ガスケットとパッキンの違い|JISの分け方と選び方の判断表

フランジのあいだのガスケットとOリング・オイルシールのイラスト。ガスケットとパッキンの違い 機械要素

ガスケットとパッキンの違いは、どこにあるのか?

ふさぐ所が動くかどうかです。ガスケットはフランジやふたのような「動かない所」、パッキンは回る軸や行き来するロッドのような「動く所」のシールです(JIS B 0116 の分け方)。ただし日常の言葉では、シール全部を「パッキン」と呼ぶことも多くあります。

この記事では、水筒のふたのゴムと空気入れのピストンのゴムの2つのたとえで、最後まで説明します。条件ごとの判断表もあります。

調べてまとめたこの記事は、筆者の本職(電気・制御の設計)の外の、機械の部品の内容です。JIS とシール材のメーカーの技術資料・官公庁の資料を調べてまとめました。
出典

情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

ガスケットとパッキンは、どちらも「シール」の仲間

ひとことで言うとどちらも、すき間から中の液体や空気がもれるのを防ぎ、外からごみが入るのを防ぐ部品です。違いは、その場所が動くかどうかです。

JIS では、漏れを防いだり、外から異物が入るのを防いだりする部品をまとめてシールと呼びます。ガスケットもパッキンも、このシールの仲間です。

たとえると

水筒を思い浮かべてください。ふたの裏には、ゴムの輪がついています。ふたを閉めたら、ふたと本体はもう動きません。このゴムが「ガスケット」の役です。一方、自転車の空気入れのピストンにも、ゴムがついています。こちらは筒の中を何度も行き来しながら、空気をもらさずに押し出します。このゴムが「パッキン」の役です。

左のたとえを、右の本物の場所と呼び方に読みかえてください

たとえ動き本物の機械では呼び方(JIS の分け方)
水筒のふたのゴム閉めたら動かない配管のフランジ・機械のふた・ポンプの合わせ目ガスケット(静止用シール)
空気入れのピストンのゴム行き来するシリンダのロッド・ピストンパッキン(運動用シール)
(回る物の例)回るポンプやモーターの回る軸パッキン(運動用シール)

つまり、見分けるコツは「部品の形」ではなく「その部品をはさんでいる2つの物が、動くか、動かないか」です。

水筒のふたのゴムは動かない所、空気入れのピストンのゴムは動く所のシールであることを比べたイラスト

ガスケットとは:動かない合わせ目を、押しつぶしてふさぐ

ひとことで言うとガスケットは、2つの面のあいだにはさみ、ボルトでぎゅっと締めて、すき間を埋めるシールです。

配管と配管をつなぐ所には、つばのように広がった円盤(フランジ)があります。2枚のフランジをボルトで締め合わせるとき、そのあいだにはさむのがガスケットです。

金属の面は、平らに見えても小さなでこぼこがあります。そのままでは、すき間から液体がしみ出します。そこで、少しやわらかい材料を間にはさみ、ボルトで押しつぶします。するとガスケットがでこぼこに入りこみ、すき間がなくなります。

たとえると

水筒のふたも、ゆるく閉めるともれますよね。ぎゅっと閉めると、ゴムがつぶれてすき間がなくなり、もれなくなります。ガスケットのしくみは、この「ぎゅっと閉める」と同じです。

ガスケットにとって大事なのは、締める力です。メーカーの技術資料では、ガスケットを締める力を、圧力容器の規格(JIS B 8265)で決まった計算式で求め、その中の一番大きな値以上で締めるよう説明しています。逆に、材料によっては強く締めすぎるとつぶれてしまうので、上限(許容面圧)も守ります。

注意|ここで間違えやすい

締める力の足りない・かたよったガスケットは、最初はもれなくても、圧力や温度の上がり下がりをくり返すうちに、にじみ始めることがあります。ボルトの締め付けは、メーカーの資料と社内の手順に従ってください。

ガスケットは2枚のフランジのあいだでボルトで押しつぶし、面のでこぼこを埋めることを示す断面図

パッキンとは:動く所を、動きを止めずにふさぐ

ひとことで言うとパッキンは、回る軸や行き来するロッドに当てて、動きを止めずにすき間をふさぐシールです。

JIS B 0116 では、パッキンを「回転運動・往復運動などの運動部に用いるシールの総称」と決めています。運動用シール、動的シールとも呼びます。

動く所では、ガスケットのようにぎゅっと押しつぶすことはできません。強く押しつけすぎると、こすれる力(摩擦)で軸が回りにくくなり、パッキンもすぐにすり減ってしまうからです。

たとえると

空気入れのピストンのゴムは、筒の内側に「ちょうどよく」当たっています。ゆるすぎれば空気がもれ、きつすぎればハンドルが重くて押せません。パッキンは、この「ちょうどよさ」で、もれと動きやすさのバランスを取っています。

動き方で、使うシールの形が変わります。くわしい種類は⑦の地図で

動き場所の例代表的なシール
往復(行き来する)空気圧・油圧のシリンダのロッドとピストン成形パッキン(Uパッキン・Oリングなど)
回転(回る)ポンプ・モーター・減速機の軸グランドパッキン・オイルシール・メカニカルシール

つまり、パッキンは「もれを止める」と「動きを止めない」を同時にこなす、ガスケットより注文の多い部品です。

パッキンは回る軸や行き来するロッドのすき間を、動きを止めずにふさぐことを示す断面図

なぜ混乱する?ふだんは何でも「パッキン」と呼ぶから

ひとことで言うとJIS では動く所がパッキン、動かない所がガスケット。でも日常の言葉では、シール全部をパッキンと呼ぶことが多いのです。

ここで「え、家の保存容器のふたのゴムは、パッキンって呼ぶけど?」と思った方へ。その感覚は正しいです。JIS B 0116 自身も、パッキンの説明の注記に「一般にはシールと同じ意味を表す」と書いています。厚生労働省の資料でも、慣用的にはシール材の総称をパッキンと呼ぶことがある、と注記しています。

真ん中の列が、カタログや会話でよく聞く呼び方。右が「動くか・動かないか」で見た本当の役目です

場面よくある呼び方JIS の分け方で言うと
保存容器・水筒のふたのゴムパッキン動かない所 → ガスケットの役
制御盤・端子箱の扉のふちのゴムパッキン(盤のカタログでもこう呼ぶことが多い)閉めたら動かない → ガスケットの役
配管のフランジのあいだのシートガスケットガスケット
シリンダのロッドのゴムパッキンパッキン
モーター・減速機の軸のゴムのリングオイルシール動く所のシール(パッキンの仲間)
POINT

図面や部品の注文で迷ったら、名前より「どこに使うか」と「メーカーの型番」で伝えると、取り違えがありません。会話で「パッキン」と言われたら、動く所か動かない所かを聞き返すと話が早くなります。

保存容器のふたや制御盤の扉のゴムのように、日常では動かない所のゴムもパッキンと呼ばれる例のイラスト

ガスケットとパッキンの違いを表で比べる

ひとことで言うと動き・止め方・こわれ方・交換の考え方まで、6つの観点で違いがあります。

左の列の観点ごとに、2つを横に比べます。材料の例はメーカーの技術資料の分類から

比べる所ガスケットパッキン
使う所動かない所(フランジ・ふた・合わせ目)動く所(回る軸・行き来するロッド)
別の呼び方静止用シール・固定用シール運動用シール・動的シール
止め方ボルトで強く押しつぶして、すき間を埋めるちょうどよい力で当てて、動きを止めずにふさぐ
大事な数字締める力(面圧)・圧力・温度動く速さ・圧力・温度・すり減り
こわれ方の例締め不足・かたより・材料のつぶれすり減り・軸の傷・熱
材料の例ゴム・シート・PTFE・膨張黒鉛・金属ゴム・樹脂・繊維を編んだもの・金属とゴムの組み合わせ
たとえると

水筒のふたのゴムは「一度ぎゅっと閉めたら、じっと耐える」係、空気入れのゴムは「こすれながら働き続ける」係です。だから、ふたのゴムは押しつぶされても平気な材料、空気入れのゴムはこすれに強い材料と、求められるものが違います。

ガスケットとパッキンの違いを6つの観点で比べた図

種類の地図:ガスケット3種類とパッキンの仲間

ひとことで言うとガスケットは材料で3つ(軟質・セミメタル・メタル)、パッキンは作り方と動きで分かれます。

シール材のメーカーの技術資料では、ガスケットを材料で次の3つに分けています。

上から下へ、やわらかい材料から金属へ。温度と圧力が高い所ほど下の段になります

ガスケットの種類どんなものか向く場面の例
軟質ガスケットゴム・繊維を固めたシート・PTFE(ふっ素樹脂)・膨張黒鉛など、やわらかい材料だけ水・油・空気など、温度と圧力がほどほどの所
セミメタルガスケット金属とやわらかい材料の組み合わせ(うず巻形など)温度・圧力が高めの配管
メタルガスケット金属だけ(金属のリング・中空の金属Oリングなど)とても高い温度・圧力

パッキンは、型で作る成形パッキン(Oリング・Uパッキン・Vパッキンなど)と、繊維をひも状に編んだ編組パッキン(グランドパッキンに使う)に分かれます。さらに、回る軸用のオイルシールやメカニカルシールもあります。

注意|ここで間違えやすい

ゴムの材料(NBR・EPDM・ふっ素ゴムなど)は、流れる液体や温度によって、ふくらんだり硬くなったりします。材料の選び方は、メーカーの「適合表」で確かめてください(このサイトでは、ゴム材料の比べ方を別の記事で扱う予定です)。

ガスケット3種類とパッキンの仲間を分けたシールの種類の地図

Oリングはどっち?動く所にも動かない所にも使える

ひとことで言うとOリングは形の名前で、使い方しだいでガスケットの役にもパッキンの役にもなります。JIS では運動用 P と固定用 G を分けています。

断面が丸いゴムの輪をOリングと呼びます。溝にはめて、相手の面との間で少しつぶして使います。

JIS B 2401-1 では、一般の機械に使う Oリングを、次の3つに分けて寸法を決めています。

Oリングの品番の頭の文字(P・G・V)で、どの用途の寸法かがわかります

記号名前使い方の例
P運動用 Oリングシリンダのピストン・ロッドなど動く所(動かない所にも使われる)
G固定用 Oリングふた・合わせ目など動かない所
V真空フランジ用 Oリング真空の装置のフランジ
たとえると

Oリングは、水筒のふたにも、空気入れのピストンにも使える「万能のゴムの輪」です。ただし、どちらに使うかで、はめる溝の深さや幅の決め方が変わります。

溝の寸法やつぶし方の決め方は、メーカーの表と JIS の付表で決まっています。くわしくは、このサイトで順に公開する Oリングの記事で扱います。

Oリングの固定用Gはふたにはさみ、運動用Pはピストンの溝で動くことを示す断面図

どちらを選ぶ?条件ごとの判断表

ひとことで言うとまず「動くか」でガスケットかパッキンかを決め、次に動き方・流体・温度・圧力で種類をしぼります。

上から順に、自分の場所に近い行を探します。最後の行は、どれにも当てはまらないときの答えです

条件選ぶもの次に確かめること
2つの面が動かない(ふた・フランジ)ガスケット流体・温度・圧力 → 軟質・セミメタル・メタルのどれか
動かない所で、よく開け閉めするOリング(固定用 G)や、扉用のゴム溝の寸法・開け閉めの回数
行き来する(シリンダ)成形パッキン(Uパッキン・Oリング P など)圧力・速さ・シリンダのメーカーの指定品
回る軸で、油を中に閉じこめたいオイルシール軸の直径・回る速さ(周速)・油の種類
回る軸で、圧力のある液体を止めたい(ポンプ)グランドパッキン・メカニカルシールポンプのメーカーの指定
迷ったら機械のメーカーが指定する純正品取扱説明書の部品表の型番
Q1 シールをはさむ2つの物は、動きますか?
はい → →Q2
いいえ → ガスケット(固定用のOリングを含む)
▼
Q2 動きは「回る」ですか?
はい → オイルシール・グランドパッキン・メカニカルシール
いいえ → →Q3
▼
Q3 行き来する動き(シリンダ)ですか?
はい → 成形パッキン(Uパッキン・Oリング P など)
いいえ → 機械のメーカーに相談

どの場合も、最後は「流体」「温度」「圧力」の3つで、メーカーの選定表を見て決めます。メーカーの技術資料でも、シール材はこの3つを基本に選ぶと説明しています。

動くか、回るか、行き来するかでガスケットとパッキンを選ぶ順番のフロー

計算してみよう①:圧力は、ふたをどれだけの力で押し開ける?

ひとことで言うと圧力×面積が、ふたを押し開けようとする力です。直径100mm のふたに 0.5MPa なら、約3,927N(およそ400kg重)です。

なぜこの計算をするのでしょうか。ガスケットを「ぎゅっと締める」必要がある理由が、数字でわかるからです。中の圧力は、ふたを内側から押し開けようとします。ボルトとガスケットは、その力に負けずに、すき間をふさぎ続けなければなりません。

式の出どころは、圧力の決め方そのものです。圧力とは「1つの面積あたりに、どれだけの力がかかっているか」のことです。

圧力 = 力 ÷ 面積 だから 力 = 圧力 × 面積

1 MPa は「1 mm² あたり 1 N」。単位を N/mm² に直すと、mm² と掛けて N が出ます

記号意味単位
Fふたを押し開けようとする力N(ニュートン。約0.1kgの物の重さが1N)
P中の圧力MPa(メガパスカル)。1 MPa = 1 N/mm²
A圧力を受けるふたの面積mm²
計算例
例:直径100mm のふたに、0.5MPa の空気の圧力がかかる(例の値)
① ふたの半径を出す(直径の半分)
100 mm ÷ 2 = 50 mm
② 円の面積を出す(π × 半径 × 半径)
A = 3.1416 × 50 mm × 50 mm = 7,854 mm²
③ 圧力の単位を N/mm² にする
P = 0.5 MPa = 0.5 N/mm²
④ 力 = 圧力 × 面積
F = 0.5 N/mm² × 7,854 mm² = 3,927 N
⑤ 重さの感覚に直す(1kg重 = 9.8 N)
3,927 N ÷ 9.8 ≒ 401 kg重
⑥ ボルト4本で受けるなら1本あたり
3,927 N ÷ 4 本 ≒ 982 N(約100 kg重)
答え:約3,927N。大人6人分くらいの重さで、ふたが内側から押されています

つまり、ボルトは「この 3,927N に耐える力」に加えて、「ガスケットを押しつぶしてすき間を埋める力」も出さなければなりません。だからガスケットのある所のボルトは、決められた力でしっかり締めるのです。実際の締め付けの力は、ガスケットのメーカーの資料にある係数を使って、規格の式で計算します。

注意|ここで間違えやすい

面積が2倍になると、力も2倍です。直径が2倍(200mm)なら面積は4倍なので、同じ圧力でも力は4倍の約15,700N になります。大きなふたほど、ガスケットとボルトの負担は急に増えます。

直径100mmのふたに0.5MPaがかかると約3,927Nで押し開けようとすることを計算した図

計算してみよう②:インバーターで速く回すと、軸のシールはどうなる?

ひとことで言うと軸の表面の速さ(周速)は回転数に比例します。回転を2倍にすれば、シールがこすれる速さも2倍です。

ここは、電気・制御の仕事とシールがつながる所です。インバーターを使うと、モーターをもとの回転より速く回すこともできます。そのとき、軸に当たっているオイルシールなどのパッキンは、より速くこすられます。オイルシールには、メーカーごとに「この速さまで」という目安(許容周速)があります。

たとえると

空気入れのハンドルを、ゆっくり押すのと、すごい速さで押すのとでは、ピストンのゴムの熱くなり方もすり減り方も違いますよね。回る軸のシールも、速くこすられるほど熱を持ち、すり減りやすくなります。

式の出どころは、円の周りの長さです。軸が1回転すると、軸の表面の1点は「直径×π」の長さだけ進みます。それに1秒あたりの回転数をかければ、1秒に進む長さ=速さになります。

周速 v [m/s] = π × 軸の直径 d [m] × 回転数 n [min⁻¹] ÷ 60

÷60 は、回転数の単位が「1分あたり(min⁻¹)」なので、1秒あたりに直すためです。

計算例
例:直径24mm の軸を、1,800 min⁻¹ から 3,600 min⁻¹ に上げる(例の値)
① 直径を m にする
d = 24 mm = 0.024 m
② 1回転で進む長さ(π × d)
3.1416 × 0.024 m = 0.0754 m
③ 1,800 min⁻¹ を1秒あたりに
1,800 ÷ 60 = 30 回/s
④ 周速 = 1回転の長さ × 1秒の回転数
v = 0.0754 m × 30 回/s = 2.26 m/s
⑤ 3,600 min⁻¹ なら1秒に60回
v = 0.0754 m × 60 回/s = 4.52 m/s
答え:2.26 m/s → 4.52 m/s。回転を2倍にすると、シールがこすれる速さも2倍になります

つまり、インバーターで回転数を上げる設計をするときは、モーターや機械の許す回転数だけでなく、軸のシールの許容周速も確かめる必要があります。許容周速は、シールの形・材料・潤滑の条件でメーカーごとに違うので、シールのカタログと機械の取扱説明書で確かめてください。

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電気・制御の設計者から見た注意点:盤・モーター・センサのシール

ひとことで言うと制御盤の扉・ケーブルの入口・モーターの軸・シリンダ・センサのコネクタと、電気のまわりにもシールはたくさんあります。

ガスケットやパッキンは「配管の部品」と思われがちですが、電気・制御の機器のまわりにもたくさん使われています。どこで、何を守っているかを表にまとめます。

左が場所、2列目が「動くか・動かないか」で見た役目、右の列が設計で確かめることです

場所シールの役(JIS の分け方)守っているもの設計で確かめること
制御盤・端子箱の扉のふち動かない所(ガスケットの役。呼び方はパッキン)盤の中の機器を、水・ほこり・油のミストから盤の保護等級(IP)、扉を閉めたときのつぶれ方
ケーブルの入口(ケーブルグランド)動かない所ケーブルの穴からの水・ほこりケーブルの外径が、グランドの合う範囲に入るか
モーター・減速機の軸回る所(オイルシール)中の油がもれないように・外のごみが入らないようにインバーターで上げる回転数と、許容周速(⑪)
空気圧シリンダ行き来する所(パッキン)中の空気がもれないようにパッキンがすり減ると動きが遅れ、センサの信号のタイミングがずれる
センサ・コネクタ動かない所(Oリングなど)センサの中への水・切削油センサの保護等級と、コネクタの締め忘れ

保護等級(IP)と、扉のシール

制御盤やセンサのカタログに「IP65」「IP67」とある数字は、JIS C 0920 のIP コードです。1つ目の数字がほこり(固形物)、2つ目の数字が水に対する守りの強さです。たとえば IP65 は、ほこりが中に入らず(6)、ノズルからの水の噴流にも耐える(5)という意味です。IP67 の 7 は、一時的に水に沈んでも耐える、という意味です。

この守りを実際に受け持っているのが、扉やふたのシールです。シールが切れたり、はがれたり、つぶれたまま戻らなくなったりすると、カタログの IP の数字は守れなくなります。

POINT

盤の中の故障の調べ方で、水や油のあとが見つかったら、まず扉のシールとケーブルの入口を見る、という順番がおすすめです。電気の部品を替えても、入口がふさがっていなければ同じことがくり返されます。

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もれたときの見方:動かない所と動く所で疑う場所が違う

ひとことで言うと動かない所は「締め方と材料のつぶれ」、動く所は「すり減りと軸の状態」から疑います。

シールのまわりからもれやにじみが見つかったときの、一般的な見方の順番を表にまとめます。分解や部品の交換は、機械の取扱説明書と社内の手順に従い、必ず機械を止めて圧力を抜いてから行ってください。

上の行から、症状が近い行を探してください。ここで書いたのは一般的な見方です。機械ごとの手順は取扱説明書が優先です

症状・いつ出るかまず疑う原因確かめる場所・測るもの直し方
動かない所(フランジ・ふた)からにじむボルトの締め不足・締め方のかたよりボルトのゆるみ、すき間が一周で同じかメーカーの資料の締め方(順番・力)で締め直す
動かない所で、締め直してもにじむガスケットのつぶれ・劣化、合わせ面の傷外したガスケットの形、面の傷やさび新しいガスケットに替える。使い回しはメーカーの資料に従う
回る軸のまわりに油がにじむオイルシールのすり減り・硬化、軸の表面の傷軸のシールが当たる所の傷、シールのゴムのひびシールを替える。軸に傷があれば軸側も見直す
シリンダの動きが遅くなった・止まる位置がずれるピストンやロッドのパッキンのすり減り(空気がもれる)排気口からの空気の音、動く時間パッキンかシリンダごと替える
盤の中に水やほこりのあと扉のシールの切れ・はがれ、ケーブルの入口扉を閉めたときのシールのつぶれ方、入口のすき間シールの交換、グランドの締め直し
注意|ここで間違えやすい

圧力のかかった配管や、熱い油の入った機械のシールは、運転中に触れたり分解したりしないでください。止めて、圧力を抜き、温度が下がったことを確かめてから作業します。作業の安全の決まりは、社内のルールに従ってください。

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よくある質問

Q. ガスケットとパッキンの違いは何ですか?

A. ガスケットはフランジやふたなど動かない所のシール、パッキンは回る軸や行き来するロッドなど動く所のシールです。

Q. パッキンとガスケット、JIS ではどう決まっていますか?

A. JIS B 0116 では、パッキンを回転・往復などの運動部に使うシールの総称とし、動かない所に使うものをガスケットと分けています。

Q. 制御盤の扉のゴムはパッキンですか、ガスケットですか?

A. カタログではパッキンと呼ぶことが多いですが、閉めたら動かない所なので、役目はガスケットにあたります。

Q. Oリングはパッキンですか?

A. Oリングは形の名前で、動く所にも動かない所にも使えます。JIS B 2401-1 では運動用の P と固定用の G に分けています。

Q. ガスケットはなぜ強く締める必要がありますか?

A. 中の圧力がふたを押し開けようとする力に負けず、面のでこぼこまで押しつぶして、すき間を埋める必要があるからです。

Q. インバーターで回転を上げるとシールに影響はありますか?

A. 軸の周速が回転数に比例して上がり、シールがこすれる速さも上がります。シールの許容周速をカタログで確かめます。

まとめ:動かない所はガスケット、動く所はパッキン

POINT
  • ガスケットもパッキンも、すき間からのもれと異物の侵入を防ぐ「シール」の仲間
  • ガスケットは動かない所(フランジ・ふた)を、ボルトで押しつぶしてふさぐ。水筒のふたのゴムの役
  • パッキンは動く所(回る軸・行き来するロッド)を、動きを止めずにふさぐ。空気入れのピストンのゴムの役
  • 日常では、盤の扉のゴムなどもまとめて「パッキン」と呼ぶ。迷ったら「両側が動くか」で見分ける
  • 圧力×面積がふたを押し開ける力(0.5MPa・直径100mm で約3,927N)。ガスケットとボルトはこれに耐える
  • 周速は回転数に比例。インバーターで回転を上げるときは、軸のシールの許容周速も確かめる

シールが守っている機械のまわりには、モーター・センサ・制御盤があります。次は、そのモーターに要る力を計算で確かめてみましょう。

S
シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

PLC・サーボ・インバーターを実務で扱ってきた電気・制御の設計者です。制御の記事は、選び方・設定の順番・止まったときの切り分けを、実務の判断のしかたから書いています。機械(材料・機械要素・図面)の記事は本職ではないため、JIS とメーカーの技術資料を調べてまとめ、出典を示しています。

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