センサの誤動作・誤検出の原因と切り分け表|ノイズ・取り付け・検出体・設定

センサの誤動作は番犬で考える。番犬と近接センサのイラスト センサと駆動

物がないのにセンサが反応して機械が止まる。物はあるのに、たまに入らない。センサを交換したのに、また同じことが起きた。

センサの誤動作・誤検出の原因は、ノイズ・取り付け・検出体・設定の4つにしぼれます。最初にセンサ本体のランプと PLC の入力ランプを見比べ、おかしいのがセンサの側か、配線・入力の側かを分けます。

この記事では、センサを工場の番犬にたとえて説明します。番犬が「いないのに吠える」「来ても吠えない」とき、犬が悪いとは限りません。症状から疑う順番を決める切り分け表もあります。

出典

情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

誤検出とは?番犬の2つの失敗

ひとことで言うと誤検出には「ないのに反応する」と「あるのに反応しない」の2種類があります。

センサは、物が「ある・ない」「来た・まだ」を電気の ON・OFF で PLC(機械の脳にあたる制御装置)に知らせる部品です。この知らせが、本当の様子と食い違うことを、誤検出や誤動作と呼びます。

たとえると

番犬の失敗には2つあります。1つは、だれもいないのに吠えること。もう1つは、泥棒が来たのに眠っていて吠えないことです。センサも同じで、ないのに ONになる失敗と、あるのに ON にならない失敗があります。

どの失敗かで、疑う原因の順番が変わります(④)

失敗の種類センサでは機械で起きること
いないのに吠える物がないのに ON(反応しっぱなし・ときどき ON)部品がないのに次の動きに進む、異常で止まる
来ても吠えない物があるのに OFF(たまに入らない)待ち続けて止まる、数え落とす
吠えたりやめたりON・OFF が細かくばたつく(チャタリング)数が多く数えられる、動きがぎくしゃくする

ここで大事なのは、どちらの失敗もセンサの故障とは限らないことです。センサそのものが壊れていることは、実はそれほど多くありません。まわりの条件を先に疑います。

だれもいないのに吠える番犬と、泥棒が来ても眠っている番犬のイラスト

まず記録:いつ・どんなふうにおかしいか

ひとことで言うと直す前に、症状の形と、起きたときの条件を書き留めます。これが原因をしぼるいちばんの手がかりです。

誤動作は、起きたり起きなかったりすることが多く、あとから思い出そうとしても条件がわかりません。番犬が吠えたとき、「何時に・何の音がしたか」をメモしておけば、原因が見えてきます。

上から順に、わかる範囲で書きます

記録することなぜ要るか
症状の形(ないのに ON・あるのに OFF・ばたつく)疑う原因の順番が決まる(④)
センサ本体のランプと、PLC の入力ランプの様子センサの側か、配線・入力の側かが分かれる(⑤)
そのとき動いていた機械(モーター・溶接・電磁弁)ノイズを疑うかが決まる(⑦)
品種・ロット・材料の変更検出体の変化を疑うかが決まる(⑩)
時刻・天気・季節、清掃や段取りの直後か外の光・温度・汚れ・取り付けのずれ(⑧⑫)
直前に変えたこと(設定・配線・部品の交換)変えた所が原因のことが多い
ひな形|コピーして使えます
センサの誤動作の記録
日時: 設備・センサの場所: 症状(ないのに ON/あるのに OFF/ばたつく/決まった時だけ): センサのランプ: PLC の入力ランプ: そのとき動いていた機械: 品種・材料の変更: 直前に変えたこと: 再現したか(何回中何回):

自社の実情に合わせて書き換えて使ってください。

本当の様子と、ないのにON・あるのにOFF・ばたつく・決まった時だけの4つの出力の形を並べた図

原因は4つにしぼれる:雑音・犬小屋・相手・しつけ

ひとことで言うとノイズ・取り付け・検出体・設定の4つを、症状に合った順番で確かめます。
たとえると

番犬がおかしなときに疑うことは、だいたい4つです。まわりの雑音(工事の音で吠える)、犬小屋の場所と向き(門が見えない所にある)、相手の見えにくさ(黒い服で夜に来る)、しつけ(小さな音でも吠えるように覚えた)。センサでは、それぞれノイズ・取り付け・検出体・設定に当たります。

左の列で覚えておくと、現場で思い出しやすくなります

番犬のたとえセンサの原因具体的には
まわりの雑音ノイズモーターやインバータ・電磁弁の電気の揺れが、信号の線に入る
犬小屋の場所と向き取り付けゆるみ・振動・すきまが限界ぎりぎり・となりのセンサ・周りの金属
相手の見えにくさ検出体材質・色・光沢・透明・大きさが変わった、汚れや付着物
しつけ設定感度・入力フィルタ・タイマ・プログラムの条件

どれから確かめるかは、症状で変わります。動く図で、症状を選んで「次を確かめる」を押してみてください。

動かして確かめる

いま起きている症状を選んで「次を確かめる」を押すと、どこから順に確かめるかの道筋が1つずつ進みます。番号が、確かめる順番です。

いまの様子:症状を選んで「次を確かめる」を押してください。

動きは説明のための作り物です(順番は、この記事の切り分け表にもとづく目安です。記録から原因の見当がついていれば、そこから確かめてかまいません)。

見てほしいのは、どの症状でも最初の1歩は同じ「ランプの見比べ」で、その次から順番が変わることです。たとえば、決まった機械が動いたときだけおかしいならノイズから、品種が変わってからおかしいなら検出体から確かめます。

番犬の4つの困りごと(雑音・犬小屋・見えにくい相手・しつけ)でセンサの4つの原因を示すイラスト

最初の分かれ道:センサのランプと入力ランプを見比べる

ひとことで言うとセンサのランプがおかしければセンサの側、センサは正しいのに入力ランプが違えば配線・入力の側です。

多くのセンサには、出力が ON になると光るランプがついています。PLC の入力にも、入力が ON になると光るランプがあります。この2つを見比べるだけで、調べる場所が半分になります。

センサが PLC から離れているときは、2人で無線や電話で同時に見ると確かです

センサのランプPLC の入力ランプおかしいのは次に見る所
おかしい(物がないのに点く・あるのに消える)センサと同じセンサの側(取り付け・検出体・設定・ノイズ)⑥の表の上から
正しい違う(点かない・点きっぱなし)配線・電源・PLC の入力の側配線、入力の条件(PLC の切り分けの記事)
正しい正しいPLC の中(プログラム・フィルタ・タイミング)⑪の計算、プログラムの条件
たとえると

番犬が吠えているのに家の人が気づかないなら、犬ではなく、声を届ける道(配線)や家の人の耳(入力)の問題です。犬がそもそも吠えていないなら、犬のまわりを調べます。

実務の判断のコツ

センサがおかしいと言われたら、交換する前に、センサのランプと入力ランプを同時に見て、どちらの側かを先に決めます。側を決めずにセンサを交換すると、配線や入力の問題なら直らず、たまたま症状が止まっただけでも「直った」と思い込んでしまうからです。交換するのは、側を決めてから最後にします。

入力ランプが点かない・消えないときの配線と入力の確かめ方は、PLCのエラーで止まったときの切り分けで、測る順番まで説明しています。

出典

情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

センサのランプとPLCの入力ランプを見比べて、センサの側・配線と入力の側・PLCの中を分ける図

センサの誤動作の切り分け表

ひとことで言うと症状と、いつ起きるかで、まず疑う原因が決まります。上の行から順に確かめます。

上の行から順に確かめます。センサの取り付けや配線に触るときは、機械を止め、動かないようにしてから行います

症状・いつ出るかまず疑う原因確かめる場所・測るもの直し方
決まった機械(モーター・溶接・電磁弁)が動いた時だけ ON・OFF するノイズ信号の線と動力線の並び、サージキラーの有無、接地線を離す・別の配管にする・サージキラー・接地(⑦)
機械の振動に合わせてばたつく取り付けのゆるみ、すきまが限界ぎりぎり金具のゆるみ、すきまと検出距離締め直す、すきまを7割の内側に(⑧⑨)
となりのセンサを付けてからおかしい相互干渉センサどうしの間隔間隔をとる・異周波タイプ・干渉防止の機能
品種・材料が変わってからおかしい検出体(材質・色・光沢・透明・大きさ)新しい品物で検出距離・反応を確かめるセンサの位置・方式・感度を見直す(⑩)
物がないのに ON のまま検出面の付着物(切り粉・汚れ)、うしろの壁や台検出面、センサのうしろにある物清掃・カバー・背景を遠ざける(⑩)
朝だけ・晴れた日だけ・季節で変わる外の光、温度、結露その時刻に光が当たるか、温度向き・フード・遮光(⑫)
センサは正しいのに PLC の入力が違う配線・電源・入力の条件・フィルタ入力ランプ、電圧、フィルタの設定配線を直す、フィルタを見直す(⑪)
出典

情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

ノイズ:まわりの雑音で吠える

ひとことで言うと決まった機械が動いた瞬間だけおかしいなら、ノイズを疑います。

ノイズは、モーターやインバータ、電磁弁などが出す、よけいな電気の揺れです。センサの信号はとても小さな電気なので、近くにある大きな電気の線から揺れがうつると、物がないのに ON になったり、ばたついたりします。

たとえると

番犬の小屋のすぐ横で工事をしていたら、犬は工事の音のたびに吠えます。犬を替えても、工事の音がある限り吠えます。ノイズもこれと同じで、センサを替えても、雑音の元と通り道が残る限り再発します。

対策は、雑音の元に近い所から行うほど効きます

ノイズの入り方よくある場面パナソニックの資料にある対策
線どうしで移るセンサの線を、モーターの動力線と同じダクトや配管に通している高圧線や動力線との並行配線・同じ配線管を避ける
電源・コイルから出る電磁弁やマグネットスイッチが切れる瞬間サージキラーでサージを抑える
機械の金属を伝わるインバータやスイッチング電源の近くノイズを出す機器の F.G.(フレームグラウンド)端子を接地
実務の判断のコツ

「この機械が動いた時だけ」がわかったら、その機械の動力線や電磁弁の線と、センサの線がどこで並んで走っているかを、図面ではなく実物でたどります。図面では別のダクトでも、あとから足した線が同じダクトに入っていることがあるからです。入力フィルタを長くするのは、通り道を断ったあとの最後の手段にします(⑪)。

インバータが出すノイズの通り道と対策の順番はインバータのノイズ対策で、ノイズそのもののしくみは同じ筆者の shirasusolo.net のノイズとはで説明しています。

出典

情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

ノイズの3つの入り方と、別配線・サージキラー・接地の対策を並べた図

取り付け:犬小屋の場所がずれている

ひとことで言うとすきまが限界ぎりぎりだと、わずかな振動やずれで ON・OFF がばたつきます。

取り付けの問題でいちばん多いのは、すきまが検出距離の限界ぎりぎりになっていることです。カタログの検出距離は「ここまでなら初めて反応する」最大の値なので、そこで使うと、温度の変化や機械の振動で、届いたり届かなかったりします。

近接センサには、ばたつきを防ぐしかけがあります。近づくときに ON になる距離と、離れるときに OFF に戻る距離を、わざと少しずらしてあるのです。このずれを応差(ヒステリシス)と呼びます。パナソニックの資料では、通常は最大動作距離の10〜20%の応差を持たせ、検出物体の振動などによるチャタリングを防いでいると書かれています。

たとえると

番犬が「門から 4 m に入ったら吠える、4.4 m より離れたら吠えやめる」と覚えているとします。門の前を行ったり来たりする人が 4 m と 4.4 m の両方をまたげば、犬は吠えたりやめたりをくり返します。またがなければ落ち着いています。

動く図で確かめましょう。すきまと振れ幅を変えて「スタート」を押し、出力が何回ばたつくかを見てください。

動かして確かめる

定格 4 mm(例)の近接センサの前で、金属の板が機械の振動で小さく揺れています。すきまと振れ幅を決めて「スタート」を押し、出力が何回ばたつくかを見てください。

出力ランプ 近接センサ 0 1 2 3 4 5 mm 7割の内側(2.8 mm まで) ON の線 4.0 OFF の線 4.4 出力の記録 ONOFF 切り替わった回数:0

いまの様子:すきまと振れ幅を決めて「スタート」を押すと、ここに説明が出ます。

動きは説明のための作り物です(ON の距離 4.0 mm・応差 10% は例。応差はパナソニックの資料の目安 10〜20% の厳しい側です。実際の機種の値は取扱説明書で確かめてください)。

見てほしいのは、振れ幅が応差より小さければ、すきまが限界の近くでもばたつかないことと、すきまを内側(7割)に寄せると、振れ幅が大きくてもばたつかないことです。次の節で、これを計算で確かめます。

ほかにも、取り付けで起きることがあります。となりにセンサを近づけて並べると、おたがいに影響して不安定になります(相互干渉)。近接センサは周りの金属にも反応することがあります。選ぶときの注意は近接センサの選び方で説明しています。

出典

情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

近づくときのONの線と離れるときのOFFの線(応差)と、すきま4.2mmと2.8mmの揺れの範囲を示した図

計算してみよう:振動でばたつくか?

ひとことで言うと例では、すきま 4.2 mm・振れ ±0.3 mm ならばたつき、すきまを 2.8 mm にすればばたつきません。

ここで計算するのは、「いまの取り付けで、振動によるばたつきが起きるか」と「どこまで近づければ止まるか」を、現物をいじる前に知るためです。

式の出どころ:「ON になる線」と「OFF に戻る線」を両方またぐか

ばたつきは、物が揺れて、ON になる距離より近くと、OFF に戻る距離より遠くの両方に、行ったり来たりするときに起きます。片方だけなら、ON か OFF のどちらかに落ち着きます。OFF に戻る距離は、ON になる距離に応差の分を足した所です。

OFF に戻る距離 = ON になる距離 × (1 + 応差の割合)

ばたつく条件:いちばん近い所 ≦ ON の距離 かつ いちばん遠い所 > OFF の距離

割合には単位がないので、答えは mm のままです

記号・言葉意味単位例の値
ON の距離近づいて ON になる距離(鉄の場合)mm4.0(定格 4 mm のセンサの例)
応差の割合パナソニックの資料の目安 10〜20% の厳しい側なし0.10
すきま物が止まったときの、センサの面との距離mm4.2 と 2.8
振れ幅振動で物が近づいたり離れたりする幅mm±0.3
計算例
計算例1:すきま 4.2 mm・振れ ±0.3 mm(数値は例)
① OFF に戻る距離
4.0 mm × (1 + 0.10) = 4.4 mm
② いちばん近い所
4.2 mm − 0.3 mm = 3.9 mm
③ いちばん遠い所
4.2 mm + 0.3 mm = 4.5 mm
④ ON の線をまたぐか
3.9 mm ≦ 4.0 mm → またぐ(ON になる)
⑤ OFF の線をまたぐか
4.5 mm > 4.4 mm → またぐ(OFF に戻る)
⑥ 判定
両方またぐ → 揺れるたびに ON・OFF をくり返す
すきま 4.2 mm では、振動のたびにばたつく
計算例
計算例2:すきまを 2.8 mm(4.0 mm の7割)に寄せた場合(数値は例)
① 7割の位置
4.0 mm × 0.7 = 2.8 mm
② いちばん近い所
2.8 mm − 0.3 mm = 2.5 mm
③ いちばん遠い所
2.8 mm + 0.3 mm = 3.1 mm
④ ON の線をまたぐか
2.5 mm ≦ 4.0 mm → ON
⑤ OFF の線をまたぐか
3.1 mm > 4.4 mm ではない → またがない
⑥ 判定
ON のまま落ち着く
すきまを7割の内側に寄せれば、振れ ±0.3 mm でもばたつかない

つまり、ばたつきを止めるいちばん確かな方法は、設定やタイマでごまかすことではなく、すきまを内側に寄せて、両方の線をまたがないようにすることです。答えが「すきま 28 mm」のように桁違いなら、割合と mm を取り違えていないかを見直します。

計算例1と2の揺れの範囲が、ONの線4.0mmとOFFの線4.4mmをまたぐかを比べた図

検出体:相手が見えにくくなった

ひとことで言うと品種や材料が変わってからおかしいなら、検出する物の変化を疑います。

センサのカタログの検出距離は、決められた標準の物(近接センサなら鉄の板、光電センサなら通常は白い無光沢の紙)で測った値です。パナソニックの資料にあるとおり、実際の検出距離は、物の大きさ・色・表面の凹凸で変わります。

たとえると

番犬は、明るい服の人はすぐ見つけますが、黒い服で夜に来る人は見落とします。ガラスのように透けて見える相手や、鏡のように光を返す相手も苦手です。

パナソニックの資料の注意をまとめました

検出体の変化起きやすいこと確かめること
材質が鉄からアルミ・ステンレスに(近接センサ)近づかないと反応しない → たまに入らない材質の補正係数で検出距離を見直す
色が白から黒に(光電センサの反射形)光が返らない → 入らない新しい品物で反応を確かめる
光沢のある物・鏡のような物光の返り方が向きで変わる → ばたつく・ないのに ON向きを変える、鏡面体用の方式
透明な物光が通り抜ける → 入らない透明体用の方式
うしろに壁や台があるうしろの物を見てしまう → ないのに ON背景を取り除く・黒くする・遠ざける

近接センサで材質が変わったときは、材質の補正係数を掛けて検出距離を見積もり直します(計算のしかたは⑧でリンクした近接センサの選び方の記事にあります)。光電センサの方式ごとの得意・不得意は、光電センサの選び方の記事で説明します(公開しだい、ここにリンクします)。

出典

情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

黒い物・光沢のある物・透明な物とうしろの壁を、光電センサが見にくいことを示すイラスト

設定:しつけで吠え方を変える(入力フィルタの窓)

ひとことで言うとフィルタは「短い雑音は無視、長い本物は通す」しつけ。雑音と本物の長さの間に収まるときだけ使えます。

PLC の入力には、短すぎる信号を無視するしかけ(入力フィルタ)があります。三菱電機 FX5U の取扱説明書では、デジタルフィルタの初期値は 10 ms で、なしや 10 µs〜70 ms から選べ、ノイズの多い所ではフィルタを設定するよう書かれています。

たとえると

「一瞬の物音では吠えない。1秒以上続いたら吠える」としつけるようなものです。小さな物音(ノイズ)は無視できますが、すばやく通り抜ける泥棒(短い本物の信号)まで見逃すおそれがあります。

ここで計算するのは、「フィルタで雑音を消しても、本物の信号を見落とさないか」を知るためです。

式の出どころ:時間 = 距離 ÷ 速さ

センサの前を品物が通り過ぎる時間は、品物の長さを速さで割ると出ます(速さ=距離÷時間 を並べかえた式)。この時間が、本物の信号の長さです。フィルタの時間は、ノイズの長さより長く、本物の信号の長さより十分短くなければなりません。PLC は決まった間隔(スキャン)で入力を読むので、本物の信号は「フィルタ+1スキャン」より長いことを、安全側の目安にします。

本物の信号の長さ = 品物の長さ ÷ 速さ

使える条件:ノイズの長さ < フィルタ かつ フィルタ + 1スキャン < 本物の信号の長さ

計算例
計算例3:品物 30 mm・速さ 0.5 m/s・ノイズ 2 ms・スキャン 15 ms・フィルタ 10 ms(数値は例)
① 単位をそろえる
30 mm = 0.030 m
② 本物の信号の長さ
0.030 m ÷ 0.5 m/s = 0.060 s = 60 ms
③ ノイズより長いか
フィルタ 10 ms > ノイズ 2 ms → ノイズは消える
④ フィルタ+1スキャン
10 ms + 15 ms = 25 ms
⑤ 本物の信号と比べる
60 ms > 25 ms → 本物は見える
⑥ 判定
フィルタ 10 ms で、雑音を消して本物を通せる
窓(2 ms〜60 ms)の中にフィルタ 10 ms が収まるので、使える
計算例
計算例4:速さを 2.0 m/s に上げた場合(数値は例)
① 本物の信号の長さ
0.030 m ÷ 2.0 m/s = 0.015 s = 15 ms
② フィルタ 10 ms+1スキャン
10 ms + 15 ms = 25 ms
③ 本物の信号と比べる
15 ms は 25 ms より短い → 見落とすおそれ
④ フィルタを 1 ms に縮めると
1 ms + 15 ms = 16 ms → まだ 15 ms より長い
⑤ しかもノイズと比べると
フィルタ 1 ms はノイズ 2 ms より短い → ノイズも通る
⑥ 判定
フィルタでは雑音と本物を分けられない
窓が閉じてしまった。ノイズの元と通り道を断つ(⑦)か、品物を長く見せる・スキャンを短くするなど、設計の側で直す

つまり、フィルタはノイズ対策の万能薬ではない、ということです。答えが 60 s のように大きすぎたら、mm を m に直し忘れていないかを見直します。

実務の判断のコツ

ばたつきや一瞬の誤動作を、フィルタやタイマを長くして消すのは、原因(ノイズの通り道・取り付け・検出体)を確かめて直したあとにします。先に設定で隠すと、原因が残ったまま見えなくなり、速さを上げたときや品種を変えたときに、見落としとして再発するからです。止める・安全にかかわる信号は、設定で遅らせない前提で考えます。

出典

情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

ノイズ2ms・フィルタ10ms・フィルタ+スキャン25ms・本物の信号60msと15msを比べた棒グラフ

決まった時だけおかしい:光・温度・汚れ

ひとことで言うと朝だけ・晴れた日だけ・清掃のあとだけなど、時刻や季節と結びつく誤動作は、外の環境を疑います。

パナソニックの資料では、太陽光は季節や時間帯で入る角度が変わるので、実機で確かめるよう書かれています

いつ起きるか疑うこと対策の例
朝や夕方の決まった時刻・晴れた日窓からの日ざしがセンサに入る向きを変える、フード、遮光
照明を替えてから強い光やインバータ式の蛍光灯の光光が直接入らない向きにする
暑い日・寒い日、機械が温まってから温度で検出距離が変わるすきまを7割の内側に(⑨)
しばらく清掃していないときレンズや検出面の汚れ・切り粉清掃の周期を決める、カバー
湯気・水がかかる所水滴・結露向き・カバー・方式の見直し
たとえると

番犬が毎朝7時にだけ吠えるなら、犬の気まぐれではなく、その時刻に何かが起きています。朝日が小屋に差しこむのかもしれません。時刻がそろうこと自体が、大きな手がかりです。

出典

情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

朝の日ざし・ほこりと切り粉・湯気でセンサが決まった時だけおかしくなるイラスト

確かめる順番:止める → 見る → 動かして試す → 測る

ひとことで言うと触る前に機械を止め、見るだけでわかることから順に確かめます。
STEP 1

機械を止めて、動かないようにする。センサの近くには、動く部分や挟まれる所があります。止め方と、勝手に動かないようにする手順は、社内のルールと機械の取扱説明書に従います。

STEP 2

見る。センサのランプと入力ランプ(⑤)、ゆるみ、検出面の汚れ、線の傷、となりのセンサ、うしろの物。

STEP 3

記録と照らし合わせる。症状と、そのとき動いていた機械・品種・時刻(③)から、4つの原因のどれを疑うか決める。

STEP 4

安全を確かめてから、手で試す。検出体を手でゆっくり近づけて、ON・OFF の距離を確かめる。疑う機械だけを動かして、再現するかを見る。

STEP 5

測る。必要なら、センサの電源電圧、すきま、信号の長さ(⑪)を測る。電気の測定は、測定器の使い方と社内のルールに従う。

STEP 6

1つずつ直して、効いたかを確かめる。一度に何か所も直すと、どれが原因だったかわからなくなる。

止める・見る・照らし合わせる・試す・測る・1つずつ直すの順番の図

直したつもりで再発する、よくある思い込み

ひとことで言うと症状が止まっても、原因が消えたとは限りません。

左の列に心当たりがあれば、右の列を先にやります

思い込み残る原因と、どうするか
センサを交換したら直った取り付けを触ったついでに、すきまやゆるみが変わっただけかもしれない。すきまを測って記録する
フィルタやタイマを長くしたら直ったノイズや振動は残っている。速さや品種が変わると見落としになる(⑪)
感度を上げたら入るようになったうしろの物や汚れにも反応しやすくなる。物がないときに OFF かを必ず確かめる
しばらく起きないから大丈夫条件(時刻・品種・動いている機械)がそろっていないだけかもしれない。記録を続ける

仕事で使うとき:誤動作を起こしにくくする設計のチェックリスト

ひとことで言うとノイズ・取り付け・検出体・設定の4つを、設計の段階で先につぶしておきます。
センサの誤動作を防ぐチェックリスト
  • □ センサの線を、動力線(モーター・インバータ・ヒーター)と別のダクト・配管にした
  • □ 電磁弁やマグネットスイッチなどのコイルにサージキラーを付けた
  • □ ノイズを出す機器の F.G. 端子を接地した
  • □ すきまは検出距離の7割の内側で、振れ幅を見込んでも応差をまたがない
  • □ 取り付け金具はゆるみ止めをし、すきまを図面に書いた
  • □ となりのセンサとの間隔を取扱説明書で確かめた(足りなければ干渉しない機種)
  • □ 検出体の材質・色・光沢・透明・大きさの変更を、品種ごとに確かめた
  • □ センサのうしろに、反応しやすい壁や台を置いていない
  • □ 日ざし・照明・湯気・切り粉が当たらない向きにした
  • □ 入力フィルタは、ノイズの長さと本物の信号の長さの間に収まる値にした

このうち、線のルートは設備を作るときに決めるのがいちばん楽です。誤動作が出てからダクトを入れ替えるのは大がかりになりやすいからです。

よくある質問

Q. センサが誤動作する原因は何ですか?

A. 主にノイズ・取り付け・検出体・設定の4つです。センサの故障とは限らないので、交換の前にまわりの条件を順に確かめます。

Q. センサの誤動作は最初に何を確かめればいいですか?

A. センサ本体のランプと PLC の入力ランプを見比べます。センサの側か、配線・入力の側かが分かれます。

Q. センサが物がないのに反応するのはなぜですか?

A. 検出面の汚れや切り粉、うしろの壁や台、ノイズ、外の光などが多い原因です。いつ起きるかを記録してしぼります。

Q. センサのチャタリングを止めるにはどうしますか?

A. すきまを検出距離の7割の内側に寄せ、振れ幅が応差をまたがないようにします。設定で隠すのは原因を直したあとです。

Q. センサの誤動作はフィルタで直せますか?

A. ノイズが本物の信号より十分短いときだけです。速い品物では本物も消えるので、ノイズの通り道を断つのが先です。

まとめ:センサの誤動作は「番犬のまわり」を順に疑う

POINT
  • 誤検出には「ないのに ON」と「あるのに OFF」とばたつきがある。センサの故障とは限らない
  • 直す前に、症状の形・ランプ・そのとき動いていた機械・品種・時刻を記録する
  • 最初にセンサのランプと入力ランプを見比べて、センサの側か配線・入力の側かを分ける
  • 原因はノイズ・取り付け・検出体・設定の4つ。症状と、いつ起きるかで順番を決める
  • ばたつきは、揺れが ON の線と OFF の線(応差)の両方をまたぐと起きる。すきまを7割の内側に
  • フィルタは「ノイズの長さ < フィルタ、フィルタ+1スキャン < 本物の長さ」のときだけ使える

センサの誤動作が直ったら、センサの信号を受ける PLC や、ノイズを出す側の機器の見方も確かめておきましょう。

S
シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

PLC・サーボ・インバーターを実務で扱ってきた電気・制御の設計者です。制御の記事は、選び方・設定の順番・止まったときの切り分けを、実務の判断のしかたから書いています。機械(材料・機械要素・図面)の記事は本職ではないため、JIS とメーカーの技術資料を調べてまとめ、出典を示しています。

タイトルとURLをコピーしました