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MCCB(配線用遮断器)とは何で、何アンペアのものを選べばいいのか?
MCCB は Molded Case Circuit Breaker の頭文字で、工場の盤に付ける「家のブレーカー」の仲間です。電流が流れすぎたときに切って電線を守ります。選ぶ数字は2つ。定格電流は「負荷の電流 ≦ 定格電流 ≦ 電線の許容電流」、遮断容量は置く場所の最大の短絡電流より大きいものです。
この記事では、配線用遮断器を家の分電盤のブレーカーにたとえて、最後までその話で説明します。短絡電流を「定格電流×100÷%Z」で見積もる計算と、回路ごとの判断表もあります。
- 配線用遮断器の用途・しくみ:三菱電機の製品紹介
- 規格:JIS C 8201-2-1:2021(回路遮断器。IEC 60947-2 を基に作成)
- 遮断する能力の決まり:経済産業省「電気設備の技術基準の解釈」第33条
- 三菱電機 配線用遮断器(ノーヒューズ遮断器)の製品紹介(用途・引き外し方式)
- 経済産業省「電気設備の技術基準の解釈」(令和7年11月20日改正まで反映。第33条 低圧電路に施設する過電流遮断器の性能等)
情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。
配線用遮断器(MCCB)とは:工場の盤の「家のブレーカー」
家で電子レンジとドライヤーとエアコンを同時に使うと、「バチン」とブレーカーが落ちることがありますよね。あれは、電線に流れる電流が多すぎて、このままだと電線が熱くなってしまうので、ブレーカーが電気を切ったのです。
配線用遮断器は、家の分電盤のブレーカーの工場版です。家のブレーカーが部屋ごとのコンセントの線を守るように、工場の盤の配線用遮断器は、モーター1台・インバータ1台・電源1台ごとの線を守ります。ふだんはスイッチとして手で入れたり切ったりでき、流れすぎたときだけ自分で切れます。
メーカーの製品紹介では、配線用遮断器は低圧の回路(交流600V以下・直流750V以下)の電路を守り、開け閉めするための機器とされています。ヒューズと違って、切れたあとも原因を取り除けば、レバーを上げるだけで何度でも使えます。
この記事に出てくるたとえと、本物の対応です。わからなくなったら、この表に戻ってください
| たとえ(家) | 工場の盤では |
|---|---|
| 分電盤のブレーカー | 配線用遮断器(MCCB) |
| 家電の使いすぎで落ちる | 過負荷(定格より少し多い電流が続く)で切れる |
| コードが傷んで線どうしがくっついた | 短絡(ショート)。とても大きな電流が一気に流れる |
| ブレーカーの「20A」などの表示 | 定格電流 |
| (家ではほとんど意識しない) | 遮断容量:止めきれる短絡電流の上限 |
電気が地面へ漏れたときに切る「漏電遮断器」は、見張っているものが違う別の仲間です。2つの違いは、同じ筆者が運営する電気のブログ shirasusolo.net の漏電遮断器と配線用遮断器の違いで図解しています。

中のしくみ:じわじわ型と一瞬型の2人の見張り番
電流が流れすぎる場面には、2種類あります。1つは、定格より少し多い電流が長く続く過負荷。もう1つは、線どうしがくっついて、ものすごく大きな電流が一気に流れる短絡です。配線用遮断器は、それぞれに合ったしかけで切ります。
同じ箱の中に、性格の違う2人の見張り番がいると考えてください
| じわじわ型(熱動式) | 一瞬型(電磁式) | |
|---|---|---|
| 働く場面 | 過負荷:少し多い電流が続く | 短絡:とても大きな電流が一気に流れる |
| しかけ | バイメタル(2種類の金属を貼り合わせた板)が、電流の熱で温まって曲がり、レバーを外す | 電流が作る磁石の力で、鉄の部品を一瞬で引き、レバーを外す |
| 切れるまでの時間 | 電流が大きいほど早い(数秒〜数十分) | ほぼ一瞬 |
| たとえ | 重い荷物を持ち続けて、だんだん腕が疲れて手を離す | 熱いやかんに触って、思わず手を引っこめる |
メーカーの製品紹介でも、このような熱動電磁式のほかに、電磁石だけで時間の遅れも作る完全電磁式や、電流を電子回路で測って切る電子式があると説明されています。どの方式でも、「少し多いならしばらく待つ、とても多いならすぐ切る」という考え方は同じです。
じわじわ型は「熱」で働くので、まわりが熱いと早めに切れやすくなります。メーカーは基準にする周りの温度を決めていて、それより熱い盤の中で使うときは、流してよい電流を下げる表を用意しています。盤の中の温度が高いときは、カタログで基準の温度を確かめてください。

動作特性:電流の大きさで、切れるまでの時間が変わる
「電流が何A のとき、何秒で切れるか」を表したグラフを、動作特性(または時間−電流特性)と呼びます。横に電流(定格の何倍か)、縦に切れるまでの時間をとると、右下がりの曲線になります。
規格では、この曲線の大事な点が決められています。国際規格 IEC 60947-2(日本の JIS C 8201-2-1 はこれを基にした規格)では、定格電流の1.05倍では決められた時間(規約時間)のあいだ切れず、1.3倍では規約時間内に切れることが求められます。メーカーの資料では、規約時間は 63A までの品で1時間と説明されています。
日本の電気設備の決まり(電気設備の技術基準の解釈)にも、配線用遮断器について「定格電流の1倍では自動で切れず、1.25倍と2倍の電流では、定格電流の大きさごとに決めた時間内に切れる」という形の決まりがあります(電気用品安全法の対象品などは別の決まり)。
家のブレーカーが、家電を少し使いすぎたくらいではすぐ落ちず、しばらくしてから落ちるのは、じわじわ型の見張り番が「本当に使いすぎが続くか」を待っているからです。でも、コードがショートしたときは、一瞬型の見張り番がすぐに切ります。
ここまでの話を、動く図で確かめましょう。同じ 30A のブレーカーでも、流す電流によって、どちらの見張り番が働くか、切れるまでの時間がどう変わるかに注目してください。
動かして確かめる
定格電流 30A のブレーカー(例)に、いろいろな大きさの電流を流してみます。電流を選んで「流す」を押すと、中のバイメタル(熱で曲がる板)と電磁石のどちらが働くか、右のグラフのどこに当たるかが見えます。
いまの様子:電流を選んで「流す」を押してください。
動きとグラフは説明のための作り物です(30A・曲線の形・一瞬型に切りかわる10倍は例)。実際の切れるまでの時間は、機種ごとの動作特性曲線で確かめてください。動きの速さは、長い時間を数秒に縮めています。
見てほしいのは、定格の1.25倍なら約30分、2倍なら約1分、短絡なら一瞬と、同じ「流れすぎ」でも切れるまでの時間が何けたも違うところです(数字はこの例の曲線の値)。本物の時間は、機種ごとのカタログの動作特性曲線で確かめます。
- 規約不動作電流 1.05×In・規約動作電流 1.3×In・規約時間(63A までの品で1時間)・基準の周囲温度:Schneider Electric の FAQ(IEC 60947-2 の説明)
- JIS C 8201-2-1:2021 は IEC 60947-2:2016 と Amendment 1:2019 を基に作成:日本規格協会の公開プレビュー
- 配線用遮断器の動作の決まり:電気設備の技術基準の解釈 第33条第3項
- Schneider Electric FAQ FA369327(IEC 60898-1 と IEC 60947-2 の規約動作電流・規約不動作電流・規約時間・基準の周囲温度)
- 日本規格協会 JIS C 8201-2-1:2021 の公開プレビュー(回路遮断器(配線用遮断器及びその他の遮断器)。IEC 60947-2 を基に作成)
情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

配線用遮断器の選び方:決める順番は5段
カタログには、たくさんの数字が並んでいます。迷わないように、決める順番を先に見ておきます。
電圧と極の数:使う電圧(三相200V など)に対応しているか。三相なら3極(3本の線を同時に切る)、単相なら2極が基本です。
定格電流:負荷の電流と、つながる電線の許容電流から決めます(⑥⑦)。
遮断容量:置く場所の短絡電流から決めます(⑨〜⑪)。
回路に合う形:インバータやモーターの回路では、メーカーの選定表を見ます(⑧)。
付属品:切れたことを知らせる接点、外からレバーを操作する部品など、必要なものを足します。
家のブレーカーを買い替えるときも、「家の電圧に合う形か」「何A か」を順に確かめますよね。工場では、それに「止めきれる勢い(遮断容量)」と「つなぐ相手(インバータなど)」が加わる、と考えてください。
この中で、計算が要るのは定格電流と遮断容量の2つです。順番に見ていきます。

定格電流の選び方:負荷の電流と電線にはさまれた値
定格電流は、ブレーカーが一日中流し続けても切れない電流です。では、どう決めればよいでしょうか。考えることは2つだけです。
- 下の線:負荷の電流。ふだん流れる電流より定格が小さいと、ふつうに使っているだけで切れてしまいます
- 上の線:電線の許容電流。電線が熱くならずに流せる電流です。定格がこれより大きいと、電線が熱くなっても切れず、電線を守れません
負荷の電流 ≦ 定格電流 ≦ 電線の許容電流
見張り番の役目は「電線を守ること」です。家の部屋のコンセントの線が細いのに、大きな値のブレーカーを付けたら、線が熱くなっても見張り番は黙ったままです。逆に、家電の電流より小さいブレーカーでは、使うたびに落ちてしまいます。ちょうどその間に入る値を選びます。
電線の許容電流は、電線の太さ・種類・まわりの温度で決まります。決め方は、同じ筆者が運営する電気のブログ shirasusolo.net の電線の太さの選び方で説明しています。建物の幹線のように、電動機がつながるときの電線と遮断器の大きさには法令の決まりがあり、低圧幹線の許容電流と過電流遮断器で図解しています。
定格電流で迷ったときは、「この見張り番は何を守っているのか」に戻ります。守る相手は電線なので、負荷がぎりぎりで1段上の定格にしたくなったら、ブレーカーだけを上げるのではなく、電線もその定格に耐える太さになっているかを必ず一緒に見直します。ブレーカーの値だけを上げるのは、見張り番の目をつぶらせるのと同じだからです。

計算例1:ヒーター 6kW の回路は何A のブレーカーにするか(例)
何のために計算するのでしょうか。定格電流を選ぶには、まず「ふだん流れる電流」を知る必要があります。でも、機器の銘板には電流ではなく、電力(kW)しか書かれていないことがあります。そこで、電力から電流を出します。
式の出どころ:電力=電圧×電流
電気の基本は「電力 = 電圧 × 電流」です。100V で 10A 流れれば 1,000W(1kW)です。工場でよく使う三相(3本の線で送る電気)では、3本の線に分かれて電力を運ぶため、この式に √3(約1.732)がつきます。
P = √3 × V × I × cosφ
ヒーターは力率が1なので、P = √3 × V × I になります。式を I について解くと I = P ÷ (√3 × V)
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| P | 電力(機器が使う電気の量) | W(ワット) |
| V | 線と線のあいだの電圧 | V(ボルト) |
| I | 1本の線に流れる電流 | A(アンペア) |
| cosφ | 力率。ヒーターのように電気をそのまま熱にする機器は 1 | なし |
6 kW = 6,000 W
√3 × 200 V = 1.732 × 200 = 346.4 V
I = 6,000 W ÷ 346.4 V = 17.3 A
W ÷ V = (V × A) ÷ V = A
定格電流 20 A を選ぶ(17.3 A ≦ 20 A)
20 A ≦ 電線の許容電流 → 足りなければ電線を太くする
答えの意味を確かめておきます。17.3A のヒーターに 20A のブレーカーなら、ふだんの電流は定格の約0.87倍で、切れる心配はありません。ヒーターが壊れて電流が増えたり、線がショートしたりしたときだけ、ブレーカーが働きます。桁の感覚としては「三相200V なら 1kW あたり約2.9A」と覚えておくと、ざっくり見当がつきます。

インバータ・モーターの回路:メーカーの選定表を先に見る
ヒーターと違って、インバータやモーターは「電源を入れた瞬間」「回り始め」に、ふだんより大きな電流が流れます。計算した電流ぴったりのブレーカーでは、この瞬間に切れてしまうことがあります。
家でも、古い掃除機や電子レンジのスイッチを入れた瞬間に、ブレーカーが落ちることがありますよね。動き始めの一瞬だけ、たくさん電流を欲しがる家電があるからです。インバータは電源を入れた瞬間に中のコンデンサ(電気をためる部品)へ電気が流れこみ、モーターは止まった状態から回り始めるときに大きな電流が流れます。
そこでインバータのメーカーは、取扱説明書にインバータの容量ごとの配線用遮断器の定格電流の表を載せています。あるメーカーの取扱説明書の表から、三相200V の機種の値を抜き出すと次のとおりです。
ある機種(三相200V 級・ND 定格)の表から抜き出した値です。機種と定格の使い方で値が違うので、必ずお使いの機種の取扱説明書で確かめてください
| インバータの容量 | リアクトルなし | リアクトルあり |
|---|---|---|
| 0.75kW | 10A | 10A |
| 1.5kW | 15A | 15A |
| 2.2kW | 20A | 15A |
| 3.7kW | 30A | 30A |
| 5.5kW | 50A | 40A |
| 7.5kW | 60A | 50A |
リアクトル(力率改善リアクトル)は、インバータの入力の電流の波形をなだらかにする部品です。リアクトルを付けると入力の電流が小さくなるので、2.2kW・5.5kW・7.5kW では1段小さいブレーカーで済んでいます。同じ取扱説明書には、電源の容量に応じて選ぶこと、インバータ1台にブレーカー1つ、電源を入れたときに突入電流が流れるので注意して選ぶことも書かれています。
インバータを通さずに、電磁接触器でモーターを直接回す回路(直入れ)では、回り始めの大きな電流で一瞬型の見張り番が働かないかが大事です。遮断器のメーカーはモーターの容量ごとの選定表を用意しているので、それで選びます。なお、モーターそのものを焼けから守るのは、配線用遮断器ではなく、サーマルリレー(過負荷継電器)などの役目です。
インバータやモーターの回路で迷ったら、自分で電流を計算する前に、「つなぐ相手のメーカーが、どのブレーカーを指定しているか」を最初に見ます。相手の機器のことを一番よく知っているのは、その機器のメーカーだからです。計算は、その表がない機器のときや、表の値が電線の太さと合っているかを確かめるときに使います。
- インバータの容量ごとの配線用遮断器の定格電流と注意:三菱電機 FR-E800 の取扱説明書(英語版)2.1.2
- 同じ形の表(リアクトルの有無で定格が変わる):三菱電機 FR-F800 のテクニカルニュース
- 三菱電機 FR-E800 Instruction Manual (Connection) IB-0600865ENG-C(2.1.2 Peripheral devices の配線用遮断器の表と注意)
- 三菱電機 インバータ テクニカルニュース MF-X-128A(FR-F800 の配線用遮断器と電磁接触器の選定)
情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。
ブレーカーの先につなぐインバータ。kW より電流で選ぶ理由を図解

遮断容量とは:見張り番が止めきれる「勢い」の上限
短絡が起きると、ふだんの何百倍もの電流が一気に流れようとします。ブレーカーはそれを切らなければなりませんが、どんなに大きな電流でも切れるわけではありません。安全に切れる電流の上限を、遮断容量と呼び、kA(キロアンペア。1kA=1,000A)で表します。
水路の門にたとえます。水が少し多めに流れているだけなら、ふつうの門でゆっくり閉められます。でも、堤が切れて水が一気に押し寄せたら、弱い門は水の勢いで壊れてしまいます。遮断容量は、門が壊れずに止めきれる水の勢いの上限です。短絡の電流がこれを超えると、ブレーカーが切りきれずに壊れることがあります。
法令でも、電気設備の技術基準の解釈 第33条で、低圧の回路の過電流遮断器は「置く場所を通る短絡電流を遮断する能力をもつもの」と決められています。つまり、遮断容量を選ぶには、その場所でどれくらいの短絡電流が流れうるかを知る必要があります。
では、短絡電流はどこで決まるのでしょうか。家ではほとんど気にしないのに、工場では大事になるのはなぜでしょうか。答えは、電気を送ってくる変圧器の大きさです。

短絡電流の出どころ:変圧器の %インピーダンス
工場の電気は、受電設備の変圧器から来ます。短絡が起きたとき、電流を抑えるのは、主に変圧器の中の「流れにくさ」(インピーダンス)です。変圧器の銘板には、その流れにくさが %Z(パーセントインピーダンス)という形で書かれています。
%Z の意味は、定格の電流を流したとき、変圧器の中で電圧の何%が下がるかです。たとえば %Z が4%なら、定格の電流を流したとき、変圧器の中で電圧の4%ぶんが「流れにくさ」に使われます。
ここで、変圧器の出口の近くで線どうしがくっついた(短絡した)とします。出口の先には流れにくいものが何もないので、電圧の100%ぶんが変圧器の中の流れにくさにかかります。4%の電圧で定格の電流が流れるのですから、100%の電圧なら 100÷4=25倍の電流が流れます。
短絡電流 Is = 変圧器の定格電流 In × 100 ÷ %Z
ホースの先を指でつぶして水の勢いを調整しているとします。ホースの先を急に全部はずすと、水を抑えているのは、蛇口の中の細い部分だけになり、一気にたくさん出ます。変圧器の %Z は、この「蛇口の中の細い部分」にあたります。%Z が小さい(細い部分が太い)変圧器ほど、短絡のときにたくさん流れます。
この式は、変圧器の中だけで電流が抑えられるとみなした、いちばん厳しい(大きめの)見積もりです。実際には、変圧器から盤までの電線の流れにくさが加わるので、盤のところの短絡電流はこれより小さくなります。%Z の意味をもっと詳しく知りたい方は、同じ筆者が運営する電気のブログ shirasusolo.net の%インピーダンスと短絡電流で、計算のしかたを説明しています。

計算例2・3:変圧器の容量から、遮断容量を選ぶ(例)
工場の盤の近くにある変圧器の銘板に、容量 300kVA・二次側の電圧 210V・%Z 4% と書かれていたとします(数字は例)。まず変圧器の定格電流を出し、そこから短絡電流を見積もります。変圧器の定格電流は、⑦と同じ「電力 = √3 × 電圧 × 電流」の式で、電力の代わりに変圧器の容量(kVA)を入れて出します。
300 kVA = 300,000 VA
√3 × 210 V = 1.732 × 210 = 363.7 V
In = 300,000 ÷ 363.7 = 824.8 A
100 ÷ 4 = 25 倍
Is = 824.8 × 25 = 20,620 A
20,620 A = 20.6 kA
In = 500,000 ÷ 363.7 = 1,374.6 A
100 ÷ 5 = 20 倍
Is = 1,374.6 × 20 = 27,492 A ≒ 27.5 kA
答えの意味を確かめておきます。同じ盤の部品でも、大きな変圧器の近くに置くほど、大きな遮断容量が要るということです。家では変圧器が小さく、電線も長いので短絡電流は小さめですが、工場では大きな変圧器のすぐ近くに盤があることも多く、遮断容量が足りるかを確かめる必要があります。
遮断容量は、カタログに電圧ごとに書かれています。同じブレーカーでも電圧ごとに違う値が書かれていて、多くの機種では電圧が高い欄ほど小さくなっています。使う電圧の欄の値で比べます。
遮断容量は「盤ごと」ではなく「置く場所ごと」に決まる、と考えます。電源に近い主幹のブレーカーほど短絡電流は大きく、盤の奥の分岐や、長い電線の先では小さくなります。迷ったら、電源の変圧器の容量と %Z、そこから盤までの電線の長さを、電気設備の担当の人から図面でもらってから決めます。数字がわからないまま「たぶん大丈夫」で選ぶのが、いちばん避けたい決め方です。

Icu と Ics:2つの遮断容量と、10,000A のただし書き
カタログの遮断容量の欄には、2つの値が並んでいることがあります。JIS C 8201-2-1 の言葉で、次の2つです。
どちらも kA で書かれます。止めたあとすぐに使い続けたい回路では、Ics でも比べます
| 記号 | 名前 | 意味 |
|---|---|---|
| Icu | 定格限界短絡遮断容量 | 切ることはできる上限。この大きさを切ったあとは、点検してから使う |
| Ics | 定格使用短絡遮断容量 | 切ったあとも、そのまま使い続けられる上限。Icu と同じか小さい |
門のたとえでいうと、Icu は「1回なら止めきれるが、止めたあとは門を点検する必要がある勢い」、Ics は「止めたあとも、そのまま門として使い続けられる勢い」です。
電気設備の技術基準の解釈 第33条には、ただし書きがあります。その場所の最大の短絡電流が 10,000A を超えるとき、10,000A 以上を切れる配線用遮断器を置き、そのブレーカーが切れない大きさの短絡電流を、電源側の遮断器が同時か先に切れる組み合わせにすれば、よいことになっています。メーカーは、この組み合わせを表にしていることがあります。組み合わせで決めるときは、メーカーの資料で確かめた組み合わせだけを使います。
- Icu・Ics の名前:JIS C 8201-2-1:2021(本文の数値は転載していない)
- 遮断する能力と 10,000A のただし書き:電気設備の技術基準の解釈 第33条第1項
- 経済産業省「電気設備の技術基準の解釈」(令和7年11月20日改正まで反映。第33条 低圧電路に施設する過電流遮断器の性能等)
情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。
判断表:回路の種類ごとの選び方
ここまでの話を、回路の種類ごとにまとめます。迷ったときは、自分の回路に近い行から読んでください。
左から、回路・定格の決め方・遮断容量・注意です。遮断容量の決め方は、どの回路でも同じです
| 回路の種類 | 定格電流の決め方 | 遮断容量 | 気をつけること |
|---|---|---|---|
| ヒーター・照明など(電流がほぼ一定) | P=√3VI で電流を出し、すぐ上の定格(⑦) | 置く場所の短絡電流以上 | 電線の許容電流以下か |
| インバータの入力 | インバータの取扱説明書の表(⑧) | 同上 | インバータ1台に1つ。リアクトルの有無で値が変わる |
| モーターの直入れ | 遮断器メーカーのモーター用の選定表 | 同上 | 回り始めの電流で一瞬型が働かないか |
| DC24V 電源など制御の電源 | 電源の取扱説明書の推奨(入れた瞬間の電流) | 同上 | 電源を入れた瞬間に切れないか |
| 盤全体の主幹 | 分岐の電流の合計と、主幹の電線の許容電流 | 電源にいちばん近いので最も大きい | 分岐のブレーカーとの切れる順番 |
| 迷ったら | つなぐ相手のメーカーの指定 → 計算 → 電線との釣り合い | 変圧器の容量と %Z をもらって計算 | 数字のないまま決めない |
よくある間違いと、ブレーカーが落ちたときの順番
左の間違いに心当たりがあれば、右の節に戻って読み直してください
| よくある間違い | 本当は | どこで説明したか |
|---|---|---|
| 切れて困るので、定格を大きくした | 電線を守れなくなる。電線も一緒に見直す | ⑥ |
| 定格電流が同じなら、どのブレーカーも同じ | 遮断容量が違う。置く場所の短絡電流で選ぶ | ⑨〜⑪ |
| インバータの出力側(モーター側)にもブレーカーを付ける | メーカーは出力側に付けるときは遮断器のメーカーに相談するよう書いている。基本は入力側 | ⑧ |
| 漏電遮断器を付ければ、配線用遮断器はいらない | 見張るものが違う。漏電を見張るものと、流れすぎを見張るもの | ② |
| 落ちたら、とりあえずレバーを上げる | 原因を確かめて取り除いてから入れる | この節 |
ブレーカーが落ちたのは、見張り番が「何かおかしい」と知らせてくれたしるしです。インバータの取扱説明書でも、入力側の遮断器が切れたときは、配線の短絡やインバータの内部の損傷などを確かめ、原因を取り除いてから電源を入れるよう書かれています。
何が起きたかを見る:どのブレーカーが落ちたか、インバータの表示、焦げたにおいや変色がないかを見て、記録します。
電気を止めて原因を調べる:主幹を切り、待ってからテスターで電圧がないことを確かめ、配線・モーター・機器を調べます。
原因を直してから入れる:原因がわかって直してから、ブレーカーを入れます。原因がわからないまま入れ直すと、短絡していれば同じことが起きます。
盤の中の作業をしてよいか、誰がしてよいかは、法令と社内の決まりに従います。
ブレーカーより先にインバータが止まったら。いつ止まったかで原因を切り分け

STEP 2 で、主幹を切ったあと電圧がないことを確かめるテスターの例です。日置電機のデジタルマルチメータ DT4252 は、販売ページの表示では、直流・交流とも1000Vまでの電圧、10Aまでの電流、抵抗、導通などを測れ、測定カテゴリは CAT IV 600V・CAT III 1000V です(交流は真の実効値)。測る場所の電圧に合ったレンジかを、取扱説明書で確かめてから使ってください。
よくある質問
まとめ:配線用遮断器は、電線を守る工場の「家のブレーカー」
- 配線用遮断器(MCCB)は、流れすぎたときに電気を切って電線を守る。中には、熱で働くじわじわ型と、電磁石で働く一瞬型がいる
- 動作特性:定格に近いうちは切れず、大きいほど早く切れ、短絡では一瞬。規格では 1.05倍で切れず 1.3倍で規約時間内に切れる
- 定格電流は「負荷の電流 ≦ 定格 ≦ 電線の許容電流」。ヒーターなら I = P ÷ (√3 × V)
- インバータの回路は、インバータの取扱説明書の選定表で選ぶ。1台に1つ、リアクトルの有無で値が変わる
- 遮断容量は、置く場所の短絡電流より大きく。短絡電流 ≒ 変圧器の定格電流 × 100 ÷ %Z(300kVA・4%で約20.6kA の例)
- 落ちたらすぐ上げず、原因を確かめて直してから入れる
ブレーカーが決まったら、次は同じ盤の中の、制御の電気をつくる DC24V 電源の選び方へ進みます。
PLC・サーボ・インバーターを実務で扱ってきた電気・制御の設計者です。制御の記事は、選び方・設定の順番・止まったときの切り分けを、実務の判断のしかたから書いています。機械(材料・機械要素・図面)の記事は本職ではないため、JIS とメーカーの技術資料を調べてまとめ、出典を示しています。
次に読むべき記事
ブレーカーの先につながる機器と、盤の図面の読み方の記事を読むと、ブレーカーをどこに何A で置くかが、図面の上でつながります。制御盤の部品の記事は、公開しだいここに並べます。


