熱電対の種類(K・J・T型)と選び方|補償導線と冷接点補償を図解

熱電対は温度の差を測る。炉に差しこんだ熱電対と2本の線と山のイラスト センサと駆動

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熱電対の K 型・J 型・T 型、どれを選べばいいのか?

迷ったら K 型です。−200〜+1200℃ くらいまで使え、工業用で最も普及しています。0℃ 付近から 350℃ くらいまでを細かく測るなら T 型。どの型も、計器と同じ種類の補償導線で、+と−を合わせて延ばします。

この記事では、熱電対を山頂とふもとの「標高差」しかわからない高度計にたとえて説明します。冷接点補償の計算と、補償導線のつなぎ間違いで何℃ずれるかの計算もあります。

出典

情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

熱電対とは?2本の金属線でできた温度計

ひとことで言うと種類の違う2本の金属線の先をくっつけただけの、電池のいらない温度センサです。
調べてまとめたこの記事の原理・種類・規格の節は、規格とメーカーの技術資料を調べてまとめました。選び方・切り分け・取り付けの節は、筆者の実務の判断のしかたから書いています(「実務の判断のコツ」の枠)。

熱電対(ねつでんつい)の中身は、とても単純です。種類の違う2本の金属線を用意し、片方の端どうしをくっつけます。くっつけた先を測りたい所に入れ、反対の端を温度計(計器)の端子につなぎます。

すると、先が熱くなるほど、2本の線のあいだに小さな電圧が生まれます。計器はこの電圧を測って、温度に直して表示します。電池も電源もいらず、電線のような形のまま、数百℃から千℃を超える所まで測れるのが強みです。

たとえると

熱電対は、山頂とふもとの高さの差だけがわかる高度計のようなものです。くっつけた先が山頂(測りたい所)、計器の端子がふもとの基地です。出てくる電圧は「山頂とふもとの差」に応じた大きさで、山頂そのものの高さは教えてくれません。この点が、熱電対を使ううえでいちばん大事なところなので、記事を通してこのたとえで説明します。

この3つの言葉が、このあと何度も出てきます

言葉意味たとえでは
測温接点(温接点)2本の線をくっつけた先。測りたい所に入れる山頂
基準接点(冷接点)計器の端子につながる根元の側ふもとの基地
熱起電力先と根元の温度の差で生まれる電圧。数 mV〜数十 mV山頂とふもとの高さの差
出典

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炉に差しこんだ熱電対の先から、2本の違う金属線が計器の端子までつながっているイラスト

どこで使われている?工場で見かける4つの場面

ひとことで言うと熱い所・狭い所・遠い所の温度を、電気の信号にして盤まで届けたい場面で使われます。

どれも、測った温度を温度調節器や PLC(機械の脳にあたる制御装置)へ送り、ヒーターを入り切りするのに使います

場面知りたいことなぜ熱電対か
熱処理や乾燥の炉炉の中が設定の温度になっているか数百℃〜千℃を超える所でも測れる
樹脂の成形機のヒーター・金型ヒーターの温度を一定に保ちたい細い線にでき、狭い穴にも差しこめる
はんだや油の槽液の温度が上がりすぎていないか液に直接差しこめる形(保護管・シース)がある
配管・タンク流れる液やガスの温度長い線で盤の温度調節器や PLC まで送れる
炉・成形機のヒーター・はんだや油の槽・配管で熱電対が使われる4つの場面のイラスト

なぜ電圧が出るの?温度の差で電子が「片寄る」

ひとことで言うと金属の中の電子は熱い側から冷たい側へ片寄ります。片寄り方は金属の種類で違うので、2種類をつなぐとその差が電圧になります。
調べてまとめたこの節は、筆者の実務の範囲の外です。規格とメーカーの技術資料を調べてまとめました。

金属の中には、自由に動ける電子がたくさんあります。1本の金属線の片方の端だけを温めると、熱い側の電子は元気に動き回り、冷たい側へ広がっていきます。その結果、冷たい側に電子が少し多く集まり、線の両端に小さな電圧が生まれます。

たとえると

満員の部屋の片側だけ暖房を強くすると、暑い側の人がそわそわと動いて、涼しい側へ少しずつ寄っていきます。人(電子)が片寄った分だけ、部屋の両側に「差」が生まれます。ここはざっくり言うと、の説明で、本当はもう少し複雑ですが、イメージとしてはこれで十分です。

ところが、1本の線だけでは、この電圧を取り出せません。計器をつなぐ線も同じように温度差の中を通るので、行きと帰りで電圧が打ち消し合ってしまうからです。

そこで、電子の片寄りやすさが違う2種類の金属を使います。同じ温度差でも、片方は大きく、片方は小さく片寄るので、2本の差が電圧として残ります。これを、1821年に見つけた人の名前からゼーベック効果と呼びます。キーエンスの解説にあるとおり、電圧の向きと大きさは2種類の金属の材質と、両端の温度差だけで決まります。

出典

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熱い側の電子が冷たい側へ片寄り、2種類の金属の差が電圧になるゼーベック効果の図

熱電対がわかるのは「差」だけ:山頂とふもとの標高差

ひとことで言うと熱電対の電圧は、先と根元の温度差の分しか出ません。根元が何℃かを別に知る必要があります。

K 型の熱電対を例に、根元を 0℃ に保ったとき、先の温度でどれくらいの電圧が出るかを見てみます。この値は規格の「規準熱起電力」として決められていて、ITS-90(国際的な温度の目盛り)にもとづく表があります。

値は NIST(アメリカ国立標準技術研究所)の ITS-90 熱電対データベースの表から。JIS C 1602 も同じ ITS-90 にもとづいています

先の温度(根元は 0℃)K 型の熱起電力ざっくり言うと
25℃1.000 mV部屋の温度でも 1 mV ほど出る
100℃4.096 mV1℃ あたり約 0.04 mV(40 µV)
200℃8.138 mV
500℃20.644 mV
1000℃41.276 mV千℃でも、乾電池(1.5 V)の 30 分の 1 ほど

1℃ あたりわずか 40 µV(マイクロボルト。1 mV の 1000 分の 1 の単位)ほどです。だから熱電対の信号は、ノイズ(よけいな電気の揺れ)の影響を受けやすく、配線のしかたに気をつけます。ノイズの通り道と対策はインバータのノイズ対策で説明しています。

たとえると

高度計が「山頂はふもとより 1,800 m 高い」と教えてくれても、ふもとの基地の標高がわからなければ、山頂の標高はわかりません。基地が海抜 0 m なら山頂は 1,800 m、基地が 500 m なら 2,300 m です。熱電対も同じで、根元(ふもと)が何℃かによって、同じ電圧でも先(山頂)の温度が変わります。

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熱電対がわかるのは山頂とふもとの標高差だけで、ふもとの標高が端子の温度にあたることを示すイラスト

冷接点補償:ふもとの標高を測って足し戻す

ひとことで言うと計器は、端子の温度を自分で測り、その温度の分の電圧を足して、先の温度を出しています。

昔の測り方では、根元を氷水に入れて 0℃ に保っていました。根元が 0℃ なら、出た電圧を表で温度に直すだけで済みます。キーエンスの解説では、根元を 0℃ に保つ方法を冷接点補償と呼んでいますが、測っているあいだずっと 0℃ に保つのは大変です。

そこで今の温度調節器や PLC の温度入力ユニットは、端子のそばに小さな温度センサを持っていて、端子の温度を測ります。そして「端子の温度を 0℃ から測ったら何 mV か」を計算し、測った電圧に足してから温度に直します。キーエンスの解説では、この方法を基準接点補償と呼んでいます。現場では、どちらもまとめて冷接点補償と呼ぶことが多いので、この記事でもそう呼びます。

たとえると

ふもとの基地に、基地の標高を測る機械を置いておき、高度計の「差」にその標高を足して山頂の標高を出す、というしくみです。基地の標高の測り方がずれていれば、そのずれがそのまま山頂の答えのずれになります。

動く図で確かめましょう。先の温度と、端子(ふもと)の温度を動かして、冷接点補償を入れたり切ったりしてください。

動かして確かめる

K 型の熱電対の先を炉に入れ、根元を計器の端子につないでいます。先の温度と端子の温度を動かし、冷接点補償を入れたり切ったりして、計器の表示がどう変わるかを見てください。

計器(温度調節器など) 200℃ 端子の温度センサ:25℃ を測っている 端子(ふもと) +側の金属 −側の金属 炉 先(山頂) 0℃ から測った「高さ」(mV) 先 E(T) – 端子 E(T₀) – 測れる V – 計器が使う – –

いまの様子:スライダーを動かすと、ここに説明が出ます。

動きは説明のための作り物です(温度は例。熱起電力は NIST の ITS-90 の表の 5℃ ごとの値の間を直線でつないだ近似です。実際の計器には、冷接点補償の誤差も加わります)。

見てほしいのは2つです。1つは、補償を切ると、表示が端子の温度の分だけ低く出ること。もう1つは、補償を入れると、端子の温度を変えても表示が変わらないことです。計器は、端子の温度の変化を自分で打ち消しているのです。

ただし、この補償にも精度の限りがあります。たとえばキーエンスの PLC の温度入力ユニット KV-TP40 の仕様では、冷接点補償の精度は ±1℃(熱電対入力のとき)です。熱電対そのものの誤差に、計器のこの誤差が加わります。

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K型で炉200℃・端子25℃のとき、測れる7.138mVに端子の1.000mVを足し戻して200℃になる冷接点補償の棒グラフ

計算してみよう:冷接点補償がないと何℃ずれる?

ひとことで言うと例では、炉が 200℃・端子が 25℃ のとき、補償なしでは約175℃ と 25℃ 低く出ます。端子の温度を読み違えると、その分ずれます。

ここで計算するのは、「計器の端子の温度が、表示にどれくらい効くか」を知るためです。これがわかると、表示がずれたときに、熱電対の故障なのか、端子のまわりの温度の問題なのかを見分けられます。

式の出どころ:「山頂の高さ − ふもとの高さ」

表の熱起電力は「根元が 0℃ のとき」の値です。0℃ からの高さを E(温度) と書くことにします。先が T、根元が T₀ のとき、出てくる電圧は「0℃ から先までの高さ」から「0℃ から根元までの高さ」を引いた差です。標高差と同じ引き算です。

測れる電圧 V = E(T) − E(T₀)

計器はこの V に E(T₀) を足し戻して E(T) を出し、表で T に直します。式を並べかえると E(T) = V + E(T₀) になる、というだけのことです。

どの項も mV なので、そのまま足し引きできます

記号意味単位どこから取るか
T先(測りたい所)の温度℃知りたい答え
T₀根元(計器の端子)の温度℃計器の中の温度センサが測る
E(温度)根元を 0℃ にしたときの熱起電力mV規準熱起電力の表(⑤)
V計器の端子で実際に測れる電圧mV計器が測る
計算例
計算例1:K 型・炉 200℃・端子 25℃(温度は例。熱起電力は NIST の表)
① 0℃ から先までの高さ
E(200℃) = 8.138 mV
② 0℃ から端子までの高さ
E(25℃) = 1.000 mV
③ 端子で測れる電圧(引き算)
V = 8.138 mV − 1.000 mV = 7.138 mV
④ 補償しないで、7.138 mV をそのまま表で温度に直す
7.138 mV → 約175℃
⑤ 補償する:端子の分を足し戻す
7.138 mV + 1.000 mV = 8.138 mV
⑥ 足し戻した電圧を表で温度に直す
8.138 mV → 200℃
補償がないと約175℃ と、端子の温度とほぼ同じ 25℃ だけ低く出る。補償すれば 200℃ と正しく出る

つまり、補償がない計器では、表示は「先と端子の温度差」に近い値になる、ということです。答えが 400℃ のように大きくずれたら、足すべき所で引いていないかを見直します。

計算例
計算例2:端子が 40℃ に温まっているのに、計器が 25℃ だと思っている場合(温度は例)
① 端子で測れる電圧
V = E(200℃) − E(40℃) = 8.138 mV − 1.612 mV = 6.526 mV
② 計器が足し戻す電圧(25℃ と思っている)
E(25℃) = 1.000 mV
③ 足した結果
6.526 mV + 1.000 mV = 7.526 mV
④ 表で温度に直す
7.526 mV → 約185℃
⑤ 本当の温度と比べる
200℃ − 185℃ = 約15℃ 低い
⑥ ずれと、端子の温度の読み違いを比べる
40℃ − 25℃ = 15℃ → ほぼ同じ
端子の温度を 15℃ 読み違えると、表示も約15℃ ずれる。ふもとの標高を読み違えた分が、山頂の答えのずれになる

計算例2のようなことは、計器の端子のすぐそばに熱を出す機器があって、端子台の場所によって温度がまだらになっているときに起こりえます。キーエンスの解説でも、接続部に温度差があると誤差が生じると注意しています。取り付けの注意は⑭で説明します。

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測れる電圧は先の電圧から端子の電圧を引いたもので、計器が端子の分を足し戻す式の組み立て図

K・J・T 型の違い:金属の組み合わせで得意な温度が変わる

ひとことで言うと工業用で最も普及しているのが K 型。J 型は 750℃ くらいまで、T 型は低い温度を細かく測るのが得意です。
調べてまとめたこの節は、筆者の実務の範囲の外です。規格とメーカーの技術資料を調べてまとめました。

熱電対の K・J・T などの記号は、どの2種類の金属を組み合わせたかを表します。組み合わせによって、使える温度の範囲と、1℃ あたりの電圧の大きさが変わります。キーエンスの解説をもとにまとめます。

測定範囲はキーエンスの解説の値です。実際に使える上限は、線の太さや保護管によって変わります(規格の「常用限度」)

記号+側の金属−側の金属測定範囲の目安特徴
Kニッケル・クロムが主の合金ニッケル・アルミニウムが主の合金−200〜+1200℃工業用で最も普及。直線に近く、熱や腐食に強い
J鉄銅・ニッケルが主の合金−40〜+750℃1℃ あたりの電圧が K より大きく、安価
T銅銅・ニッケルが主の合金−200〜+350℃低い温度の特性がよい
E・N(省略)(省略)E −200〜+900℃、N −200〜+1200℃E は1℃あたりの電圧が大きい。N は安価に高温を測れる
R・S・B白金とロジウムの合金白金などR 0〜+1100℃、S・B は +600℃ 以上高い温度用の貴金属の熱電対

100℃ のときの熱起電力を比べると、K 型 4.096 mV、J 型 5.269 mV、T 型 4.279 mV です(NIST の表)。同じ温度でも金属の組み合わせで電圧が違うので、計器の設定の種類と、つないだ熱電対の種類を必ず合わせます。K 型の熱電対を J 型の設定で読むと、正しい温度は出ません。

たとえると

高度計の目盛りが機種によって違う、と考えてください。同じ高さの差でも、K 型の目盛りと J 型の目盛りでは針の振れ方が違います。目盛りの読み方(計器の設定)を、つないだ機種に合わせないと、正しい高さは読めません。

出典

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K型・J型・T型の熱起電力と温度の関係を示したグラフ

熱電対の選び方:温度の範囲 → 精度 → 形の順で決める

ひとことで言うとまず測る温度の範囲で種類をしぼり、次に必要な精度、最後に差しこむ場所に合う形を決めます。

上から当てはまる行を探します。最後に、つなぐ計器がその種類に対応しているかを確かめます

測りたい温度・条件向いている種類理由
0〜1000℃ くらいの炉・ヒーター(ふつうの工業用)K 型範囲が広く、最も普及していて、計器もほぼ必ず対応している
750℃ までで、1℃ あたりの電圧を大きくしたいJ 型K より電圧が大きい。ただし範囲が狭い
0℃ 付近〜350℃ を細かく測りたいT 型低い温度の特性がよく、許容差の小さいクラスがある(⑩)
1000℃ を大きく超えるR・S・B 型(貴金属)高い温度でも使える
0〜数百℃ を、もっと細かく測温抵抗体も候補熱電対とは別の原理の温度センサ(別の記事で比べます)
迷ったらK 型つなぐ計器と補償導線を手に入れやすい
実務の判断のコツ

種類を選ぶときは、熱電対だけを見ずに「受ける計器が対応しているか」と「補償導線をその種類でそろえられるか」をいっしょに決めます。熱電対だけ珍しい種類にすると、計器の設定や予備品、補償導線までその種類でそろえる必要があり、交換のときに取り違えが起きやすくなるからです。特に理由がなければ、設備の中で種類をそろえる方を優先します。

形を選ぶ:細いほど速く、太いほど丈夫

熱電対には、むき出しの線のもの、金属の細い管に線を入れて粉で固めたもの(シース熱電対)、さらに太い保護管に入れたものがあります。細いものほど温度の変化にすばやく追いつきますが、折れやすく、高い温度では寿命が短くなります。太い保護管は丈夫なかわりに、温度が伝わるまで時間がかかります。

温度の範囲と精度から熱電対の種類を選び、形・計器・補償導線の順に決めるフロー

精度の決まり:許容差のクラスで「何℃までずれてよいか」が決まる

ひとことで言うと許容差は「±何℃」と「温度の何割」の大きいほう。K 型のクラス2は、500℃ なら ±3.75℃ までずれてよいことになります。
調べてまとめたこの節は、筆者の実務の範囲の外です。規格とメーカーの技術資料を調べてまとめました。

熱電対は、作るときの金属のわずかな違いで、同じ温度でも少しずつ電圧が違います。そこで規格では、表の電圧からどれくらいずれてよいかを許容差のクラスで決めています。JIS C 1602:2015 は、国際規格 IEC 60584-1:2013 を取り入れて作られた規格です。

|t| は測る温度(℃)の符号を取った値です。クラスごとに使える温度の範囲も決まっているので、使う温度がその範囲に入るかは、規格の本文とメーカーのカタログで確かめてください

種類クラス1クラス2
K・J±1.5℃ か ±0.004×|t| の大きいほう±2.5℃ か ±0.0075×|t| の大きいほう
T±0.5℃ か ±0.004×|t| の大きいほう±1.0℃ か ±0.0075×|t| の大きいほう

ここで計算するのは、「この熱電対で、この温度を測ると、最大で何℃ずれる可能性があるか」を知るためです。温度の管理の幅(例:±3℃ 以内に保ちたい)より誤差が大きいと、熱電対を変えるか、管理のしかたを見直す必要があります。

式の出どころ:「決まった幅」と「温度に比例する幅」の大きいほう

低い温度では「±2.5℃」のような決まった幅が、高い温度では「温度の 0.75%」のような温度に比例する幅が効くようにした決まりです。物理の法則ではなく、規格で決められた式です。

許容差 = 「決まった幅」と「係数 × |t|」の大きいほう

計算例
計算例3:K 型クラス2で 100℃ と 500℃、T 型クラス1で 100℃ を測ると(温度は例)
① K 型クラス2・100℃:温度に比例する幅
0.0075 × 100℃ = 0.75℃
② 決まった幅と比べて大きいほう
2.5℃ と 0.75℃ → 2.5℃ → 許容差 ±2.5℃
③ K 型クラス2・500℃:温度に比例する幅
0.0075 × 500℃ = 3.75℃
④ 決まった幅と比べて大きいほう
2.5℃ と 3.75℃ → 3.75℃ → 許容差 ±3.75℃
⑤ T 型クラス1・100℃:温度に比例する幅
0.004 × 100℃ = 0.4℃
⑥ 決まった幅と比べて大きいほう
0.5℃ と 0.4℃ → 0.5℃ → 許容差 ±0.5℃
100℃ を測るなら、K 型クラス2は ±2.5℃、T 型クラス1は ±0.5℃。高い温度ほど許容差は広がる

つまり、100℃ くらいを ±1℃ で管理したいなら、K 型クラス2では足りず、T 型クラス1を選ぶ理由になる、ということです。さらに計器そのものの誤差(冷接点補償の誤差など、⑥)も加わるので、管理の幅には余裕を見ます。

出典

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K・J型クラス1・2とT型クラス1の許容差が温度とともにどう変わるかのグラフ

補償導線:ふもとまで「同じ地図」でつなぐ線

ひとことで言うと熱電対の根元から計器まで延ばすときは、ふつうの銅の電線ではなく、熱電対と同じ性質を持つ補償導線を使います。
調べてまとめたこの節は、筆者の実務の範囲の外です。規格とメーカーの技術資料を調べてまとめました。

炉の熱電対から盤の中の計器までは、数メートルから数十メートル離れていることがよくあります。熱電対の線をそのまま長く延ばすと高くつくので、途中から補償導線に切り替えます。キーエンスの解説では、補償導線は 0〜60℃ の範囲で熱電対とほぼ同じ熱起電力の性質を持つ線とされています。

なぜ、ふつうの銅の電線ではいけないのでしょうか。炉のそばの端子箱(熱電対と線をつなぐ箱)は温かく、盤の中は室温です。この温度の差がある区間を銅線でつなぐと、その区間では電圧が生まれず、熱電対の「根元」が端子箱にあることになってしまいます。計器は盤の端子の温度で補償するので、端子箱と盤の温度の差の分だけ、表示がずれます。

たとえると

山頂からふもとの基地まで、高さの差を同じ地図で測り続けるのが補償導線です。途中の峠から先を、高さの書いていない地図(銅線)でつなぐと、峠から基地までの高さの差が消えてしまいます。基地では「山頂は基地より何 m 上」と計算するので、峠の高さの分だけ答えがずれます。

JIS C 1610:2012(熱電対用補償導線)は、国際規格 IEC 60584-3:2007 を取り入れた規格で、種類・許容差・使用区分・色の決まりがあります

気をつけることなぜか
熱電対と同じ種類の補償導線を使う種類が違うと、温度差の区間で出る電圧が合わない
+と−を合わせてつなぐ逆にすると、温度差の区間の電圧が逆向きに入る(⑫)
色だけで判断しない被覆の色の決まりは規格の版で2つの系統が使われてきた。記号と+−の表示で確かめる
つなぎ目どうしを同じ温度にするつなぎ目に温度差があると誤差になる(キーエンス)
出典

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炉のそばの温かい端子箱から盤の計器まで補償導線でつなぐ道筋のイラスト

計算してみよう:補償導線を銅線にしたら?+と−を逆にしたら?

ひとことで言うと例では、炉 200℃・端子箱 60℃・盤 25℃ で、銅線なら約164℃、+と−を逆にすると約128℃ と出ます。

ここで計算するのは、つなぎ間違いが「どれくらいのずれ」になって表れるかを知るためです。ずれの大きさの見当がつくと、表示を見て原因を当てやすくなります。

式の出どころ:区間ごとの「高さの差」を足し合わせる

熱電対の電圧は、温度差のある区間ごとに生まれ、それを足し合わせたものが計器に届きます。正しい補償導線なら、熱電対の区間(200℃→60℃)と補償導線の区間(60℃→25℃)が同じ向きにつながり、合計は 200℃→25℃ の差になります。

届く電圧 = 熱電対の区間 + 補償導線の区間

熱電対の区間は、どの場合も E(200℃) − E(60℃) です

つなぎ方補償導線の区間の電圧たとえでは
正しい補償導線+(E(60℃) − E(25℃))峠から基地まで同じ地図
ふつうの銅線0(電圧が生まれない)峠から先は高さのない地図
補償導線の+と−が逆−(E(60℃) − E(25℃))峠から先で、上りと下りを逆に読む
計算例
計算例4:K 型・炉 200℃・端子箱 60℃・盤の端子 25℃(温度は例。計器は 25℃ で補償する)
① 熱電対の区間
E(200℃) − E(60℃) = 8.138 − 2.436 = 5.702 mV
② 補償導線の区間(正しいとき)
E(60℃) − E(25℃) = 2.436 − 1.000 = 1.436 mV
③ 正しいとき:合計に補償の 1.000 mV を足す
5.702 + 1.436 + 1.000 = 8.138 mV → 200℃
④ 銅線のとき:補償導線の区間は 0
5.702 + 0 + 1.000 = 6.702 mV → 約164℃
⑤ +と−が逆のとき:補償導線の区間が引き算になる
5.702 − 1.436 + 1.000 = 5.266 mV → 約128℃
⑥ ずれを、端子箱と盤の温度差(60 − 25 = 35℃)と比べる
銅線は約36℃ 低い(差の1倍)、逆は約72℃ 低い(差の約2倍)
正しくつなげば 200℃。銅線なら端子箱と盤の温度差の分、+−逆ならその約2倍だけ低く出る

つまり、表示のずれが「端子箱と盤の温度差」の1倍か2倍くらいなら、途中の配線を疑う手がかりになる、ということです。ここはざっくり言うと、の目安で、熱起電力は温度に正確に比例するわけではないので、ぴったり1倍・2倍にはなりません。

動く図で、つなぎ方を選んで端子箱の温度を動かしてみてください。

動かして確かめる

炉は 200℃、盤の計器の端子は 25℃(計器は 25℃ で冷接点補償をしています)。炉のそばの端子箱から盤までのつなぎ方を選び、端子箱の温度を動かして、表示がどう変わるかを見てください。

盤の計器(25℃) 200℃ 25℃ の分を足し戻す 補償導線(25℃ → 端子箱) 端子箱 60℃ 炉 200℃ 計器に届く電圧の足し算(mV) 0 熱電対の区間 – 補償導線の区間 – 計器の足し戻し – 合計 – 正しい合計 8.138

いまの様子:つなぎ方を選ぶと、ここに説明が出ます。

動きは説明のための作り物です(温度は例。熱起電力は NIST の ITS-90 の表の 5℃ ごとの値の間を直線でつないだ近似です。補償導線は熱電対と同じ性質として計算しています)。

見てほしいのは、正しいつなぎ方なら端子箱の温度を変えても表示が 200℃ のままなのに、銅線や逆のつなぎ方では、端子箱が温まるほど表示がずれていくことです。炉の扉を開けた・季節が変わったなど、端子箱の温度が変わるときだけ表示が動くなら、このつなぎ間違いを疑います。

出典

情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

正しい補償導線・銅線・プラスマイナス逆のときの電圧の足し算と、200℃・164℃・128℃の読みの比べ

表示がおかしいときの切り分け:どこから疑う?

ひとことで言うと「どれくらい・どんなときにずれるか」で、熱電対・配線・計器のどこを見るかが決まります。

上の行から順に確かめます。端子に触る作業は、計器と盤の電源を切ってから行います

症状・いつ出るかまず疑う原因確かめる場所・測るもの直し方
表示が室温に近いまま、炉を温めても上がらない計器の種類の設定違い、熱電対の先が測りたい所に届いていない計器の熱電対の種類の設定、差しこみの深さ設定を合わせる。差しこみを直す
表示が最大や「断線」になる熱電対や補償導線が切れている、端子がゆるんでいる電源を切って端子を外し、テスターで線がつながっているか切れた所を直す・交換
いつも一定の量だけ低い(高い)計器の種類の設定違い、補償導線の種類違い、銅線の混入設定と補償導線の記号。途中の中継端子種類をそろえる
端子箱が温まるほど低く出る補償導線の+−が逆、途中が銅線途中のつなぎ目ごとに+−と線の種類+−を合わせる・補償導線にする(⑫)
温度を上げると、表示が逆に下がる熱電対そのものの+−が逆計器の端子の+−+−を合わせる
表示がふらつく・跳ぶノイズ、端子のゆるみ動力線との並び、端子の締め付け線を離す・締め直す
盤の扉を開けると表示が変わる計器の端子のまわりの温度のむら端子のそばの熱源、風の当たり方端子台を熱源から離す(⑭)
実務の判断のコツ

表示がずれたときは、熱電対を交換する前に「ずれは一定か、何かといっしょに動くか」を先に見ます。いつも同じだけずれるなら設定や種類の違い、端子箱や盤の温度といっしょに動くなら途中の配線や端子のまわりを疑います。熱電対を替えて直らないと、手間も部品も無駄になるからです。新しい熱電対を同じ所に差して比べられるなら、それがいちばん確かな確かめ方です。

PLC の温度入力ユニットで読んでいて、入力そのものが入らない・エラーになる場合は、PLCのエラーで止まったときの切り分けの「入力」の段の考え方も使えます。

取り付けの注意:深く差す・熱源から端子を離す

ひとことで言うと先を測りたい所に十分深く差し、計器の端子のまわりの温度をそろえます。

キーエンスの解説の注意と、ここまでの計算をまとめました

注意することなぜかどうするか
差しこみが浅い保護管を伝って熱が逃げ、先の温度が測りたい所より低くなる測りたい所まで深く差す。差しこみの長さはメーカーの資料で確かめる
計器の端子のそばに熱源端子の温度がまだらになり、補償がずれる(⑦の計算例2)ヒーターの電源や大きな電源装置から端子台を離す
熱電対の線と動力線を並べるmV の小さな信号にノイズが乗る別のダクトや配管に分ける
線が長すぎる計器の入力が許す線の抵抗を超えると、正しく測れない計器の仕様の上限を確かめる(キーエンス)
実務の判断のコツ

盤の中で熱電対をつなぐ端子台は、ヒーター用の電源や大きな電源装置から離し、扉を開けたときに風が直接当たらない場所に置きます。端子のまわりの温度がまだらだと、計器の冷接点補償が正しく働かず、「扉を開けると表示が変わる」ような原因のわかりにくいずれになるからです。

出典

情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

熱電対を流れの中まで深く差すことと、盤の端子台を熱源から離すことを示すイラスト

仕事で使うとき:熱電対の選定と配線のチェックリスト

ひとことで言うと温度の範囲 → 精度 → 形 → 計器の設定 → 補償導線 → 取り付け、の順に確かめます。
熱電対の選定と配線のチェックリスト
  • □ 測る温度の範囲(ふだんと最高)を確かめ、種類を決めた(迷ったら K 型)
  • □ 管理したい温度の幅と、許容差(クラス)+計器の誤差を比べた
  • □ 差しこむ場所の深さ・太さ・応答の速さに合う形(シース・保護管)を選んだ
  • □ 受ける計器(温度調節器・PLC の温度入力)が、その種類に対応している
  • □ 計器の熱電対の種類の設定を、つなぐ熱電対と合わせた
  • □ 延ばす区間は、同じ種類の補償導線を使った(銅線を混ぜていない)
  • □ 途中のつなぎ目ごとに+と−を確かめた(色だけで判断していない)
  • □ 熱電対の線を動力線から離した
  • □ 計器の端子台を熱源から離し、まわりの温度をそろえた
  • □ 取り付けたら、別の温度計や新しい熱電対と比べて、読みを確かめた
おすすめの道具

取り付けたあと、別の温度計で読みを比べるときの、K 型の熱電対をつなぐ温度計の例です。カスタムのデジタル温度計 CT-1310D は、販売ページの表示では、K 型の熱電対のセンサー(別売)をつないで −50〜+1300℃ を測る温度計で、精度は ±(0.3%rdg+1℃)(−50〜+1000℃)です。温度計にも誤差があるので、比べるときはこの幅も足して見てください。

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よくある質問

Q. 熱電対とは何ですか?

A. 種類の違う2本の金属線の先をつないだ温度センサです。先と根元の温度差に応じた小さな電圧が出て、計器が温度に直します。

Q. 熱電対の K 型と J 型と T 型の違いは何ですか?

A. 金属の組み合わせが違います。K 型は範囲が広く最も普及、J 型は 750℃ くらいまで、T 型は低い温度を細かく測るのが得意です。

Q. 熱電対の冷接点補償とは何ですか?

A. 計器が端子の温度を測り、その分の電圧を足し戻すことです。熱電対は温度差しかわからないので、根元の温度を補います。

Q. 熱電対の補償導線はふつうの電線で代用できますか?

A. できません。温度差のある区間を銅線で延ばすと、その区間の電圧が消え、端子箱と盤の温度差の分だけ低く出ます。

Q. 熱電対の補償導線の+と−を逆につなぐとどうなりますか?

A. 途中の区間の電圧が逆向きに入り、表示が低くずれます。ずれは端子箱と盤の温度差の約2倍が目安です。

まとめ:熱電対は「標高差」を測る。ふもとの温度と、途中の道に気をつける

POINT
  • 熱電対は、種類の違う2本の金属線をつないだ温度センサ。出る電圧は、先と根元の温度差で決まる(ゼーベック効果)
  • わかるのは差だけ。計器が端子の温度を測って足し戻す(冷接点補償)。端子の温度を読み違えた分だけ、表示がずれる
  • 種類は温度の範囲で選ぶ。迷ったら K 型、0〜350℃ を細かくなら T 型。計器の設定と種類を必ず合わせる
  • 許容差は「決まった幅」と「係数×温度」の大きいほう。K 型クラス2は 500℃ で ±3.75℃
  • 延ばすときは同じ種類の補償導線で、+と−を合わせる。銅線なら温度差の分、+−逆ならその約2倍ずれる
  • 表示がおかしいときは、ずれが一定か、何かといっしょに動くかを先に見る

熱電対の信号は、温度調節器や PLC が受け取ります。受け取る側の切り分けや、ノイズの対策もあわせて確かめておきましょう。

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シラス
電験三種・QC検定1級 / メーカーでパワエレ設計・品質保証 実務10年

PLC・サーボ・インバーターを実務で扱ってきた電気・制御の設計者です。制御の記事は、選び方・設定の順番・止まったときの切り分けを、実務の判断のしかたから書いています。機械(材料・機械要素・図面)の記事は本職ではないため、JIS とメーカーの技術資料を調べてまとめ、出典を示しています。

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