しボタンの色・表示灯の色・点滅の意味を並べ、タッチパネルの画面の色もその表に合わせます。
タッチパネルの画面の色も、同じ決まりでそろえる方法がわかる
- 表示灯の色は目的で分け、合意で変えられる・点滅の使い方:日本プラントメンテナンス協会「IEC 60204-1 の解説」
- 日本プラントメンテナンス協会「IEC 60204-1 の解説」(押しボタンの色分け・形などで見分けるなら同じ色も可・交互切替形は危険を招かない機能だけ・表示灯の色は目的で分け合意で変えられる・点滅の目的と f1 0.4〜0.8Hz/f2 1.4〜2.8Hz(JIS C 0448:1997))
情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

計算してみよう①:表示灯の点滅の速さ
異常のときに表示灯を点滅させると、ついているだけより目に入ります。ただし速すぎるとチカチカして不快で、遅すぎると点滅に見えません。どれくらいの速さにするかを数字で決めないと、PLC のタイマーの値が決められません。
踏切の警報機のランプは、左右が交互にゆっくり光ります。あれがもっと速いと目が疲れ、もっと遅いと、ただ片方ずつついているだけに見えます。ちょうどよい速さがあるのです。
規格の解説では、点滅の速さの目安として、ゆっくりの点滅(f1)は 0.4〜0.8 Hz、ふつうの点滅(f2)は 1.4〜2.8 Hz を示しています(JIS C 0448:1997)。Hz(ヘルツ)は「1秒に何回くり返すか」です。
式の出どころ:1秒に2回くり返すなら、1回分は 1 ÷ 2 = 0.5 秒です。つまり、1回分の時間(周期)は、1秒を回数で割れば出ます。点滅の1回分は「ついている時間+消えている時間」なので、同じ長さにするなら半分ずつです。
周期[s] = 1 ÷ 周波数[Hz] 、 ついている時間 = 消えている時間 = 周期 ÷ 2
- 周期 T[s]:点滅1回分(ついて、消えて)の時間。単位は秒
- 周波数 f[Hz]:1秒にくり返す回数。1/s と同じ単位なので、1 ÷ f で秒になる
1.4 ≦ 2 ≦ 2.8 → 範囲に入る
1 ÷ 2 Hz = 0.5 s
0.5 s ÷ 2 = 0.25 s
0.25 s ÷ 0.01 s = 25
1 ÷ 0.5 Hz = 2.0 s → 1.0 秒ずつ
0.1 s + 0.1 s = 0.2 s
1 ÷ 0.2 s = 5 Hz
5 Hz > 2.8 Hz → 速すぎる
桁の感覚も確かめます。2 Hz は「1秒にトン・トンと2回」、0.5 Hz は「2秒に1回」です。声に出して数えると、速すぎ・遅すぎがすぐわかります。
規格の解説では、優先度の高い知らせに速い点滅を使うこと、文字を点滅させるより背景を点滅させるのが望ましいことも書かれています。何でも点滅させると、本当に大事な点滅が目立たなくなるので、点滅は異常や至急の操作に取っておきます。
- 点滅の目的と f1 0.4〜0.8 Hz・f2 1.4〜2.8 Hz(JIS C 0448:1997):日本プラントメンテナンス協会「IEC 60204-1 の解説」
- 日本プラントメンテナンス協会「IEC 60204-1 の解説」(押しボタンの色分け・形などで見分けるなら同じ色も可・交互切替形は危険を招かない機能だけ・表示灯の色は目的で分け合意で変えられる・点滅の目的と f1 0.4〜0.8Hz/f2 1.4〜2.8Hz(JIS C 0448:1997))
情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

計算してみよう②:PLCにつなぐボタンは「小さな電流」に強い接点を
押しボタンの接点には、「これ以上の電流を流して使ってください」という下限(最小適用負荷)があります。PLC の入力のように流れる電流が小さいと、この下限を下回り、押したのにときどき入らないことが起きます。だから計算で確かめます。
ほこりをかぶった呼び鈴のボタンは、軽く押しただけでは鳴らず、ぐっと押すと鳴ることがあります。接点の表面にも、空気にふれてできる薄い膜(さびのようなもの)があり、流れる電流が小さいと、その膜を破れずに接触が不安定になります。ざっくり言うと、最小適用負荷は「膜を破って確実につながるための電流の下限」です。
式の出どころ:PLC の入力を、ざっくり1本の抵抗と見なします。電流は電圧を抵抗で割ると出る(オームの法則 I = V ÷ R)ので、入力の抵抗がわかれば、押したときに流れる電流が出せます。
PLC の入力に流れる電流 I[A] = 電源の電圧 V[V] ÷ 入力の抵抗 R[Ω]
- V:電源の電圧。制御盤の入力では DC24V が多い
- R:PLC の入力の抵抗(取扱説明書の「入力インピーダンス」)。三菱電機 FX5U の取扱説明書では 4.3 kΩ(X0〜X17)
- I:流れる電流。V ÷ Ω で A(アンペア)。小さいので mA(1000分の1 A)で表す
4.3 kΩ = 4300 Ω
24 V ÷ 4300 Ω = 0.00558 A
0.00558 A × 1000 = 5.58 mA
5.58 mA ≧ 1 mA → 足りる
10 mA > 5.58 mA → 足りない
答えの意味を言葉にすると、PLC の入力には、指先ほどの小さな電流(約5.6 mA)しか流れないということです。モーターを動かすリレーのコイルなど、もっと大きな電流を切るための接点の中には、こうした小さな電流では接触が安定しないものがあります。
メーカーによっては、小さな電流向けの接点のブロック(金めっきの接点や、接点の先をとがらせて膜を破りやすくしたもの)を用意しています。カタログの「最小適用負荷」「微小負荷用」の欄を見て、PLC の入力電流より小さい値のものを選びます。
PLC の入力につなぐ押しボタン・セレクタスイッチは、最初から小さな電流用の接点を選ぶことにしておきます。押して入らないことがたまに起きる不具合は、再現しにくく、配線やプログラムを疑って時間を使いがちだからです。逆に、リレーのコイルのような大きめの負荷を直接切るボタンは、カタログの開閉の定格(DC24V で何 A か)を先に見ます。
- 小さな信号(logic-level)で 5 VDC・1 mA を最小推奨:Eaton 22 mm 押しボタンの仕様
- 入力インピーダンス 4.3 kΩ・ON 感度電流 3.5 mA 以上:三菱電機 FX5U
- Eaton(AutomationDirect 掲載)22 mm 押しボタンの仕様(取付穴 22 mm・IP65・IEC 60947-5-1 の AC15/DC13・小さな信号用の最小推奨 5 VDC 1 mA)
- 三菱電機 MELSEC iQ-F FX5U User’s Manual (Hardware)(JY997D55301U。入力 DC24V・入力インピーダンス 4.3 kΩ・ON 感度電流 3.5 mA 以上)
情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

押しボタンスイッチ・表示灯の選び方:5つの順番
横断歩道のボタンで言えば、まず「柱に付く大きさか」、次に「押しやすい形か」、そして「信号の制御装置につながるか」を決める順番です。
取付穴の大きさを決める。押しボタンや表示灯は、盤の扉にあけた丸い穴に付けます。穴の大きさでシリーズが分かれていて(22 mm 前後のものが広く使われ、ほかに 16 mm・25 mm・30 mm などもある)、同じ盤の中はそろえると、穴あけも部品の手配も楽になります。正確な穴の寸法はカタログで確かめます。
形と動き方を決める。⑥の表で形を、③でモーメンタリかオルタネイトかを決めます。色は⑦の表から選びます。
接点の数と種類を決める。a接点・b接点がいくつ要るか(1a・1b・1a1b など)。PLC につなぐなら小さな電流用の接点(⑩)、リレーなどを直接切るなら開閉の定格を見ます。
照光の有無と電圧を決める。照光式や表示灯は、点ける電圧(DC24V・AC100V など)を盤の電源に合わせます。最近は LED のものが多く、カタログに定格電流が書かれています。
置き場所の環境を確かめる。水・油・粉じんがかかるか。前面の保護の等級(IP65 など)を仕様で確かめます。手袋で押すなら、大きめの頭や突形を選びます。
表示灯の電流も、盤の電源の容量の見積もりに入れます。1つは小さくても、数が多いと合計は無視できません。
15 mA
8 個
15 mA × 8 個 = 120 mA
120 mA ÷ 1000 = 0.12 A
- □ 取付穴の大きさを、盤の中でそろえたか
- □ ボタンの色を⑦の表で決めたか(始動に赤、停止に緑を使っていないか)
- □ 停止・非常停止は b接点でつないだか
- □ PLC につなぐ接点は、小さな電流用か(最小適用負荷が入力電流より小さいか)
- □ 照光・表示灯の電圧が、盤の電源と合っているか
- □ 表示灯の色の意味を、工場の色の表とそろえたか
- □ 銘板(ボタンの名前の札)の言葉と、図面の言葉がそろっているか
LED の表示灯の中には抵抗が入っていて、決まった電圧でそのまま使えます。LED に自分で抵抗をつけて光らせるときの計算は、shirasusolo.net のLED 抵抗の計算の記事で解説しています。
- 取付穴 22 mm・IP65:Eaton 22 mm 押しボタンの仕様
- Eaton(AutomationDirect 掲載)22 mm 押しボタンの仕様(取付穴 22 mm・IP65・IEC 60947-5-1 の AC15/DC13・小さな信号用の最小推奨 5 VDC 1 mA)
情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

非常停止ボタンだけは、特別な決まりがある
横断歩道に、ボタンとは別に「非常ボタン」があったら、それはどんな状態でも、だれが押しても、必ず効かなければなりません。機械の非常停止ボタンも同じで、ほかのボタンとは別の決まりがあります。
- 色:頭は赤、まわりに台があれば黄(IEC 60204-1。メーカーの FAQ による)
- 形:手のひらでたたけるきのこ形が多い。押すと押された状態のまま止まり、引く・回すなどで戻す形が一般的
- 接点:b接点で、線が切れたら止まる側に倒れるようにつなぐ(⑤)
- つなぎ先:PLC の通信やタッチパネルの画面に頼らず、機械の動力を止める回路につなぐ
非常停止ボタンを戻しただけで機械が動き出すと危ないので、戻したあとに別の操作(リセット)をしてから運転できるようにするのが一般的です。⑧の動く図で、非常停止のあとに青の表示灯がついたのは、このリセットの操作を知らせるためです。
非常停止ボタンの規格(ISO 13850 など)・置き場所・回路の決まりは、機械の安全の規格と法令で細かく決まっています。この記事では、ほかの押しボタンとの違いだけを説明しています。具体的な設計は、規格の最新版と安全機器メーカーの資料で確かめてください。
扉が開いたら止める「インターロック」など、機械の安全のしくみと法令の決まりは、同じ筆者が運営する職場の安全衛生のブログ anzen-zukan.jp のインターロックとは(機械安全のしくみ)の記事で解説しています。
- 非常停止は赤・背景は黄:Schneider Electric FAQ(IEC 60204-1 の2021年9月の版から)
- Schneider Electric FAQ「What should the colours of pushbutton heads typically represent?」(IEC 60204-1 の2021年9月の版から:始動=白・灰・黒・緑で白を優先・赤は使わない、停止=黒・灰・白で黒を優先・緑は使わない・赤も可だが非常用の近くは避ける、非常停止=赤・背景は黄、リセット=青・白・灰・黒、黄=異常)
情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

よくある困りごと:ランプがつかない・ボタンが効かない
信号機がつかないとき、まず電球が切れていないか、次に電気が来ているか、を見ます。表示灯と押しボタンも、手前から順に確かめると早く見つかります。
盤の中を確かめるときは、感電に注意し、電源を切って検電してから配線をさわります。通電したまま電圧を測るかどうかは、職場のルールと機器の取扱説明書に従ってください。
上の行から順に確かめます。左の列が今の症状に近い行を探してください。
| 症状・いつ出るか | まず疑う原因 | 確かめる場所・測るもの | 直し方 |
|---|---|---|---|
| 表示灯が1つだけつかない | LED・電球の寿命、ランプの部分のゆるみ | ランプの部分を交換品と入れかえて点くか | ランプの部分か表示灯ごと交換 |
| 表示灯が全部つかない | 表示灯の電源(ヒューズ・ブレーカー) | 表示灯の電源の電圧(DC24V など) | 電源が落ちた原因を確かめてから戻す |
| 表示灯がうっすら光る・消えない | 電圧の合わない表示灯、漏れ電流(AC の長い配線など) | 表示灯の定格電圧と、つないでいる電圧 | 定格の合う表示灯に替える |
| 押しても、ときどき入らない | 接点の最小適用負荷を下回っている、接点の汚れ・摩耗 | PLC の入力のランプが、押すたびにつくか | 小さな電流用の接点に替える(⑩) |
| 押しても、まったく入らない | a接点と b接点のつなぎまちがい、配線の外れ | 接点の端子の番号と図面、端子のねじ | 図面どおりにつなぎ直す |
PLC の入力のランプから、止まった場所を探す順番がわかる
「ときどき入らない」は、配線のゆるみでも起きます。端子のねじや、圧着端子のかしめが原因のこともあるので、ボタンを押しながら配線を軽くゆすって、入力の表示が変わるかを見るのも手がかりになります。

よくある質問
まとめ:押しボタンは横断歩道のボタン、表示灯は信号機
- 押しボタンは人から機械へのお願い、表示灯は機械から人への知らせ
- a接点は押すとつながり、b接点は押すと切れる。図面は押す前の形で描く
- 止めるボタンは b接点で。線が切れたら止まる側に倒れる
- 押しボタンの色は、始動=白(緑も可)・停止=黒・リセット=青・非常停止=赤に黄の台。始動に赤、停止に緑は使わない
- 表示灯は、赤=非常・黄=異常・緑=正常・青=操作が要る・白=中立。点滅は 1.4〜2.8 Hz などの範囲で、大事な知らせに取っておく
- PLC の入力に流れる電流は約5.6 mA(24 V ÷ 4.3 kΩ)。小さな電流用の接点を選ぶ
押しボタンと表示灯が決まったら、それをつなぐ PLC の入力・出力と、回路の図面の読み方へ進みましょう。
PLC・サーボ・インバーターを実務で扱ってきた電気・制御の設計者です。制御の記事は、選び方・設定の順番・止まったときの切り分けを、実務の判断のしかたから書いています。機械(材料・機械要素・図面)の記事は本職ではないため、JIS とメーカーの技術資料を調べてまとめ、出典を示しています。
次に読むべき記事
押しボタンの信号は、PLC やリレーの回路に入って、はじめて機械を動かします。図面の記号とプログラムの書き方を知ると、ボタン1つの意味がもっとはっきりします。


