エアコンプレッサーの種類と選び方|レシプロ・スクリュー・スクロールの判断表

エアコンプレッサーは電気で動く大きな空気入れ。タンク付きのコンプレッサーのイラスト 空圧と油圧

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エアコンプレッサー(空気圧縮機)は、モーターで空気を押し縮めて工場の機械に送る「大きな空気入れ」です。小さくて使う時間が短いならレシプロ、一日中たくさん使うならスクリュー、静かで油の混じらない空気ならオイルフリーのスクロールが候補です。

選ぶ順番は、使う空気の量(L/min)の足し算 → 一番高い圧力に配管の損失を足す → 方式と給油式かオイルフリーか → 運転の時間と電気代・電源・置き場所、です。

この記事では、コンプレッサーを自転車の空気入れにたとえて、最後までその話で説明します。選ぶ4つの順番の判断表と、空気の量と電気代の計算もあります。

出典

情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

調べてまとめたこの記事は、筆者の本職(電気・制御)の外の内容を、メーカーの技術資料・公的機関・法令で調べてまとめました。⑩の電気代の計算と⑫の注意点は、電気・制御の設計者の側から見た内容です。

コンプレッサーとは?電気で動く大きな「空気入れ」

ひとことで言うとコンプレッサーは、モーターの力で外の空気を吸いこみ、ぎゅっと押し縮めてタンクにため、配管で機械へ送る機械です。
たとえると

自転車のタイヤに空気を入れるとき、空気入れのハンドルを押すと、筒の中の空気が押し縮められてタイヤへ入っていきます。何回も押すほど、タイヤはかたくなります(圧力が上がる)。エアコンプレッサーは、この空気入れを電気のモーターで休まず動かし、大きなタンクへ空気をためておく機械です。

左の言葉が出てきたら、右の本物に読みかえてください

空気入れのたとえコンプレッサーでは
ハンドルを押す人の腕モーター(電気で回る)
筒とピストン圧縮機本体(空気を押し縮める所)
タイヤ空気タンク(押し縮めた空気をためておく)
タイヤのかたさ圧力(MPa。タンクの圧力計で見る)
タイヤがかたくなったら押すのをやめる圧力開閉器(圧力スイッチ)がモーターを止める

押し縮められた空気を圧縮空気と呼びます。圧縮空気は、使う場所で元の大きさに戻ろうとする力で、機械を押したり、ほこりを吹き飛ばしたりします。

コンプレッサーは電気で動く大きな自転車の空気入れであることを示すイラスト

工場では何に使う?電気と並ぶ「もう1つの動力」

ひとことで言うとエアシリンダで物を押す・つかむ、エアブローで吹き飛ばす、エアの工具を回す。工場で使う電気の平均20〜25%を、コンプレッサーが使っているといわれます。

圧縮空気の使いみちは、大きく3つです。

  • エアシリンダ:空気で押し出す棒(ピストン)で、部品を押す・持ち上げる・つかむ。電磁弁(電気で開け閉めする空気の弁)で、PLC から動かします
  • エアブロー:ノズルから空気を吹いて、切りくずや水を飛ばす・部品を乾かす
  • エアの工具:ねじを締めるドライバー、塗装のスプレーガンなど
たとえると

家の水道を思い浮かべてください。蛇口をひねれば、いつでも水が出ます。工場の配管にも、同じように「いつでも出てくる圧縮空気」が通っていて、機械が必要なときに使います。コンプレッサーは、その水道局のポンプにあたります。

身近で便利なぶん、電気もたくさん使います。省エネルギーセンターの資料では、国内の製造工場で使う電力のうち、コンプレッサーの電力は平均で20〜25%といわれる、としています。だから、選び方ひとつで工場の電気代が大きく変わります。

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工場で圧縮空気を使う機械と道具のイラスト

コンプレッサーの種類:レシプロ・スクリュー・スクロール・ターボ

ひとことで言うと押し縮め方で分かれます。部屋を小さくして縮める「容積形」(レシプロ・スクリュー・スクロール)と、羽根車で勢いをつけて縮める「ターボ形」です。
たとえると

空気を押し縮める方法を、身近なものにたとえます。レシプロは自転車の空気入れのピストン、スクリューはかみ合う2本のねじのすき間に空気を閉じこめて奥へ送る方法、スクロールはかたつむりの殻のような渦巻きの道で、外から内へ空気を追いこむ方法です。

左の方式ごとに、縮め方・特長・向いている使い方を並べました。特長はメーカーのカタログと公的機関の資料に書かれている範囲です

方式押し縮め方メーカーの資料にある特長向いている使い方の例
レシプロ(往復動)ピストンが筒の中を行ったり来たりする手ごろな定番の形(タンク一体形が多い)小さな工場・作業場で、使う時間が短い・とぎれとぎれ
スクリューかみ合う2本のねじが回り、すき間の部屋を小さくする振動が少ない。大きな容量まで品ぞろえ一日中たくさん使う工場の主力
スクロール渦巻きの板が回るように動き、部屋を小さくする低騒音・低振動。オイルフリーが多い静かさが要る場所、油の混じらない空気が要る所
ターボ(遠心)羽根車で空気に勢いをつけ、その勢いを圧力に変える容積形とは性質が違う(圧力を下げたときの効き方など)大きな工場の大容量

省エネルギーセンターの資料も、コンプレッサーを「レシプロ形・スクリュー形・スクロール形等の容積式」と「ターボ形等の遠心式」に分けて説明しています。工場で多く見るのは容積形の3つなので、この記事ではその3つを中心にします。

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レシプロはピストン、スクリューは2本のねじ、スクロールは渦巻きにたとえたイラスト

レシプロ式のしくみ:空気入れのピストンそのもの

ひとことで言うとピストンが下がって空気を吸いこみ、上がって押し縮めて吐き出す。これをモーターの回転でくり返します。

レシプロ(reciprocating)は「行ったり来たり」という意味です。モーターの回転を、クランク(自転車のペダルのような回る腕)でピストンの往復に変えます。

たとえると

自転車のペダルを回すと、ひざは上下に動きます。レシプロ式は、その逆で、モーターがペダルを回し、つながった棒がピストンを上下させます。空気入れを、電気の力で1分間に何百回も押しているのと同じです。

  • 吸いこむ:ピストンが下がり、吸いこみ弁から外の空気が入る
  • 押し縮める:ピストンが上がり、筒の中の空気がぎゅっと縮む
  • 吐き出す:タンクより圧力が高くなると吐き出し弁が開き、タンクへ送る
  • 戻る:ピストンが下がり、次の空気を吸いこむ

1回ごとに「吸う・吐く」をくり返すので、空気が脈を打つように出ます。音や振動が出やすいのはこのためです。小さな機種はタンクの上にのった形(タンクマウント)が多く、圧力がたまったらモーターを止め、下がったらまた動かす(⑫)使い方が基本です。

レシプロコンプレッサーのピストンが空気を吸いこみ、押し縮めて吐き出す4つのコマの図

スクリュー式とスクロール式:部屋をだんだん小さくする

ひとことで言うとどちらも回り続けながら、空気を閉じこめた部屋を少しずつ小さくして押し縮めます。ピストンのように行ったり来たりしないので、空気の出方がなめらかです。
たとえると

スクリュー式は、かみ合う2本のねじのすき間を、空気が奥へ運ばれていくうちに部屋がせまくなる形です。スクロール式は、かたつむりの殻の渦巻きの道を、外から内へ追いこまれるうちに、道がせまくなって押し縮められる形です。

左の比べる所ごとに、2つの方式を並べました。数値の範囲は機種によるので、カタログで確かめます

比べる所スクリュー式スクロール式
縮め方かみ合う2本のねじが回る渦巻きの板が、もう1枚の渦巻きのまわりを回るように動く
空気の出方なめらかなめらか(吸いこみ・吐き出しの弁がない形が多い)
よく見る大きさ数 kW から数十 kW 以上まで小さめの機種を何台か組み合わせる形もある
メーカーの資料の特長振動が少ない高性能タイプ低騒音・低振動。潤滑油を使わない形は研究・歯科・食品などクリーンな用途に多い

スクリュー式は、一日中動かす工場の主力として、インバーターで回る速さを変えて空気の量を合わせる機種も多くあります(⑫)。

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スクリュー式とスクロール式で、空気の部屋がだんだん小さくなって押し縮められる様子の模式図

給油式とオイルフリーの違い:空気に油が混じってよいか

ひとことで言うと給油式は圧縮する所を油で潤滑・冷却する形、オイルフリーは圧縮する所に油を使わない形です。空気に油が混じっては困る用途ならオイルフリーです。
たとえると

自転車のチェーンに油をさすと、なめらかに回り長持ちします。でも、その油が服についたら困りますね。給油式は「油をさしてなめらかに回す」形で、空気にもごくわずかに油が混じる可能性があります。オイルフリーは「服を汚せない場所」のための形です。

左の条件に当てはまる行を、上から探します。最後の行は、どれにも当てはまらないときの決め方です

条件選ぶもの理由
食品・医薬・研究・塗装など、空気が製品にふれるオイルフリー空気に油が混じると製品を汚すおそれがある
エアシリンダ・エアの工具が中心の一般の工場給油式(+フィルタ)手ごろで、同じ出力でも選べる機種が多い
給油式を使うが、ある機械だけきれいな空気が要るその手前にフィルタ・ドライヤを足す全体をオイルフリーにしなくてよい場合がある
迷ったら空気を使う機器のメーカーが求める空気の質機器の取扱説明書に、油分・水分の条件が書かれていることがある

メーカーのカタログでも、同じ方式に給油式とオイルフリーの両方の品ぞろえがあります。給油式のドレン(空気から出る水)には油が混じるため、そのまま下水へ流さず、分離してから流すよう注意書きがあります。

給油式とオイルフリーの使い分けを、油を使う機械と食品工場で比べたイラスト

カタログの読み方:kW・制御圧力・吐き出し空気量

ひとことで言うと見るのは4つ。電動機の出力(kW)・制御圧力(MPa)・吐き出し空気量(L/min または m³/min)・タンクの容量(L)です。

コンプレッサーのカタログの仕様表には、たくさんの数字が並びます。最初に見るのは次の4つです。

  • 電動機の定格出力(kW):モーターの大きさ。電気代と、電源・ブレーカーの大きさにかかわる
  • 制御圧力(MPa):タンクの圧力をこの範囲に保つ、という設定。「0.8〜1.0 MPa」なら、0.8 で動き出し 1.0 で止まる(圧力開閉器式の場合)
  • 吐き出し空気量(L/min・m³/min):1分間に送り出せる空気の量。大気圧の状態に直した量で書かれる
  • 空気タンクの容量(L):ためておける空気の器の大きさ
たとえると

ジュースの紙パックに「濃縮還元」と書いてあるように、カタログの空気の量は「押し縮める前の、ふつうの空気に戻したら何リットルか」で書かれています。タンクの中の縮んだ空気の体積ではありません。

あるメーカーのカタログでは、「吐き出し空気量は最高圧力時に吐き出す空気量を吸込状態(大気圧)に換算した値」と注記しています。圧力の単位はふつうゲージ圧(まわりの大気圧をゼロとした圧力)です。

同じカタログから、方式の違う例を並べてみます(値はカタログの仕様表の例。機種と圧力で変わります)。

右の列は、吐き出し空気量を出力で割った自作の目安です。圧力の条件がそろっていないので、方式どうしの優劣ではなく「桁の感覚」として見てください

方式(カタログの例)出力圧力吐き出し空気量1 kW あたり
給油式レシプロ・タンク 100 L3.7 kW0.8〜1.0 MPa400 L/min約108 L/min
給油式レシプロ・タンク 180 L7.5 kW0.8〜1.0 MPa855 L/min約114 L/min
オイルフリースクロール3.7 kW0.65〜0.8 MPa425 L/min約115 L/min
給油式スクリュー7.5 kW1.0 MPa 時900 L/min約120 L/min
給油式スクリュー37 kW最高 0.7 MPa7000 L/min約189 L/min

ざっくり言うと、出力1 kW あたり 0.1〜0.2 m³/min(100〜200 L/min)が、このカタログの例での目安です。大きな機種や低い圧力ほど、1 kW あたりの空気は多くなる傾向が見えます。

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コンプレッサーのカタログの仕様の読み方と、出力1キロワットあたりの空気量の比較図

計算してみよう①:必要な空気の量を、エアシリンダから足し算する

ひとことで言うとエアシリンダ1往復の空気は「動く部屋の体積 × 圧力の倍率」。1分の回数と本数を掛けて足し、余裕を乗せた量を、コンプレッサーの吐き出し空気量と比べます。

コンプレッサーが小さすぎると、空気が足りずに機械の動きが遅くなったり止まったりします。大きすぎると、高い買い物と電気のむだになります。大きさを決める出発点が、使う空気の量です。

たとえると

家族の人数とお風呂の回数から、給湯器の大きさを決めるのと同じです。1回に使うお湯の量 × 回数 × 人数を足して、少し余裕を見ます。

式の出どころ:エアシリンダは、筒の中に空気を入れてピストンを押す部品です。1往復で使う空気は、まず「押す側と戻す側の、動いた部屋の体積」です。ただし中の空気は押し縮められているので、大気圧に直すと体積が大きくなります。その倍率が「絶対圧 ÷ 大気圧」=(使う圧力 + 0.1013)÷ 0.1013 です。ミスミの技術資料には、コンプレッサーの選定に使う式として、次の形が載っています。

1往復の空気[L] =(押す側の面積 + 戻す側の面積)× ストローク ×(圧力 + 0.1013)÷ 0.1013 ÷ 1,000,000

  • 面積[mm²]:押す側は筒の内側の円の面積。戻す側は、そこからピストンの棒(ロッド)の分を引く
  • ストローク[mm]:ピストンが動く長さ
  • 圧力[MPa]:使う圧力(ゲージ圧)。0.1013 は大気圧[MPa]
  • ÷ 1,000,000:mm³ を L(リットル)に直す(1 L = 1,000,000 mm³)

例として、内径 40 mm・ロッド 16 mm・ストローク 100 mm のシリンダを、0.5 MPa で1分に10往復、4本動かす機械を考えます(値は例)。

計算例
計算例1:エアシリンダ4本の機械に必要な空気の量
押す側の面積(円の面積 = 3.1416 × 直径 × 直径 ÷ 4)
3.1416 × 40 mm × 40 mm ÷ 4 = 1256.6 mm²
戻す側の面積(ロッド 16 mm の円を引く)
1256.6 mm² − 3.1416 × 16 × 16 ÷ 4 = 1256.6 − 201.1 = 1055.6 mm²
1往復で動く部屋の体積(面積の合計 × ストローク)
(1256.6 + 1055.6)mm² × 100 mm = 231,220 mm³ = 0.2312 L
大気圧に直す倍率(絶対圧 ÷ 大気圧)
(0.5 + 0.1013)MPa ÷ 0.1013 MPa = 5.936
1往復の空気(大気圧の状態)
0.2312 L × 5.936 = 1.372 L
1分10往復 × 4本、さらに余裕 1.5倍(例。配管・漏れ・将来の分)
1.372 L × 10 回/min × 4 本 = 54.9 L/min → × 1.5 = 82.3 L/min
この機械には、吐き出し空気量 約82 L/min 以上のコンプレッサーが要る(圧力は 0.5 MPa に配管の損失を足した値以上)

答えの意味を確かめます。⑧のカタログの例では、0.75 kW の小さなレシプロが 75 L/min、1.5 kW が 170 L/min です。82 L/min なら 0.75 kW では足りず、1.5 kW クラスが候補になります。シリンダと電磁弁のあいだの配管の中の空気も毎回使われるので、配管が長い機械では、その分も同じ考え方で足します。

桁の感覚もつかんでおきます。内径 40 mm のシリンダ1本が1往復で使う空気は、約1.4 L(1.5 L のペットボトル1本分くらい)。それが1分に10回なら、1本で約14 L/min です。

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エアシリンダの空気消費量から、コンプレッサーに必要な空気量を出す計算の流れ図

計算してみよう②:コンプレッサーの電気代を、モーターの kW から出す

ひとことで言うと年間の電気代 ≒ モーターの入力の kW × 平均の負荷率 × 運転時間 × 電気の単価。圧力を必要以上に高くすると、そのぶん電気が増えます。

コンプレッサーは買う値段より、何年も払い続ける電気代のほうが大きくなりがちです。選ぶ段階で電気代の桁をつかんでおくと、方式やインバーター機を比べる物差しになります。ここは電気の設計者の側から見た計算です。

たとえると

車の燃料代を「燃費 × 走る距離 × ガソリンの値段」で見積もるのと同じです。コンプレッサーでは、燃費にあたるのがモーターの電力、走る距離が運転時間です。

式の出どころ:電力量(kWh)は「電力(kW)× 時間(h)」です。カタログの kW はモーターが軸から出す力(出力)なので、電気から取る力(入力)は、効率で割って大きくなります。さらに、空気を使わない時間は止まったり軽く回ったりするので、平均の負荷率を掛けます。

年間の電気代[円] = 出力[kW] ÷ 効率 × 平均の負荷率 × 運転時間[h] × 単価[円/kWh]

計算例
計算例2:7.5 kW のスクリューの年間の電気代(値は例)
モーターの入力(効率を 90% と置く)
7.5 kW ÷ 0.9 = 8.33 kW
平均の負荷率を掛ける(60% と置く)
8.33 kW × 0.6 = 5.0 kW
年間の運転時間を掛ける(4000 時間と置く)
5.0 kW × 4000 h = 20,000 kWh
電気の単価を掛ける(25 円/kWh と置く)
20,000 kWh × 25 円/kWh = 500,000 円
7.5 kW 1台で、年間 約50万円の電気代(この条件の例)

運転時間 4000 時間・負荷率 60% は、あるメーカーのカタログが省エネ効果を試算するときに使っている条件の例にそろえました。効率と単価は例なので、実際はモーターの銘板と電気の契約で置きかえます。

次に、圧力を下げるとなぜ電気が減るのかを、空気を押し縮める仕事の理論式で確かめます。熱が逃げないと考えたときの理論の動力は、「(絶対圧 ÷ 大気圧)の 0.2857 乗 − 1」に比例します(0.2857 は空気の性質から決まる数)。ここでも絶対圧を使います。

計算例
計算例3:吐き出し圧力を 0.7 MPa から 0.6 MPa に下げると、理論の動力は何%減るか
0.7 MPa の絶対圧の倍率
(0.7 + 0.1013)÷ 0.1013 = 7.910
0.2857 乗して 1 を引く
7.910^0.2857 − 1 = 1.8056 − 1 = 0.8056
0.6 MPa の倍率
(0.6 + 0.1013)÷ 0.1013 = 6.923
0.2857 乗して 1 を引く
6.923^0.2857 − 1 = 1.7381 − 1 = 0.7381
比べる(下げたあと ÷ 下げる前)
0.7381 ÷ 0.8056 = 0.916 → 約8.4% 減る
計算例2の電気代に当てはめると
500,000 円 × 0.084 = 約42,000 円/年
理論では約8%。省エネルギーセンターの資料の「0.1 MPa 下げれば使用電力を約8%」とほぼ同じ

つまり、⑨で出した「本当に要る圧力」より高く設定しているぶんは、毎年の電気代として払い続けることになります。ただし、機種ごとに設定できる下限があり、遠心式(ターボ)では効き方が違います。圧力を下げる手順や、エア漏れを止める省エネは、別の記事でくわしく扱う予定です。

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コンプレッサーの年間の電気代の計算と、吐き出し圧力を下げたときの理論動力の変化のグラフ
おすすめの本

圧力を下げる手順や、エア漏れを止める省エネを先にくわしく知りたいときの本の例です。日刊工業新聞社の『製造現場の省エネ技術 エアコンプレッサ編』(長谷川和三 著・2012年2月発行)は、エアコンプレッサの電力消費と種類から、運転圧力を下げる省エネ、制御による省エネ、ドライヤの選び方、エアブローの省エネ、空気漏れの対策、購入のときの注意までを扱う本です(楽天ブックスの目次)。発行は2012年。機種の数値は、今のカタログで確かめてください。

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エアコンプレッサーの選び方:4つの順番と判断表

ひとことで言うと空気の量 → 圧力 → 方式と油の有無 → 運転の時間・電気代・電源・置き場所、の順に決めます。

空気入れでいえば、「何台の自転車に、どれくらいの頻度で入れるか(量)」「どれくらいかたくするか(圧力)」「どんな空気入れか(方式)」「どこに置いて、どう動かすか」の順です。最初に量を出さないと、方式を決めても大きさが決まりません。

STEP 1

使う空気の量を足し算する。エアシリンダ・エアブロー・工具など、空気を使う機器を一覧にし、⑨の計算かメーカーの空気消費量の値で足します。同時に使う機器と、時々しか使わない機器を分けておきます。

STEP 2

要る圧力を決める。一番高い圧力が要る機器の使用圧力に、配管・フィルタ・ドライヤを通るあいだに下がる分を足します。必要以上に高くすると、⑩のとおり電気代が増えます。

STEP 3

方式と、給油式かオイルフリーかを決める。使う時間の長さ・量・静かさ・空気の質(④⑥⑦の表)で決めます。

STEP 4

運転の時間・電気代・電源・置き場所を確かめる。⑩の計算で電気代の桁を見て、電源の電圧と周波数(50/60 Hz)、ブレーカーと配線、換気・騒音・法令(⑫)を確かめます。

左の条件に当てはまる行を探します。複数に当てはまるときは、上の STEP の順で優先します

条件候補理由
使う量が少なく、使う時間が短い・とぎれとぎれレシプロ(タンク一体形)手ごろ。圧力開閉器で止めておける
一日中、たくさん使うスクリュー(使う量が変わるならインバーター機)連続運転に向き、量の変化に合わせやすい
静かさが要る・事務所や住宅の近くスクロール低騒音・低振動の特長
空気が製品にふれる(食品・医薬など)オイルフリー空気に油が混じらない
使う量が大きく変わる・将来増える小さめの機種を複数台、または回転数を変えられる機種少ない量のときにむだに回さない
迷ったら使う量と圧力の一覧を持って、メーカーか販売店に相談保証値や設置の条件は機種ごとに違う
コンプレッサーを選ぶ前のチェックリスト
  • □ 使う機器の一覧と、それぞれの空気の量(L/min。大気圧の状態)を出したか
  • □ 同時に使う量と、余裕の倍率を決めたか
  • □ 一番高い圧力の機器と、配管の損失を足した圧力を出したか
  • □ 空気の質(油・水・ごみ)の条件を、機器の取扱説明書で確かめたか
  • □ 年間の運転時間と電気代の桁を計算したか
  • □ 電源(電圧・周波数)、ブレーカー・配線、換気・騒音・法令を確かめたか
エアコンプレッサーを選ぶ4つの順番の流れ図

電気・制御の設計者から見た注意点:電源・動き出す回数・法令

ひとことで言うとモーターの電源と始動、圧力開閉器で動き出す回数、周波数、そして騒音と圧力容器の法令。機械の側だけでなく、電気の側の条件も先に確かめます。

コンプレッサーは、空気の機械であると同時に、大きなモーターをもつ電気の機械です。電気の設計の側から見ると、次の点を先に確かめておくのがおすすめです。

左の項目ごとに、理由と確かめる場所を並べました。数値は機種で違うので、右の列の資料で確かめます

確かめることなぜ要るかどこで確かめるか
電源の電圧と周波数(50/60 Hz)50 Hz 用と 60 Hz 用を分けている機種があり、周波数の違う地域では使えないことがあるカタログの仕様の注記・銘板
配線の太さと漏電遮断器の定格モーターは動き出す瞬間に大きな電流が流れる。機種ごとにメーカーの指定があるカタログの「電気容量・配線表」・取扱説明書
モーターの余裕度(サービスファクタ)定格出力より15〜30%大きく出せる機種があり、銘板の kW より電力が大きくなることがあるカタログの注記。実際の電力は測って確かめる
動き出し方(直入れ・スターデルタ・インバーター)動き出すときの電流の大きさが変わり、電源やほかの機械への影響が変わる機種の仕様・取扱説明書
1時間に動き出す回数圧力開閉器で入/切する機種は、使い方とタンクの大きさで回数が変わる下の動く図・取扱説明書の制限

モーターの動き出し方(直入れ・スターデルタ始動など)のしくみは、同じ筆者が運営する電気と品質管理のブログ shirasusolo.net の誘導電動機の始動法の記事で解説しています。

たとえると

小さなレシプロの多くは、トイレのタンクの浮き玉と同じ動きをします。水(空気)が減って浮き玉が下がると給水(モーター)が始まり、満タンになると止まります。この浮き玉にあたるのが圧力開閉器(圧力スイッチ)です。

次の動く図で、使う空気の量とタンクの大きさを変えたとき、モーターが1時間に何回動き出すかを確かめてみましょう。

動かして確かめる

吐き出し空気量 400 L/min のコンプレッサーが、タンクの圧力が 0.8 MPa まで下がると動き、1.0 MPa まで上がると止まる例です。使う空気の量とタンクの大きさを変えて、モーターが1時間に何回動き出すかを見てください。

コンプレッサー 運転中 タンク 0.90 MPa 使う 空気 → 1.0 MPa で止まる 0.8 MPa で動き出す タンクの圧力(ゲージ圧)。横は時間(右がいま。約6分ぶん) モーターが動き出す回数:1時間に約30回 ためる 約1.0分 + 使いきる 約1.0分 = 1回り 約2.0分

いまの様子:スライダーを動かすと、ここに説明が出ます。

動きは説明のための作り物です。数値は例で、温度の変化・配管の容積・モーターの起動の遅れは考えていません。空気の量は大気圧の状態に直した量(本文⑧)、タンクの空気は「容積 ×(圧力の差 ÷ 大気圧 0.1013 MPa)」で計算しています。

見てほしいのは、使う量が吐き出し量の半分くらいのときに回数が一番多くなり、タンクを2倍にすると回数が半分になることです。モーターは動き出すたびに大きな電流が流れるので、回数が多すぎると、モーターや電磁開閉器(モーターの電気を入れ切りする部品)に負担がかかります。許される回数は機種の取扱説明書で確かめます。

7.5 kW や 0.2 MPa・0.04 m³ は、法令に書かれている区切りです。くわしい義務は、カタログの法規の頁と所管の役所で確かめてください

法令対象になるものすることの例
騒音規制法(と振動規制法)原動機の定格出力 7.5 kW 以上の空気圧縮機(指定地域にある工場)設置の前に、市町村を通じて都道府県知事へ届け出る。規制の中身は地域で違う
労働安全衛生法(第二種圧力容器)ゲージ圧 0.2 MPa 以上の空気をためる容器で、内容積 0.04 m³ 以上など定期自主検査と記録など。タンクの大きさと圧力で当てはまるかを確かめる
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出典

情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

コンプレッサーまわりの電気の系統と空気の系統、圧力開閉器の位置を示した図

よくある失敗と、空気が足りないときの切り分け

ひとことで言うと「圧力が上がらない」「機械の動きが遅い」は、使う量の増加・漏れ・フィルタの詰まり・配管の細さ・コンプレッサーの能力不足の順に疑います。

空気入れでいえば、タイヤがかたくならない原因は、空気入れが弱いとは限りません。タイヤに穴があいている、ホースが細い、口金がゆるい、のほうが多いこともあります。

上の行から順に確かめます。左の列が今の症状に近い行を探してください。

症状・いつ出るかまず疑う原因確かめる場所・測るもの直し方
タンクの圧力が上がりきらない・コンプレッサーが止まらない使う量が吐き出し空気量を超えた/配管・継手からの漏れ使う機器が増えていないか、休み時間に機械を止めて圧力が下がるか(漏れの目安)使う量を見直す。漏れを直す。足りなければ増設
タンクの圧力は十分なのに、機械の動きが遅いフィルタの詰まり・配管が細い・ドライヤなどでの圧力の下がり機械の近くの圧力計と、タンクの圧力計の差フィルタの交換、配管を太く・短く
モーターがひんぱんに動き出し、止まりをくり返すタンクが小さい・使う量が吐き出し量の半分前後(⑫の動く図)1時間の動き出しの回数、タンクの容量タンクを足す。制御のしかたが違う機種を検討
電源を入れるとブレーカーが落ちる配線・ブレーカーが機種の指定と合っていない/タンクに圧力が残ったまま動き出すカタログの電気容量・配線表と、実際のブレーカーの定格メーカー指定の配線と定格に合わせる。取扱説明書の手順で点検
注意|ここで間違えやすい

コンプレッサーやタンク・配管を点検するときは、運転を止めて電源を切り、タンクと配管の圧力を抜いてから作業します。圧縮空気は勢いよく吹き出すので、顔や体に向けないでください。作業の可否は職場のルールと取扱説明書に従ってください。

左の失敗の多くは、⑪の4つの順番を守れば防げます

よくある失敗起きること防ぎ方
今の使う量だけで、ぎりぎりの大きさを選ぶ機械を1台足しただけで空気が足りなくなる⑨で余裕の倍率を決め、将来の増設を一覧に入れておく
「念のため」圧力を高く設定する電気代が増える(0.1 MPa で約8%)⑪の STEP 2 で、要る圧力から決める
タンクの中の縮んだ空気の体積と、吐き出し空気量を比べる必要な量を大きく見誤るどちらも大気圧の状態に直してから比べる(⑧⑨)
周波数の違う地域へ機械ごと移す性能が変わる・使えない機種がある50/60 Hz の仕様を銘板で確かめる
空気が足りないときに確かめる場所を、コンプレッサーから機器まで順に示した図

よくある質問

Q. コンプレッサーとは何ですか?

A. モーターで空気を吸いこみ、押し縮めてタンクにため、工場の機械へ送る機械です。電気で動く大きな空気入れです。

Q. レシプロとスクリューの違いは何ですか?

A. レシプロはピストンの往復で、使う時間が短い所向き。スクリューは2本のねじが回り続け、一日中使う所向きです。

Q. オイルフリーコンプレッサーはいつ選びますか?

A. 食品・医薬・研究など、空気が製品にふれて油が混じると困るときです。一般の工場は給油式とフィルタの組み合わせも多いです。

Q. コンプレッサーの大きさはどう決めますか?

A. 使う機器の空気の量を大気圧の状態に直して足し、余裕を乗せた量を、カタログの吐き出し空気量と比べて決めます。

Q. コンプレッサーの電気代はどれくらいですか?

A. 出力÷効率×負荷率×運転時間×単価で見積もります。7.5 kW・4000時間の例では年間約50万円でした。

Q. 吐き出し空気量とは何ですか?

A. 1分間に送り出せる空気の量を、押し縮める前の大気圧の状態に直した値です。単位は L/min や m³/min です。

まとめ:コンプレッサーは、量 → 圧力 → 方式 → 電気の順で選ぶ

POINT
  • エアコンプレッサーは、モーターで空気を押し縮めてためる「電気で動く大きな空気入れ」
  • レシプロは短い時間・少ない量、スクリューは一日中・多い量、スクロールは静かさとオイルフリー
  • カタログの吐き出し空気量は、大気圧の状態に直した量。圧力はふつうゲージ圧
  • 必要な空気の量は「動く部屋の体積 ×(圧力+0.1013)÷0.1013 × 回数 × 本数 × 余裕」で足し算する
  • 電気代は「出力÷効率×負荷率×時間×単価」。7.5 kW・4000時間の例で年間約50万円。圧力を 0.1 MPa 下げると理論で約8%減る
  • 電源の電圧と周波数、配線とブレーカー、動き出す回数、騒音規制法(7.5 kW 以上)と第二種圧力容器を先に確かめる

コンプレッサーが決まったら、そのモーターを回すインバーターや、電源を守るブレーカーの選び方へ進みましょう。

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シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

PLC・サーボ・インバーターを実務で扱ってきた電気・制御の設計者です。制御の記事は、選び方・設定の順番・止まったときの切り分けを、実務の判断のしかたから書いています。機械(材料・機械要素・図面)の記事は本職ではないため、JIS とメーカーの技術資料を調べてまとめ、出典を示しています。

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コンプレッサーは、空気の機械であり、モーターの機械でもあります。モーターと電源の側を知ると、選び方の「電気の条件」がもっとよく見えてきます。

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