新しい装置の打ち合わせで「通信は CC-Link で」と言われた。別の機械の資料には EtherCAT と書いてある。
CC-Link(シーシーリンク)・EtherCAT(イーサキャット)・EtherNet/IP(イーサネット アイピー)・Modbus(モドバス)は、どれも PLC とたくさんの機器を1本の通信線でつなぐ方式です。違いは速さ・距離・決まりを作った団体・対応機器の多さで、まず使う PLC のメーカーが標準で持つ方式を候補にします。
この記事では、PLC の通信を鉄道にたとえて、最後までその話で説明します。4方式の比較表と、選ぶ順番、通信の周期のあいだに物がどれだけ進むかの計算もあります。
- 各方式の仕様:CC-Link協会・EtherCAT Technology Group・ODVA の公式ページ、Modbus は Schneider Electric の FAQ
- 方式ごとの割合:HMS Networks の2025年の分析
- CC-Link協会(CLPA)「CC-Link」(通信速度 最大10Mbps/最低156kbps、最大ケーブル総延長 10Mbps時100m・156kbps時1.2km、最大64局)
- EtherCAT Technology Group「EtherCAT – the Ethernet Fieldbus」(走りながら読み書きする仕組み・100Mbit/s 全二重・1セグメント最大65,535台・ノード間100m・分散クロック・IEC 61158)
- ODVA「EtherNet/IP」(上の層に CIP を使い、ふつうの TCP/IP と UDP の上で動く。スター・ライン・リング(DLR)の形)
- Schneider Electric FAQ「What is Modbus and How does it work?」(1979年に Modicon が公開・ロイヤリティなし・RTU/ASCII/TCP・シリアルでは1台のクライアントに最大247台)
情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。
- PLC の通信とは?家ごとの専用の道と、1本の線路
- なぜ通信にするの?線の本数を数えてみる
- 通信の基本の言葉:マスター・スレーブ・周期
- 計算してみよう:通信の周期のあいだに、物はどれだけ進む?
- 4つの方式の地図:昔ながらの線の仲間と、イーサネットの仲間
- CC-Link:決まったダイヤで回る列車
- EtherCAT:止まらずに、走りながら荷物を出し入れする列車
- EtherNet/IP:ふつうの道路を走る宅配便
- Modbus:1駅ずつ「荷物ある?」と聞いて回る係
- 4つを1枚の表に:比較表
- どれを選ぶ?5つの順番で決める
- 違う方式をつなぎたいとき:ゲートウェイは乗り換え駅
- 通信が止まったら:まず「全部か、1台か」で分ける
- よくある質問
- まとめ:PLC の通信は、1本の線路を回る列車
PLC の通信とは?家ごとの専用の道と、1本の線路
PLC(ピーエルシー)は、工場の機械を動かす小さなコンピューターです。センサから「物が来た」「扉が開いた」を受け取り、モーターやランプに「回れ」「つけ」と指示を出します。
いちばん素朴なつなぎ方は、センサ1つにつき電線を1本ずつ PLC まで引くやり方です。センサが10個なら10本、100個なら100本。機械が大きくなるほど、電線の束はどんどん太くなります。
町の真ん中に役場(PLC)があり、まわりに家(機器)が100軒あるとします。
・1本ずつの配線:役場から家ごとに専用の道を1本ずつ作るやり方。家が増えるたびに道路工事が要ります。
・通信:町を1周する線路を1本だけ引き、列車を走らせて、全部の駅(家)の荷物を集めて回るやり方。家が増えても、線路のそばに駅を足すだけです。
この「1本の線路」にあたるのが通信のケーブルで、列車にあたるのが通信のデータです。工場の機器どうしをつなぐこうした通信を、フィールドネットワーク(現場のネットワーク)と呼びます。
左の言葉が出てきたら、右の本物に読みかえてください。この記事はずっとこの対応で進みます
| 鉄道のたとえ | 本物の工場では |
|---|---|
| 役場・運行の司令 | PLC(マスター) |
| 駅(家) | センサ・インバーター・サーボなどの機器(スレーブ) |
| 線路 | 通信のケーブル |
| 列車と荷物 | 通信のデータ(機器の状態や指示) |
| 1周にかかる時間 | 通信の周期(サイクルタイム) |
| 鉄道会社ごとの線路とダイヤの決まり | 通信の方式(CC-Link・EtherCAT など) |

なぜ通信にするの?線の本数を数えてみる
通信にすると何がうれしいのかを、数字で確かめます。線の本数がわかれば、配線の手間・材料・まちがえる場所の数が見積もれるからです。
例として、PLC から 15m 離れた機械に、センサ(入力)が 40点、ランプや電磁弁(出力)が 24点あるとします。「点」は信号の数のことです。
1本ずつの配線では、信号1点につき線が1本要ります。ほかに、センサやランプの電気の行き帰りに使う共通の線(電源の+と−)が要ります。ここでは共通の線を2本とします。
線の本数 = 信号の点数 + 共通の線の本数
通信にすると、機械の近くにリモート I/O(信号を集めて通信に乗せる小さな箱)を置き、PLC とは通信のケーブル1本と、箱の電源の線2本でつなぎます。
40 点 + 24 点 = 64 点
64 本 + 2 本 = 66 本
66 本 × 15 m = 990 m
1 本 + 2 本 = 3 本
3 本 × 15 m = 45 m
45 m ÷ 990 m ≒ 0.045 → 約 1/22
つまり、PLC と機械のあいだを走る線が、ほぼ1本にまとまります。線の端をねじで留める箇所も、66本なら両端で132か所ありますが、3本なら6か所です。まちがえる場所も、断線する場所も、それだけ減ります。
ただし、通信にしても困らないかは「速さ」しだいです。次の動く図で、1本ずつの配線と通信で、センサの変化が PLC に届くまでの流れを比べてみましょう。
動かして確かめる
上の段が本物の機器、下の段がPLC が知っている状態です。「スタート」を押すと、少したってから機器4のセンサが物を見つけます(ランプが緑になります)。つなぎ方を切り替えて、PLC がそれを知るまでの流れを比べてください。
いまの様子:スタートを押すと、ここに説明が出ます。
動きは説明のための作り物です(秒数はアニメの中の時間。本物の通信は1周が数ミリ秒ほどで、何十倍も速く回ります)。
見てほしいのは、通信では列車が機器4の前を通って PLC に戻るまで、PLC が変化を知らないところです。この「待ち」が通信の周期で、次の段で計算します。

通信の基本の言葉:マスター・スレーブ・周期
通信の話には、決まって出てくる言葉が3つあります。鉄道のたとえで1つずつ押さえます。
鉄道には運行の司令室があり、「何時何分に列車を出す」と決めています。駅は、列車が来たら荷物を渡し、届いた荷物を受け取るだけです。列車は決まった間隔で町を1周し続けます。
- マスター:列車を出す司令室。ふつうは PLC がなります。通信の順番やタイミングを決める側です
- スレーブ:駅。センサやインバーター、サーボアンプなどの機器です。方式によって「局」「デバイス」とも呼びます
- 周期(サイクルタイム):列車が全部の駅を回って戻ってくるまでの時間。短いほど、機器の変化を早く知れます
もう1つ、通信速度は列車の速さです。単位は bps(ビーピーエス。1秒に送れる 0 と 1 の数)で、10Mbps なら1秒に1,000万個です。速いほど周期は短くできますが、周期は駅の数(台数)や荷物の量(データの量)でも変わります。
多くの方式では、列車は決まった間隔でずっと回り続けます(これをサイクリック通信と呼びます)。PLC のプログラムは、列車が運んできた最新の荷物を、自分の記憶(メモリ)の中の決まった場所で読むだけで済みます。プログラムを書く人が、1回ごとに「送れ」と命令しなくてよいのが便利な点です。

計算してみよう:通信の周期のあいだに、物はどれだけ進む?
通信にすると、センサの変化を PLC が知るまでに少し待ちが入ります。その待ちのあいだに、機械の上の物がどれだけ進むかを計算しておくと、「この周期で困らないか」を決められます。
もとになるのは、小学校で習う距離 = 速さ × 時間です。1秒に 0.5m 進む物は、2秒で 0.5 × 2 = 1m 進みます。時間がもっと短くても同じ式が使えます。
ここで、時間に入れるのが待ちの長さです。列車がちょうど通りすぎた直後に変化が起きると、次に列車が来て、PLC に戻るまで待つことになります。ざっくり言うと、最悪で周期の約2倍の待ちを見込みます(本当は PLC の計算のタイミングなども重なるので、正確な遅れは PLC のメーカーのマニュアルにある「伝送遅れ時間」の式で求めます)。
物が進む距離 = 物の速さ × 待ちの時間
- 物の速さ:コンベアなどの速さ。単位は m/s(1秒に何メートル)
- 待ちの時間:通信の周期(と、その約2倍の最悪の待ち)。単位は秒。1ms(ミリ秒)= 0.001秒
30 m/min ÷ 60 = 0.5 m/s
10 ms ÷ 1000 = 0.010 s
0.5 m/s × 0.010 s = 0.005 m = 5 mm
0.5 m/s × 0.020 s = 0.010 m = 10 mm
1 ms ÷ 1000 = 0.001 s
0.5 m/s × 0.001 s = 0.0005 m = 0.5 mm
0.5 m/s × 0.002 s = 0.001 m = 1 mm
つまり、何をしたいかで必要な周期が変わるということです。数えるだけ・ランプをつけるだけなら数十ミリ秒の周期でも困りませんが、動いている物の位置を合わせる・何台ものサーボの動きをそろえるなら、短い周期が得意な方式を選びます。
桁の感覚も確かめます。0.5m/s は、人がゆっくり歩く速さの半分くらいです。その速さでも、1/100秒(10ms)のあいだには 5mm しか進みません。ほとんどの「数える・知らせる」用途で通信が使えるのは、このためです。

4つの方式の地図:昔ながらの線の仲間と、イーサネットの仲間
CC-Link・EtherCAT・EtherNet/IP・Modbus を1つずつ見る前に、全体の地図を見ておきます。どの方式も、鉄道会社のように「線路の幅」と「ダイヤの決まり」を自分たちで決めています。
日本の鉄道でも、会社によって線路の幅が違い、そのままでは乗り入れできないことがあります。通信の方式も同じで、CC-Link の機器と EtherCAT の機器を、同じ1本の線に並べてつなぐことはできません。どの方式で行くかを、装置ごとに決める必要があります。
同じ名前でも、シリアル系とイーサネット系の両方を持つ方式があります(CC-Link と CC-Link IE、Modbus RTU と Modbus TCP)
| 系統 | 線のようす | この記事の方式 |
|---|---|---|
| シリアル系(昔からの仲間) | 専用のケーブルで、0 と 1 を1つずつ順に送る。速さは控えめだが長く延ばせる | CC-Link、Modbus RTU |
| イーサネット系(新しい仲間) | 事務所の LAN と同じ形のケーブル・コネクタを使う。速い | CC-Link IE、EtherCAT、EtherNet/IP、Modbus TCP |
世界の動きを見ると、新しく取り付けられる機器はイーサネット系が中心です。HMS Networks の2025年の分析では、新しく設置された工場のネットワークの機器(ノード)のうち 76% がイーサネット系で、前の年の 71% から増えています。
このほかに、ヨーロッパの PLC でよく使われる PROFINET(プロフィネット)などもあります。この記事では、記事の題の4つに絞って説明します。

CC-Link:決まったダイヤで回る列車
CC-Link は、CC-Link 協会(CLPA)が仕様を管理している方式です。協会の公開資料によると、もとの CC-Link は、通信速度が最大 10Mbps、最大 64局(64台ぶん)をつなげます。
決まったダイヤで町を回る列車です。速く走らせると線路を長くできず、ゆっくり走らせると遠くの町まで延ばせます。
このたとえのとおり、CC-Link は速さと距離が引きかえになっています。協会の資料では、ケーブルの全長は 10Mbps のときに 100m まで、いちばん遅い 156kbps のときに 1.2km までです。中くらいの速さの値もあり、使う長さに合わせて速さを選びます(間の値は仕様書で確かめます)。
こうしたシリアルの線は、2本の線の電圧の差で信号を送る方式が多く、ノイズに強くなっています。差で送るとなぜノイズに強いのかは、同じ筆者が運営する電気のブログ shirasusolo.net の差動信号はなぜノイズに強い?で解説しています。
イーサネット版:CC-Link IE フィールドと CC-Link IE TSN
CC-Link にはイーサネットの線を使う仲間があります。製品の例として、三菱電機の公開仕様では、CC-Link IE フィールドネットワークは 1Gbps、局と局のあいだは最大 100m、1つのネットワークに最大 121局です。
さらに新しい CC-Link IE TSN は、協会の資料によると 1Gbps と 100Mbps の速さがあり、機械を動かすための通信と、工場の情報を集める通信を、同じネットワークで一緒に流せるのが特長です。
- CC-Link の速さ・距離・局数:CC-Link協会
- CC-Link IE TSN:CC-Link協会
- CC-Link IE フィールドの製品の例:三菱電機
- CC-Link協会(CLPA)「CC-Link」(通信速度 最大10Mbps/最低156kbps、最大ケーブル総延長 10Mbps時100m・156kbps時1.2km、最大64局)
- CC-Link協会(CLPA)「CC-Link IE TSN」(通信速度 1Gbps と 100Mbps、制御の通信と情報の通信を同じネットワークで)
- 三菱電機「CC-Link IE 仕様」(CC-Link IE フィールドネットワーク:1Gbps、局間最大100m、1ネットワーク最大121局、カテゴリ5e以上の二重シールドのケーブル)
情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

EtherCAT:止まらずに、走りながら荷物を出し入れする列車
EtherCAT は、EtherCAT Technology Group(ETG)という団体が広めている、イーサネットの線を使う方式です。国際規格の IEC 61158 にも載っています。
ふつうの列車は、駅ごとに止まって荷物を降ろし、積みこみます。EtherCAT の列車は駅で止まりません。ホームの係が、走っている列車から自分あての荷物を取り出し、出す荷物をすばやく積みこみます。列車は終点まで行くと折り返して、司令室に戻ります。
ETG の説明では、マスターが送った1つの枠(フレーム)が機器を順に通り、各機器は通りすぎる枠から自分あてのデータを読み、自分のデータを書きこみます。枠が遅れるのは、機器の中の部品を電気が通りぬける時間だけです。この仕組みをオンザフライ(走りながら)と呼びます。
ETG の公開資料にある数字は次のとおりです。
- 通信速度は 100Mbit/s(行きと帰りを同時に使える全二重)
- 1つのセグメント(1本のつながり)に最大 65,535台
- 機器と機器のあいだは、ふつうの工業用イーサネットのケーブルで最大 100m
- つなぎ方は、1列(ライン)・枝分かれ(ツリー)・星形(スター)などが使える
- 設計の目標は、周期 100μs(マイクロ秒。100万分の1秒)以下、時刻のずれ 1μs 以下。分散クロックという仕組みで、機器どうしの時計を 1μs よりずっと小さいずれで合わせる
時計がそろっていると、何台ものサーボモーターに「せーの」で同じタイミングの指令を出せます。そのため EtherCAT は、複数の軸の動きをそろえる装置でよく候補になります。
パルスで動くモーターと、目で確かめるモーターの違いがわかる
サーボへの指令をパルス(合図の数)で送るか、こうした通信で送るかの選び方は、別の記事で詳しく扱います。
- 走りながら読み書きする仕組み・100Mbit/s・65,535台・100m・分散クロック・IEC 61158:EtherCAT Technology Group
- EtherCAT Technology Group「EtherCAT – the Ethernet Fieldbus」(走りながら読み書きする仕組み・100Mbit/s 全二重・1セグメント最大65,535台・ノード間100m・分散クロック・IEC 61158)
情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

EtherNet/IP:ふつうの道路を走る宅配便
EtherNet/IP は、ODVA という団体が管理している方式です。名前の IP は「インターネット プロトコル」ではなく「インダストリアル プロトコル(工業用の決まり)」の略です。
専用の線路を引くのではなく、町のふつうの道路を宅配便のトラックが走るイメージです。交差点(スイッチングハブ)で行き先ごとに分かれ、どの家にも届けられます。事務所のパソコンが使っている道路と同じなので、つながる相手が広いのが強みです。
ODVA の説明では、EtherNet/IP は上の層に CIP(コモン インダストリアル プロトコル)という共通の決まりを使い、ふつうの TCP/IP と、周期のデータを速く送るための UDP の上で動きます。つなぎ方は、星形(スター)・1列(ライン)・輪(リング。DLR と呼ぶ)が使えます。
ふつうのイーサネットの部品(ケーブル・ハブ)と同じ形なので、工場の情報のシステムとつなぎやすいのが特長です。周期は、機器ごとに「何ミリ秒ごとにデータがほしいか」を設定して決めます(値は機器と設定で変わります)。
ふつうのイーサネットと同じ形でも、事務所用の安いハブをそのまま使ってよいとは限りません。工場の中はノイズや温度が厳しく、周期のデータが遅れると機械が止まることがあります。ハブやケーブルは、機器のメーカーが指定する条件で選びます。
- CIP・TCP/IP と UDP・スター/ライン/DLR:ODVA
- ODVA「EtherNet/IP」(上の層に CIP を使い、ふつうの TCP/IP と UDP の上で動く。スター・ライン・リング(DLR)の形)
情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

Modbus:1駅ずつ「荷物ある?」と聞いて回る係
Modbus は、1979年に Modicon(モディコン)という会社が自社の PLC 用に公開した方式です。決まりがオープンで使用料がかからないため、いまも温度調節器・電力計・インバーターなど、たくさんの機器が対応しています。
司令室の係が、駅に1つずつ電話をかけて「荷物ある?」と聞き、返事を聞いたら次の駅に電話します。聞かれていない駅は、勝手にしゃべりません。
Schneider Electric の説明では、問い合わせる側をクライアント、答える側をサーバーと呼び、シリアルの線では1台のクライアントに最大 247台のサーバーをつなげます。種類は、シリアルの線で使う Modbus RTU(と Modbus ASCII)と、イーサネットで使う Modbus TCP があります。データは、オン・オフを入れる表(コイル)と、数値を入れる表(レジスタ)に分けて読み書きします。
1台ずつ聞いて回るので、台数が増えると1周が長くなります。EtherCAT のように1つの枠で全部を回るやり方と、何が違うのかを動く図で比べてみましょう。
動かして確かめる
マスター(PLC)が、6台の機器の状態を集めます。EtherCAT のやり方では、1本の列車(枠)が止まらずに全部の機器を通り、走りながら荷物を出し入れして戻ってきます。1台ずつ聞くやり方では、1台に「どう?」と聞いて返事を待ち、次の1台へ進みます。2つを順に動かして、1周にかかる時間を比べてください。
いまの様子:スタートを押すと、ここに説明が出ます。
動きは説明のための作り物です。本物の時間は、通信の速さ・台数・機器が返事をする速さで決まります。1台ずつ聞くやり方も、台数が少なく急がない用途なら十分に使えます。
見てほしいのは、1台ずつ聞くやり方では「行って・返事を待って・戻る」が台数の分だけくり返されるところです。その代わり、しくみが簡単で、ほとんどの機器が対応しています。速さがいらない電力計や温度の読み取りには、いまも Modbus がよく使われます。
- 1979年・Modicon・ロイヤリティなし・クライアント/サーバー・最大247台・RTU/ASCII/TCP・コイルとレジスタ:Schneider Electric
- Schneider Electric FAQ「What is Modbus and How does it work?」(1979年に Modicon が公開・ロイヤリティなし・RTU/ASCII/TCP・シリアルでは1台のクライアントに最大247台)
情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

4つを1枚の表に:比較表
ここまでの違いを1枚にまとめます。数値は各団体の公開資料の値です(機種によって使える範囲は変わります)。
自分の装置で大事な行(速さか、つながる相手か、簡単さか)を先に決めて、その行を横に読みます
| 観点 | CC-Link(CC-Link IE) | EtherCAT | EtherNet/IP | Modbus(RTU/TCP) |
|---|---|---|---|---|
| 線 | 専用の線(IE はイーサネットの線) | イーサネットの線 | イーサネットの線とハブ | RTU はシリアルの線、TCP はイーサネット |
| 速さの例 | 最大10Mbps(IE フィールド・IE TSN は 1Gbps) | 100Mbit/s(全二重) | ふつうのイーサネットの速さ | シリアルは遅め |
| 回り方 | 決まったダイヤで回る | 1つの枠が全部を通って戻る | 機器ごとに決めた周期で送る | 1台ずつ問い合わせる |
| 台数・距離の例 | 64局・10Mbps で全長100m/156kbps で1.2km | 65,535台・機器の間100m | ハブで広げられる | シリアルは最大247台 |
| 得意なこと | 同じ系統の PLC・機器と組みやすい | 短い周期と、複数の軸の時刻合わせ | 工場の情報のシステムとのつながり | 簡単で、対応する機器が多い |
| 決まりを管理する団体 | CC-Link協会(CLPA) | ETG | ODVA | Modbus の団体(もとは Modicon) |
世界全体で、新しく設置された機器の割合を見ると、PROFINET が 27%、EtherNet/IP が 23%、EtherCAT が 17%、Modbus TCP が 4% です(HMS Networks の2025年の分析。CC-Link IE は「その他」に含まれ、個別の数字はありません)。ただしこれは世界の数字で、地域によって大きく違います。
割合が大きい方式が、自分の装置にとって正解とは限りません。いちばん効くのは「使う PLC と機器が、その方式に対応しているか」です。次の段の順番で決めます。
- 方式ごとの割合(新しく設置されたノード):HMS Networks 2025
- HMS Networks「Industrial network market shares 2025」(新しく設置されたノードの割合:イーサネット系76%・フィールドバス17%・無線7%。PROFINET 27%・EtherNet/IP 23%・EtherCAT 17%・Modbus TCP 4%)
情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

どれを選ぶ?5つの順番で決める
鉄道でいえば、まず「どの鉄道会社の路線に乗るか」を決め、次に「行きたい駅がその路線にあるか」を確かめる順番です。
使う PLC のメーカーが、標準で持っている方式を候補にする。PLC の本体や、追加のユニットで対応している方式は、メーカーの設定ソフトで扱いやすく、資料もそろっています。
つなぎたい機器(インバーター・サーボ・センサ・リモート I/O)が、その方式に対応しているか確かめる。機器のカタログの「通信」の欄と、オプションの通信カードの有無を見ます。1台でも対応していなければ、次の STEP で考え直すか、ゲートウェイ(⑬)を使います。
必要な速さと同期を確かめる。⑤の計算で、周期のあいだに物が進む距離が困らないか。複数のサーボの動きをそろえるなら、時刻合わせが得意な方式か。
距離と台数が仕様の中に入るか確かめる。機械の端から端までのケーブルの長さと、つなぐ台数を数え、各方式の上限と比べます。
工場の上位のシステム(生産の記録・見える化)とつなぐか確かめる。上位とつなぐなら、イーサネット系で、情報の通信も一緒に流せる方式が楽です。
通信の方式は、機器を選んでから合わせるより、PLC の側から決めて機器をそろえるほうが後で困りません。PLC の設定ソフトがその方式の機器を一覧から選べると、局番・データの割り付け・異常の表示までまとめて設定でき、立ち上げで迷う時間が減ります。機器の都合で方式を混ぜると、設定ソフトも資料も2系統になり、止まったときの切り分けも2倍になります。

違う方式をつなぎたいとき:ゲートウェイは乗り換え駅
どうしても使いたい機器が、PLC と違う方式にしか対応していないことがあります。そのときに使うのがゲートウェイ(変換器)です。
線路の幅が違う2つの路線の境目に、乗り換え駅を作るイメージです。片方の列車から荷物を降ろし、もう片方の列車に積みかえます。積みかえのぶん、少し時間がかかります。
ゲートウェイを入れると、データが一度載せかえられるので、そのぶん遅れが増えます。また、どのデータをどこに載せかえるかの設定が、ゲートウェイの中にもう1つ増えます。
上の行ほど、立ち上げてからの手間が少ない方法です。選べるなら上から検討します
| 方法 | 向いている場面 | 気をつけること |
|---|---|---|
| PLC に、その方式の通信ユニットを足す | 相手の方式の機器が多いとき | PLC のメーカーがその方式のユニットを出しているか |
| ゲートウェイ(変換器)を入れる | 違う方式の機器が1〜2台だけのとき | 遅れが増える・設定がもう1か所増える |
| 機器を、PLC の方式に対応するものに替える | まだ機器を選び直せるとき | 機能や大きさが同じものがあるか |

通信が止まったら:まず「全部か、1台か」で分ける
通信が止まると、PLC や機器のランプ(LED)が赤く光ったり、異常の番号が出たりします。慌てて設定を変える前に、どこまで止まったかを確かめます。
列車が止まったとき、全部の駅で来ないなら、線路の始まり(司令室・最初の区間)を疑います。1つの駅だけ荷物が届かないなら、その駅か、その駅の手前の線路を疑います。
上の行から順に確かめます。左の列が今の症状に近い行を探してください。
| 症状・いつ出るか | まず疑う原因 | 確かめる場所・測るもの | 直し方 |
|---|---|---|---|
| 全部の機器と通信できない | マスター(PLC)の通信ユニットの設定・電源、最初のケーブル | PLC の通信ユニットの LED と異常の表示、最初の1本のコネクタ | 設定を元に戻す・コネクタを挿し直す・ケーブルを替える |
| ある機器から先が全部止まる | その機器か、その手前のケーブルの断線・抜け | 止まった最初の機器の LED、その手前のケーブル | コネクタの挿し直し・ケーブルの交換 |
| 1台だけ通信できない | その機器の局番(番号)やアドレスの設定・電源 | その機器の局番の設定、電源のランプ | 局番を PLC の設定と合わせる・電源を確かめる |
| ときどき止まる・動くたびに止まる | ノイズ・ケーブルの傷み・終端(線の端の処理)の忘れ | 動力の線との離れ方、シールドのアース、終端抵抗 | 動力の線から離す・ケーブルを替える・終端を確かめる |
ときどき止まる場合は、インバーターなどの動力の線のノイズが原因のことがよくあります。メーカーの資料の例では、通信のケーブルを動力の線と束ねず、100mm 以上離すよう書かれています(機器の取扱説明書の値に従います)。
ノイズの通り道と、線の分け方がわかる
通信の異常で最初に見るのは、異常の番号の意味より「どこから先が止まったか」です。全部の局が落ちたのか、ある局から先なのか、1台だけなのかを先に決めると、見るケーブルとコネクタが数か所に絞れます。番号の意味は方式とメーカーで違うので、場所を絞ってからマニュアルを引くほうが早く終わります。
止まると困る出力ほど、「通信が切れたとき、その出力をどうするか(切る/そのまま保つ)」を先に決めて設定します。多くの機器には、通信が切れたときの動きを選ぶ設定があります。決めずにおくと、通信が切れた瞬間にモーターが回り続けたり、逆に必要な保持が外れたりします。
非常停止のように人の安全にかかわる信号は、ふつうの通信のデータだけに頼らず、専用の配線か、安全用に作られた通信の規格(各方式に安全用の仕組みがあります)で組みます。安全のしくみの決まりは、機械の安全の規格と各社の安全機器の資料で確かめてください。
- 通信のケーブルと動力の線を100mm以上離す例:三菱電機 GOT の取扱説明書(GT25 オープンフレームモデル 一般説明書)の設計上の注意
- 三菱電機 GT25 Open Frame Model General Description(IB-0800553ENG)
情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。
よくある質問
まとめ:PLC の通信は、1本の線路を回る列車
- PLC の通信は、機器ごとに線を引く代わりに、1本の線の上をデータの列車が回って全部の機器とやりとりするしくみ
- 通信にすると線の本数は大きく減る(例:66本・990m → 3本・45m)
- 周期のあいだに物が進む距離は「速さ×時間」。数えるだけなら長い周期でよく、位置を合わせるなら短い周期が要る
- CC-Link は決まったダイヤの列車、EtherCAT は走りながら出し入れする列車、EtherNet/IP はふつうの道路の宅配便、Modbus は1駅ずつ聞いて回る係
- 選ぶ順番は、PLC のメーカーの標準 → 機器の対応 → 速さと同期 → 距離と台数 → 上位とのつながり
- 止まったら、まず「全部か、ある機器から先か、1台か」で見る場所を分ける
通信の方式が決まったら、次は PLC そのものの選び方や、画面からの操作(タッチパネル)へ進みましょう。
PLC・サーボ・インバーターを実務で扱ってきた電気・制御の設計者です。制御の記事は、選び方・設定の順番・止まったときの切り分けを、実務の判断のしかたから書いています。機械(材料・機械要素・図面)の記事は本職ではないため、JIS とメーカーの技術資料を調べてまとめ、出典を示しています。
次に読むべき記事
通信の方式の次は、つなぐ機器の側を深めましょう。サーボやインバーターの選び方・設定は、通信でつないだあとも必ず要ります。


