CC-Link・EtherCATの違い|PLC通信4方式の比較表

PLCの通信。1本の線で工場の機器をつなぎ、データの列車が回るイラスト PLCとラダー

新しい装置の打ち合わせで「通信は CC-Link で」と言われた。別の機械の資料には EtherCAT と書いてある。

CC-Link(シーシーリンク)・EtherCAT(イーサキャット)・EtherNet/IP(イーサネット アイピー)・Modbus(モドバス)は、どれも PLC とたくさんの機器を1本の通信線でつなぐ方式です。違いは速さ・距離・決まりを作った団体・対応機器の多さで、まず使う PLC のメーカーが標準で持つ方式を候補にします。

この記事では、PLC の通信を鉄道にたとえて、最後までその話で説明します。4方式の比較表と、選ぶ順番、通信の周期のあいだに物がどれだけ進むかの計算もあります。

出典

情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

PLC の通信とは?家ごとの専用の道と、1本の線路

ひとことで言うとPLC の通信は、たくさんの機器と1本ずつ線を引く代わりに、1本の線でまとめてやりとりするしくみです。

PLC(ピーエルシー)は、工場の機械を動かす小さなコンピューターです。センサから「物が来た」「扉が開いた」を受け取り、モーターやランプに「回れ」「つけ」と指示を出します。

いちばん素朴なつなぎ方は、センサ1つにつき電線を1本ずつ PLC まで引くやり方です。センサが10個なら10本、100個なら100本。機械が大きくなるほど、電線の束はどんどん太くなります。

たとえると

町の真ん中に役場(PLC)があり、まわりに家(機器)が100軒あるとします。
・1本ずつの配線:役場から家ごとに専用の道を1本ずつ作るやり方。家が増えるたびに道路工事が要ります。
・通信:町を1周する線路を1本だけ引き、列車を走らせて、全部の駅(家)の荷物を集めて回るやり方。家が増えても、線路のそばに駅を足すだけです。

この「1本の線路」にあたるのが通信のケーブルで、列車にあたるのが通信のデータです。工場の機器どうしをつなぐこうした通信を、フィールドネットワーク(現場のネットワーク)と呼びます。

左の言葉が出てきたら、右の本物に読みかえてください。この記事はずっとこの対応で進みます

鉄道のたとえ本物の工場では
役場・運行の司令PLC(マスター)
駅(家)センサ・インバーター・サーボなどの機器(スレーブ)
線路通信のケーブル
列車と荷物通信のデータ(機器の状態や指示)
1周にかかる時間通信の周期(サイクルタイム)
鉄道会社ごとの線路とダイヤの決まり通信の方式(CC-Link・EtherCAT など)
1本ずつの配線は家ごとに専用の道、通信は1本の線路を列車が回ることにたとえたイラスト

なぜ通信にするの?線の本数を数えてみる

ひとことで言うといちばんの理由は、線の本数と配線の手間が大きく減ることです。

通信にすると何がうれしいのかを、数字で確かめます。線の本数がわかれば、配線の手間・材料・まちがえる場所の数が見積もれるからです。

例として、PLC から 15m 離れた機械に、センサ(入力)が 40点、ランプや電磁弁(出力)が 24点あるとします。「点」は信号の数のことです。

1本ずつの配線では、信号1点につき線が1本要ります。ほかに、センサやランプの電気の行き帰りに使う共通の線(電源の+と−)が要ります。ここでは共通の線を2本とします。

線の本数 = 信号の点数 + 共通の線の本数

通信にすると、機械の近くにリモート I/O(信号を集めて通信に乗せる小さな箱)を置き、PLC とは通信のケーブル1本と、箱の電源の線2本でつなぎます。

計算例
計算例:線の本数と長さ(例)
信号の点数を足す(入力+出力)
40 点 + 24 点 = 64 点
1本ずつの配線の本数(信号+共通の線)
64 本 + 2 本 = 66 本
1本ずつの配線の長さ(本数×距離)
66 本 × 15 m = 990 m
通信にしたときの本数(通信1本+電源2本)
1 本 + 2 本 = 3 本
通信にしたときの長さ(本数×距離)
3 本 × 15 m = 45 m
どれだけ減ったか(長さの比)
45 m ÷ 990 m ≒ 0.045 → 約 1/22
PLC から機械までの線は 66本・990m から、3本・45m に減る(機械の中の、リモート I/O から各センサまでの短い線は別に要る)

つまり、PLC と機械のあいだを走る線が、ほぼ1本にまとまります。線の端をねじで留める箇所も、66本なら両端で132か所ありますが、3本なら6か所です。まちがえる場所も、断線する場所も、それだけ減ります。

ただし、通信にしても困らないかは「速さ」しだいです。次の動く図で、1本ずつの配線と通信で、センサの変化が PLC に届くまでの流れを比べてみましょう。

動かして確かめる

上の段が本物の機器、下の段がPLC が知っている状態です。「スタート」を押すと、少したってから機器4のセンサが物を見つけます(ランプが緑になります)。つなぎ方を切り替えて、PLC がそれを知るまでの流れを比べてください。

本物の機器(センサ) PLC 機械の頭脳 PLC が知っている状態(PLC の中の記憶)

いまの様子:スタートを押すと、ここに説明が出ます。

動きは説明のための作り物です(秒数はアニメの中の時間。本物の通信は1周が数ミリ秒ほどで、何十倍も速く回ります)。

見てほしいのは、通信では列車が機器4の前を通って PLC に戻るまで、PLC が変化を知らないところです。この「待ち」が通信の周期で、次の段で計算します。

センサと出力が64点ある装置で、1本ずつの配線と通信で線の本数と長さを比べた棒グラフ

通信の基本の言葉:マスター・スレーブ・周期

ひとことで言うとPLC がマスター(司令)、機器がスレーブ(駅)、列車が1周する時間が周期です。

通信の話には、決まって出てくる言葉が3つあります。鉄道のたとえで1つずつ押さえます。

たとえると

鉄道には運行の司令室があり、「何時何分に列車を出す」と決めています。駅は、列車が来たら荷物を渡し、届いた荷物を受け取るだけです。列車は決まった間隔で町を1周し続けます。

  • マスター:列車を出す司令室。ふつうは PLC がなります。通信の順番やタイミングを決める側です
  • スレーブ:駅。センサやインバーター、サーボアンプなどの機器です。方式によって「局」「デバイス」とも呼びます
  • 周期(サイクルタイム):列車が全部の駅を回って戻ってくるまでの時間。短いほど、機器の変化を早く知れます

もう1つ、通信速度は列車の速さです。単位は bps(ビーピーエス。1秒に送れる 0 と 1 の数)で、10Mbps なら1秒に1,000万個です。速いほど周期は短くできますが、周期は駅の数(台数)や荷物の量(データの量)でも変わります。

POINT

多くの方式では、列車は決まった間隔でずっと回り続けます(これをサイクリック通信と呼びます)。PLC のプログラムは、列車が運んできた最新の荷物を、自分の記憶(メモリ)の中の決まった場所で読むだけで済みます。プログラムを書く人が、1回ごとに「送れ」と命令しなくてよいのが便利な点です。

マスター・スレーブ・周期を鉄道の司令室・駅・1周の時間にたとえたイラスト

計算してみよう:通信の周期のあいだに、物はどれだけ進む?

ひとことで言うと通信の周期のあいだに物が進む距離は「速さ×時間」で出せます。その距離が困るかどうかで、必要な周期が決まります。

通信にすると、センサの変化を PLC が知るまでに少し待ちが入ります。その待ちのあいだに、機械の上の物がどれだけ進むかを計算しておくと、「この周期で困らないか」を決められます。

もとになるのは、小学校で習う距離 = 速さ × 時間です。1秒に 0.5m 進む物は、2秒で 0.5 × 2 = 1m 進みます。時間がもっと短くても同じ式が使えます。

ここで、時間に入れるのが待ちの長さです。列車がちょうど通りすぎた直後に変化が起きると、次に列車が来て、PLC に戻るまで待つことになります。ざっくり言うと、最悪で周期の約2倍の待ちを見込みます(本当は PLC の計算のタイミングなども重なるので、正確な遅れは PLC のメーカーのマニュアルにある「伝送遅れ時間」の式で求めます)。

物が進む距離 = 物の速さ × 待ちの時間

  • 物の速さ:コンベアなどの速さ。単位は m/s(1秒に何メートル)
  • 待ちの時間:通信の周期(と、その約2倍の最悪の待ち)。単位は秒。1ms(ミリ秒)= 0.001秒
計算例
計算例1:コンベアの箱を数える(周期 10ms の例)
コンベアの速さを m/s に直す(1分=60秒で割る)
30 m/min ÷ 60 = 0.5 m/s
周期を秒に直す(1000で割る)
10 ms ÷ 1000 = 0.010 s
周期のあいだに進む距離(速さ×時間)
0.5 m/s × 0.010 s = 0.005 m = 5 mm
最悪の待ち(周期の約2倍)で進む距離
0.5 m/s × 0.020 s = 0.010 m = 10 mm
箱を数えるだけなら、10mm 遅れて知っても困らない。この周期で十分
計算例
計算例2:動いている物にラベルを貼る位置を合わせたい(周期 1ms の例)
周期を秒に直す
1 ms ÷ 1000 = 0.001 s
周期のあいだに進む距離
0.5 m/s × 0.001 s = 0.0005 m = 0.5 mm
最悪の待ちで進む距離
0.5 m/s × 0.002 s = 0.001 m = 1 mm
±1mm で位置を合わせたいなら、周期 10ms(最悪 10mm)では足りず、1ms 程度の周期か、センサを速い入力に直接つなぐ方法が要る

つまり、何をしたいかで必要な周期が変わるということです。数えるだけ・ランプをつけるだけなら数十ミリ秒の周期でも困りませんが、動いている物の位置を合わせる・何台ものサーボの動きをそろえるなら、短い周期が得意な方式を選びます。

桁の感覚も確かめます。0.5m/s は、人がゆっくり歩く速さの半分くらいです。その速さでも、1/100秒(10ms)のあいだには 5mm しか進みません。ほとんどの「数える・知らせる」用途で通信が使えるのは、このためです。

通信の周期のあいだにコンベアの上の物が進む距離を、周期10ミリ秒と1ミリ秒で比べた図

4つの方式の地図:昔ながらの線の仲間と、イーサネットの仲間

ひとことで言うと方式は大きく、専用の線を使う「シリアル系」と、事務所の LAN と同じ線を使う「イーサネット系」に分かれます。

CC-Link・EtherCAT・EtherNet/IP・Modbus を1つずつ見る前に、全体の地図を見ておきます。どの方式も、鉄道会社のように「線路の幅」と「ダイヤの決まり」を自分たちで決めています。

たとえると

日本の鉄道でも、会社によって線路の幅が違い、そのままでは乗り入れできないことがあります。通信の方式も同じで、CC-Link の機器と EtherCAT の機器を、同じ1本の線に並べてつなぐことはできません。どの方式で行くかを、装置ごとに決める必要があります。

同じ名前でも、シリアル系とイーサネット系の両方を持つ方式があります(CC-Link と CC-Link IE、Modbus RTU と Modbus TCP)

系統線のようすこの記事の方式
シリアル系(昔からの仲間)専用のケーブルで、0 と 1 を1つずつ順に送る。速さは控えめだが長く延ばせるCC-Link、Modbus RTU
イーサネット系(新しい仲間)事務所の LAN と同じ形のケーブル・コネクタを使う。速いCC-Link IE、EtherCAT、EtherNet/IP、Modbus TCP

世界の動きを見ると、新しく取り付けられる機器はイーサネット系が中心です。HMS Networks の2025年の分析では、新しく設置された工場のネットワークの機器(ノード)のうち 76% がイーサネット系で、前の年の 71% から増えています。

このほかに、ヨーロッパの PLC でよく使われる PROFINET(プロフィネット)などもあります。この記事では、記事の題の4つに絞って説明します。

PLCの通信の方式をシリアル系とイーサネット系に分けた地図

CC-Link:決まったダイヤで回る列車

ひとことで言うとCC-Link は、専用のケーブルで最大64台の機器を決まった周期で回る方式で、イーサネット版の CC-Link IE もあります。

CC-Link は、CC-Link 協会(CLPA)が仕様を管理している方式です。協会の公開資料によると、もとの CC-Link は、通信速度が最大 10Mbps、最大 64局(64台ぶん)をつなげます。

たとえると

決まったダイヤで町を回る列車です。速く走らせると線路を長くできず、ゆっくり走らせると遠くの町まで延ばせます。

このたとえのとおり、CC-Link は速さと距離が引きかえになっています。協会の資料では、ケーブルの全長は 10Mbps のときに 100m まで、いちばん遅い 156kbps のときに 1.2km までです。中くらいの速さの値もあり、使う長さに合わせて速さを選びます(間の値は仕様書で確かめます)。

こうしたシリアルの線は、2本の線の電圧の差で信号を送る方式が多く、ノイズに強くなっています。差で送るとなぜノイズに強いのかは、同じ筆者が運営する電気のブログ shirasusolo.net の差動信号はなぜノイズに強い?で解説しています。

イーサネット版:CC-Link IE フィールドと CC-Link IE TSN

CC-Link にはイーサネットの線を使う仲間があります。製品の例として、三菱電機の公開仕様では、CC-Link IE フィールドネットワークは 1Gbps、局と局のあいだは最大 100m、1つのネットワークに最大 121局です。

さらに新しい CC-Link IE TSN は、協会の資料によると 1Gbps と 100Mbps の速さがあり、機械を動かすための通信と、工場の情報を集める通信を、同じネットワークで一緒に流せるのが特長です。

CC-Linkは速くするほど延ばせる距離が短くなることを示す図

EtherCAT:止まらずに、走りながら荷物を出し入れする列車

ひとことで言うとEtherCAT は、1つのデータの枠が全部の機器を通りぬけ、それぞれが通りすぎる一瞬に自分の分だけ読み書きする方式です。

EtherCAT は、EtherCAT Technology Group(ETG)という団体が広めている、イーサネットの線を使う方式です。国際規格の IEC 61158 にも載っています。

たとえると

ふつうの列車は、駅ごとに止まって荷物を降ろし、積みこみます。EtherCAT の列車は駅で止まりません。ホームの係が、走っている列車から自分あての荷物を取り出し、出す荷物をすばやく積みこみます。列車は終点まで行くと折り返して、司令室に戻ります。

ETG の説明では、マスターが送った1つの枠(フレーム)が機器を順に通り、各機器は通りすぎる枠から自分あてのデータを読み、自分のデータを書きこみます。枠が遅れるのは、機器の中の部品を電気が通りぬける時間だけです。この仕組みをオンザフライ(走りながら)と呼びます。

ETG の公開資料にある数字は次のとおりです。

  • 通信速度は 100Mbit/s(行きと帰りを同時に使える全二重)
  • 1つのセグメント(1本のつながり)に最大 65,535台
  • 機器と機器のあいだは、ふつうの工業用イーサネットのケーブルで最大 100m
  • つなぎ方は、1列(ライン)・枝分かれ(ツリー)・星形(スター)などが使える
  • 設計の目標は、周期 100μs(マイクロ秒。100万分の1秒)以下、時刻のずれ 1μs 以下。分散クロックという仕組みで、機器どうしの時計を 1μs よりずっと小さいずれで合わせる

時計がそろっていると、何台ものサーボモーターに「せーの」で同じタイミングの指令を出せます。そのため EtherCAT は、複数の軸の動きをそろえる装置でよく候補になります。

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出典

情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

EtherCATは止まらずに走りながら荷物を出し入れする列車にたとえられることを示すイラスト

EtherNet/IP:ふつうの道路を走る宅配便

ひとことで言うとEtherNet/IP は、事務所のネットワークと同じイーサネットの上で、工場の機器のデータをやりとりする方式です。

EtherNet/IP は、ODVA という団体が管理している方式です。名前の IP は「インターネット プロトコル」ではなく「インダストリアル プロトコル(工業用の決まり)」の略です。

たとえると

専用の線路を引くのではなく、町のふつうの道路を宅配便のトラックが走るイメージです。交差点(スイッチングハブ)で行き先ごとに分かれ、どの家にも届けられます。事務所のパソコンが使っている道路と同じなので、つながる相手が広いのが強みです。

ODVA の説明では、EtherNet/IP は上の層に CIP(コモン インダストリアル プロトコル)という共通の決まりを使い、ふつうの TCP/IP と、周期のデータを速く送るための UDP の上で動きます。つなぎ方は、星形(スター)・1列(ライン)・輪(リング。DLR と呼ぶ)が使えます。

ふつうのイーサネットの部品(ケーブル・ハブ)と同じ形なので、工場の情報のシステムとつなぎやすいのが特長です。周期は、機器ごとに「何ミリ秒ごとにデータがほしいか」を設定して決めます(値は機器と設定で変わります)。

注意|ここで間違えやすい

ふつうのイーサネットと同じ形でも、事務所用の安いハブをそのまま使ってよいとは限りません。工場の中はノイズや温度が厳しく、周期のデータが遅れると機械が止まることがあります。ハブやケーブルは、機器のメーカーが指定する条件で選びます。

出典

情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

EtherNet/IPはふつうのイーサネットの道路を走る宅配便にたとえられることを示すイラスト

Modbus:1駅ずつ「荷物ある?」と聞いて回る係

ひとことで言うとModbus は、1台が順番に問い合わせ、聞かれた機器だけが答える、いちばん古くて簡単な方式です。

Modbus は、1979年に Modicon(モディコン)という会社が自社の PLC 用に公開した方式です。決まりがオープンで使用料がかからないため、いまも温度調節器・電力計・インバーターなど、たくさんの機器が対応しています。

たとえると

司令室の係が、駅に1つずつ電話をかけて「荷物ある?」と聞き、返事を聞いたら次の駅に電話します。聞かれていない駅は、勝手にしゃべりません。

Schneider Electric の説明では、問い合わせる側をクライアント、答える側をサーバーと呼び、シリアルの線では1台のクライアントに最大 247台のサーバーをつなげます。種類は、シリアルの線で使う Modbus RTU(と Modbus ASCII)と、イーサネットで使う Modbus TCP があります。データは、オン・オフを入れる表(コイル)と、数値を入れる表(レジスタ)に分けて読み書きします。

1台ずつ聞いて回るので、台数が増えると1周が長くなります。EtherCAT のように1つの枠で全部を回るやり方と、何が違うのかを動く図で比べてみましょう。

動かして確かめる

マスター(PLC)が、6台の機器の状態を集めます。EtherCAT のやり方では、1本の列車(枠)が止まらずに全部の機器を通り、走りながら荷物を出し入れして戻ってきます。1台ずつ聞くやり方では、1台に「どう?」と聞いて返事を待ち、次の1台へ進みます。2つを順に動かして、1周にかかる時間を比べてください。

マスター (PLC) 行き → ← 帰り(同じケーブルの中の帰りの線) 1周にかかった時間(アニメの時間) EtherCAT: 1台ずつ:

いまの様子:スタートを押すと、ここに説明が出ます。

動きは説明のための作り物です。本物の時間は、通信の速さ・台数・機器が返事をする速さで決まります。1台ずつ聞くやり方も、台数が少なく急がない用途なら十分に使えます。

見てほしいのは、1台ずつ聞くやり方では「行って・返事を待って・戻る」が台数の分だけくり返されるところです。その代わり、しくみが簡単で、ほとんどの機器が対応しています。速さがいらない電力計や温度の読み取りには、いまも Modbus がよく使われます。

出典

情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

1台ずつ問い合わせる方式とEtherCATで、全部の機器のデータを集める時間を比べた図

4つを1枚の表に:比較表

ひとことで言うと速さと同期なら EtherCAT、事務所とのつながりなら EtherNet/IP、簡単さと対応機器の多さなら Modbus、CC-Link 対応の PLC と機器でそろえるなら CC-Link が候補です。

ここまでの違いを1枚にまとめます。数値は各団体の公開資料の値です(機種によって使える範囲は変わります)。

自分の装置で大事な行(速さか、つながる相手か、簡単さか)を先に決めて、その行を横に読みます

観点CC-Link(CC-Link IE)EtherCATEtherNet/IPModbus(RTU/TCP)
線専用の線(IE はイーサネットの線)イーサネットの線イーサネットの線とハブRTU はシリアルの線、TCP はイーサネット
速さの例最大10Mbps(IE フィールド・IE TSN は 1Gbps)100Mbit/s(全二重)ふつうのイーサネットの速さシリアルは遅め
回り方決まったダイヤで回る1つの枠が全部を通って戻る機器ごとに決めた周期で送る1台ずつ問い合わせる
台数・距離の例64局・10Mbps で全長100m/156kbps で1.2km65,535台・機器の間100mハブで広げられるシリアルは最大247台
得意なこと同じ系統の PLC・機器と組みやすい短い周期と、複数の軸の時刻合わせ工場の情報のシステムとのつながり簡単で、対応する機器が多い
決まりを管理する団体CC-Link協会(CLPA)ETGODVAModbus の団体(もとは Modicon)

世界全体で、新しく設置された機器の割合を見ると、PROFINET が 27%、EtherNet/IP が 23%、EtherCAT が 17%、Modbus TCP が 4% です(HMS Networks の2025年の分析。CC-Link IE は「その他」に含まれ、個別の数字はありません)。ただしこれは世界の数字で、地域によって大きく違います。

注意|ここで間違えやすい

割合が大きい方式が、自分の装置にとって正解とは限りません。いちばん効くのは「使う PLC と機器が、その方式に対応しているか」です。次の段の順番で決めます。

出典

情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

新しく設置された工場のネットワーク機器の方式ごとの割合を示す横棒グラフ

どれを選ぶ?5つの順番で決める

ひとことで言うとPLC のメーカーの標準 → 機器の対応 → 速さと同期 → 距離と台数 → 上位とのつながり、の順に決めます。

鉄道でいえば、まず「どの鉄道会社の路線に乗るか」を決め、次に「行きたい駅がその路線にあるか」を確かめる順番です。

STEP 1

使う PLC のメーカーが、標準で持っている方式を候補にする。PLC の本体や、追加のユニットで対応している方式は、メーカーの設定ソフトで扱いやすく、資料もそろっています。

STEP 2

つなぎたい機器(インバーター・サーボ・センサ・リモート I/O)が、その方式に対応しているか確かめる。機器のカタログの「通信」の欄と、オプションの通信カードの有無を見ます。1台でも対応していなければ、次の STEP で考え直すか、ゲートウェイ(⑬)を使います。

STEP 3

必要な速さと同期を確かめる。⑤の計算で、周期のあいだに物が進む距離が困らないか。複数のサーボの動きをそろえるなら、時刻合わせが得意な方式か。

STEP 4

距離と台数が仕様の中に入るか確かめる。機械の端から端までのケーブルの長さと、つなぐ台数を数え、各方式の上限と比べます。

STEP 5

工場の上位のシステム(生産の記録・見える化)とつなぐか確かめる。上位とつなぐなら、イーサネット系で、情報の通信も一緒に流せる方式が楽です。

実務の判断のコツ

通信の方式は、機器を選んでから合わせるより、PLC の側から決めて機器をそろえるほうが後で困りません。PLC の設定ソフトがその方式の機器を一覧から選べると、局番・データの割り付け・異常の表示までまとめて設定でき、立ち上げで迷う時間が減ります。機器の都合で方式を混ぜると、設定ソフトも資料も2系統になり、止まったときの切り分けも2倍になります。

PLCの通信の方式を選ぶ5つの順番を示す流れ図

違う方式をつなぎたいとき:ゲートウェイは乗り換え駅

ひとことで言うと違う方式の機器どうしは、ゲートウェイという変換器を間に入れてつなぎます。

どうしても使いたい機器が、PLC と違う方式にしか対応していないことがあります。そのときに使うのがゲートウェイ(変換器)です。

たとえると

線路の幅が違う2つの路線の境目に、乗り換え駅を作るイメージです。片方の列車から荷物を降ろし、もう片方の列車に積みかえます。積みかえのぶん、少し時間がかかります。

ゲートウェイを入れると、データが一度載せかえられるので、そのぶん遅れが増えます。また、どのデータをどこに載せかえるかの設定が、ゲートウェイの中にもう1つ増えます。

上の行ほど、立ち上げてからの手間が少ない方法です。選べるなら上から検討します

方法向いている場面気をつけること
PLC に、その方式の通信ユニットを足す相手の方式の機器が多いときPLC のメーカーがその方式のユニットを出しているか
ゲートウェイ(変換器)を入れる違う方式の機器が1〜2台だけのとき遅れが増える・設定がもう1か所増える
機器を、PLC の方式に対応するものに替えるまだ機器を選び直せるとき機能や大きさが同じものがあるか
違う通信方式どうしはゲートウェイという乗り換え駅でつなぐことを示すイラスト

通信が止まったら:まず「全部か、1台か」で分ける

ひとことで言うと通信の異常は、全部の機器が止まったのか、1台だけなのかで、見る場所がはっきり分かれます。

通信が止まると、PLC や機器のランプ(LED)が赤く光ったり、異常の番号が出たりします。慌てて設定を変える前に、どこまで止まったかを確かめます。

たとえると

列車が止まったとき、全部の駅で来ないなら、線路の始まり(司令室・最初の区間)を疑います。1つの駅だけ荷物が届かないなら、その駅か、その駅の手前の線路を疑います。

上の行から順に確かめます。左の列が今の症状に近い行を探してください。

症状・いつ出るかまず疑う原因確かめる場所・測るもの直し方
全部の機器と通信できないマスター(PLC)の通信ユニットの設定・電源、最初のケーブルPLC の通信ユニットの LED と異常の表示、最初の1本のコネクタ設定を元に戻す・コネクタを挿し直す・ケーブルを替える
ある機器から先が全部止まるその機器か、その手前のケーブルの断線・抜け止まった最初の機器の LED、その手前のケーブルコネクタの挿し直し・ケーブルの交換
1台だけ通信できないその機器の局番(番号)やアドレスの設定・電源その機器の局番の設定、電源のランプ局番を PLC の設定と合わせる・電源を確かめる
ときどき止まる・動くたびに止まるノイズ・ケーブルの傷み・終端(線の端の処理)の忘れ動力の線との離れ方、シールドのアース、終端抵抗動力の線から離す・ケーブルを替える・終端を確かめる

ときどき止まる場合は、インバーターなどの動力の線のノイズが原因のことがよくあります。メーカーの資料の例では、通信のケーブルを動力の線と束ねず、100mm 以上離すよう書かれています(機器の取扱説明書の値に従います)。

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実務の判断のコツ

通信の異常で最初に見るのは、異常の番号の意味より「どこから先が止まったか」です。全部の局が落ちたのか、ある局から先なのか、1台だけなのかを先に決めると、見るケーブルとコネクタが数か所に絞れます。番号の意味は方式とメーカーで違うので、場所を絞ってからマニュアルを引くほうが早く終わります。

実務の判断のコツ(通信が切れたとき)

止まると困る出力ほど、「通信が切れたとき、その出力をどうするか(切る/そのまま保つ)」を先に決めて設定します。多くの機器には、通信が切れたときの動きを選ぶ設定があります。決めずにおくと、通信が切れた瞬間にモーターが回り続けたり、逆に必要な保持が外れたりします。

注意|ここで間違えやすい

非常停止のように人の安全にかかわる信号は、ふつうの通信のデータだけに頼らず、専用の配線か、安全用に作られた通信の規格(各方式に安全用の仕組みがあります)で組みます。安全のしくみの決まりは、機械の安全の規格と各社の安全機器の資料で確かめてください。

出典

情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

よくある質問

Q. CC-Link とは何ですか?

A. PLC とたくさんの機器を1本の線でつなぎ、決まった周期でデータをやりとりする通信の方式です。CC-Link協会が仕様を管理しています。

Q. CC-Link と CC-Link IE の違いは何ですか?

A. CC-Link は専用の線で最大10Mbps、CC-Link IE はイーサネットの線を使い、1Gbps の速さがあります。

Q. EtherCAT が速いのはなぜですか?

A. 1つのデータの枠が全部の機器を止まらずに通り、各機器が通りすぎる一瞬に自分の分を読み書きするからです。

Q. EtherNet/IP と Modbus TCP はどちらもイーサネットですか?

A. どちらもイーサネットの線を使いますが、データの決まりが違います。同じ線に並べても、互いの言葉は通じません。

Q. PLC の通信の方式はどう選べばいいですか?

A. 使う PLC のメーカーが標準で持つ方式を候補にし、つなぐ機器の対応、速さ、距離と台数の順に確かめます。

まとめ:PLC の通信は、1本の線路を回る列車

POINT
  • PLC の通信は、機器ごとに線を引く代わりに、1本の線の上をデータの列車が回って全部の機器とやりとりするしくみ
  • 通信にすると線の本数は大きく減る(例:66本・990m → 3本・45m)
  • 周期のあいだに物が進む距離は「速さ×時間」。数えるだけなら長い周期でよく、位置を合わせるなら短い周期が要る
  • CC-Link は決まったダイヤの列車、EtherCAT は走りながら出し入れする列車、EtherNet/IP はふつうの道路の宅配便、Modbus は1駅ずつ聞いて回る係
  • 選ぶ順番は、PLC のメーカーの標準 → 機器の対応 → 速さと同期 → 距離と台数 → 上位とのつながり
  • 止まったら、まず「全部か、ある機器から先か、1台か」で見る場所を分ける

通信の方式が決まったら、次は PLC そのものの選び方や、画面からの操作(タッチパネル)へ進みましょう。

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シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

PLC・サーボ・インバーターを実務で扱ってきた電気・制御の設計者です。制御の記事は、選び方・設定の順番・止まったときの切り分けを、実務の判断のしかたから書いています。機械(材料・機械要素・図面)の記事は本職ではないため、JIS とメーカーの技術資料を調べてまとめ、出典を示しています。

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通信の方式の次は、つなぐ機器の側を深めましょう。サーボやインバーターの選び方・設定は、通信でつないだあとも必ず要ります。

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