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制御盤とは、工場の機械を動かす電気の機器(ブレーカー・PLC・インバーター・電磁接触器・電源・端子台など)を、1つの鉄の箱にまとめたものです。
中には、モーターを回す大きな電気(動力)と、知らせを運ぶ小さな電気(制御・信号)の2種類が流れています。作るときは、仕様書 → 回路設計 → 部品選定 → 盤図 → 製作・配線 → 検査 → 試運転の順に進めます。
この記事では、制御盤を機械の脳と神経がまとまった部屋にたとえて、最後までその話で説明します。盤の中が熱くなりすぎないかの計算もあります。
- 制御盤の定義・組み込む機器:パナソニックの電気設備の用語辞典
- 機械の電気装置の規格:JIS B 9960-1:2019(IEC 60204-1:2016 に一致)
- パナソニック 電気設備の用語辞典「制御盤とは」(定義・動力設備と制御設備・組み込む機器・JEM 規格)
情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。
制御盤とは何か:機械の「脳と神経」がまとまった部屋
工場の機械は、モーターで動き、センサで物を見て、押しボタンで人の指示を受けます。でも、モーターやセンサだけでは動きません。知らせを受け取り、考え、モーターに電気を送る役が必要です。その役の機器をまとめて入れた箱が制御盤です。
人の体を思い浮かべてください。目や耳で見聞きしたことは、神経を通って脳に届きます。脳は「どう動くか」を決め、神経を通して筋肉に命令し、筋肉が力を出して手足が動きます。制御盤は、機械にとっての脳と神経がまとまった部屋です。頭の骨が脳を守るように、鉄の箱が中の機器をほこりや水、人の手から守っています。
この記事に出てくるたとえと、本物の対応です。わからなくなったら、この表に戻ってください
| 人の体のたとえ | 制御盤と機械では |
|---|---|
| 目・耳 | 押しボタン・センサ(機械の側にある) |
| 脳 | PLC(プログラムで考える機器) |
| 神経 | 配線(盤と機械をつなぐ線) |
| 筋肉に力を送る係 | インバータ・電磁接触器・サーボアンプ |
| 手足 | モーター・電磁弁(機械の側にある) |
| 頭の骨 | 盤の箱(扉つきの鉄の箱) |
機械の電気装置には、JIS B 9960-1(国際規格 IEC 60204-1 と同じ内容)という規格があり、盤もその決まりの中で作られます。この記事では規格の中身には入らず、まず「何が入っていて、どう流れるか」をつかみます。

盤の中をのぞく:入っている機器と役割
扉を開けた盤の中を、上から順に見ていきます。メーカーの用語の解説でも、制御盤に組み込む機器として、ブレーカー・スイッチング電源・電磁リレー・電磁接触器・インバーター・端子台・押しボタン・表示灯・電流計や電圧計などが挙げられ、ブレーカーと端子台はほぼすべての盤に入るとされています。
左から、機器の名前・やること・たとえ・選ぶときに決めることです。右の列が、このあと部品を選ぶときの入口になります
| 機器 | やること | 体のたとえ | 選ぶときに決めること |
|---|---|---|---|
| 主幹ブレーカー(配線用遮断器) | 盤全体の電気の入口。電気が流れすぎたら切る | 部屋の入口の見張り番 | 電流の大きさと、止められる勢い(遮断容量) |
| 分岐のブレーカー | モーター1台・電源1台ごとに分けて守る | 部屋ごとの見張り番 | その先の機器の電流 |
| DC24V 電源 | 工場の電気から、PLC やセンサ用の弱い電気をつくる | 神経に流す弱い電気をつくる係 | つながる機器の電流の合計 |
| PLC | 知らせを受け取り、プログラムどおりに指示を出す | 脳 | 入力と出力の数(点数) |
| 電磁接触器・リレー | 指示を受けて、モーターなどの電気を入れたり切ったりする | 筋肉へのスイッチ | モーターの電流と使い方 |
| インバータ・サーボアンプ | モーターの速さや位置を変えながら電気を送る | 筋肉の力を加減する係 | モーターの電流と負荷の重さ |
| 端子台 | 盤の外(機械)へ出る線をまとめてつなぐ | 神経の中継所 | 線の太さと本数 |
扉の表には、押しボタンや表示灯、電流計・電圧計(メーター)がつくこともあります。メーターは、モーターにどれくらい電流が流れているかを、扉を開けずに見るためのものです。
盤の中の「脳」PLC。しくみとスキャンをコックのたとえで

盤の中の電気は2種類:動力と制御
メーカーの解説でも、盤の中の設備は動力設備と制御設備の2つに分けて考えるとされています。この2つの違いがわかると、盤の中の線の見え方が変わります。
同じ「電気」でも、役割で大きさと通り道が違います。電圧は工場や機械で違う例です
| 動力(力の電気) | 制御(知らせの電気) | |
|---|---|---|
| 何に使う | モーター・ヒーターなど、力や熱を出すもの | PLC・センサ・ボタン・ランプ・リレーのコイル |
| 電気の種類の例 | 工場の交流 200V・400V | DC24V(直流)がよく使われる |
| 線の太さ | 太い(大きな電流が流れる) | 細い(小さな電流で足りる) |
| 通る機器 | ブレーカー → 電磁接触器・インバータ → モーター | DC24V 電源 → PLC → 入力と出力 |
| 体のたとえ | 筋肉を動かす血の流れ | 神経を走る信号 |
脳からの命令(神経の信号)は小さな電気ですが、筋肉が出す力は大きいですよね。命令をそのまま筋肉の力にするのではなく、小さな命令で、大きな力の流れを開け閉めするしくみになっています。盤でも、PLC の小さな「回れ」という信号で、電磁接触器やインバータが大きな電気をモーターへ送ります。
ここまでの話を、動く図で確かめましょう。主幹ブレーカーを入れてから、起動ボタンでモーターが回るまでの順番と、最後に主幹を切ったときに何が残るかに注目してください。
動かして確かめる
ボタンを1から順に押してください。オレンジの点がモーターを回す大きな電気(動力)、緑の点がPLC を動かす DC24V の電気、青緑の点が「動け」の知らせ(信号)です。最後に主幹ブレーカーを切ると、何が止まり、何が残るかを見てください。
いまの様子:電気はまだ来ていません。「1 主幹を入れる」を押してください。
動きは説明のための作り物です。本物の盤では、DC24V 電源の手前にも小さなブレーカーが入るなど、もう少し部品があります。充電ランプが消えるまでの時間も、実際は機種の取扱説明書に書かれた時間(数分以上)です。
見てほしいのは2つです。1つは、ボタンの「押された」という小さな知らせが PLC を通り、インバータへの「回れ」になって初めてモーターが回ること。もう1つは、主幹を切っても、インバータの充電ランプがしばらく消えないことです。この意味は、⑬の止め方の節で説明します。

盤の形と仲間:壁掛け・自立・操作盤
制御盤は、壁や機械の側面にかける壁掛けの箱と、床に立てる自立盤があり、屋内にも屋外にも置かれます。機器が多くなるほど大きな箱になり、何面も並べることもあります。
部屋にたとえると、壁掛けの盤はワンルーム、自立盤は何部屋もある家です。住む人(機器)の数で、部屋の大きさを決めます。
押しボタンや表示灯だけを入れて、人が操作しやすい場所に置く小さな箱を操作盤と呼びます。脳の部屋(制御盤)とは別に、手元に置く「リモコン」のようなものです。モーターの電気を入れたり切ったりする機器を中心にまとめた盤を、動力盤と呼ぶこともあります。
ビルや工場の建物の照明・コンセントに電気を配る分電盤・配電盤は、機械を動かす制御盤とは目的が違います。分電盤の中身と配電盤との違いは、同じ筆者が運営する電気のブログ shirasusolo.net の分電盤とはで図解しています。

制御盤ができるまで:設計の流れは7段
盤を作る流れは、家を建てる流れによく似ています。いきなり材料を買う人はいませんよね。まず「どんな家に住みたいか」を決め、設計図を描き、材料を選び、間取りを決めてから建てます。
仕様書:何を動かし、どう操作し、どこに置くかを決める(⑦)
回路設計:電気のつなぎ方を図にする。シーケンス図・単線結線図(⑧)
部品選定:図に描いた機器の大きさと種類を決める(⑨)
盤図(外形図・配置図):箱の大きさと、中の機器の並びを決める。熱もここで確かめる(⑩)
製作・配線:機器を取り付け、線をつなぐ(⑫)
検査:図面どおりか、絶縁や動きに問題がないかを確かめる(⑫)
据え付け・試運転:機械の横に置き、機械とつないで実際に動かす(⑫)
盤づくりを家づくりにたとえると、仕様書=住みたい家の希望、回路設計=配線図、部品選定=材料選び、盤図=間取り図、製作=工事、検査=完成検査、試運転=引っ越して住んでみる、です。前の段で決めたことが、次の段の材料になります。
つまり、前の段が決まらないと次の段に進めないのが盤の設計です。次の節から、段ごとに「何を決めるか」を見ていきます。

段1 仕様書:最初に決める6つのこと
仕様書は「この盤で何をしたいか」を書いた紙です。ここがあいまいだと、あとの段でやり直しが出ます。最初に決めることは、次の6つにまとめられます。
- □ 電源:工場から来る電気の電圧・相(三相か単相か)・周波数
- □ 動かす機器:モーターの台数・大きさ(kW)・速さを変えるか(インバータやサーボが要るか)
- □ 操作:押しボタン・切り替えスイッチ・タッチパネルのどれで操作するか、どこに置くか
- □ 止め方:非常停止で何を止めるか、異常のときどう知らせるか
- □ 置く場所:屋内か屋外か、温度・ほこり・水・振動、盤を置ける広さ
- □ 決まり:海外へ出す機械か、お客様の社内の決まり(色・銘板など)があるか
盤の色や銘板(名前の札)には、日本電機工業会(JEM)の規格がよく使われます。お客様ごとに「この色で」「この部品のメーカーで」という決まりがあることも多いので、仕様書の段で聞いておきます。
仕様書の段で後回しにしがちで、あとから一番効いてくるのは「止め方」と「置く場所」です。非常停止で何を止めるかが決まらないと、回路も部品も決まりませんし、置く場所の温度やほこりがわからないと、箱の大きさと冷やし方が決まりません。動かす機器の数より先に、この2つを聞いておくと、あとのやり直しが減ります。

段2 回路設計:電気のつなぎ方を図にする
次に、電気のつなぎ方を図にします。盤の図面には、大きく分けて2種類があります。
同じ盤を、動力の目と制御の目の2枚で描き分けます
| 図面 | 何を描くか | 体のたとえ |
|---|---|---|
| 単線結線図 | 動力の電気が、電源からブレーカー・電磁接触器・インバータを通ってモーターへ分かれる道筋を、線1本で簡単に描く | 血の流れの全体図 |
| シーケンス図(展開接続図) | ボタン・リレー・PLC の入出力など、制御の電気が「どの順に、何の条件で」流れるかを描く | 神経の信号の道筋 |
図に使う記号は、電気用図記号の規格(JIS C 0617)に寄せて描くのが一般的です。単線結線図は「大きな電気がどう分かれるか」をひと目で見るための図で、ブレーカーを選ぶときにも使います。
制御の電気の道筋を描くシーケンス図。記号と読み方を練習問題で

段3 部品選定:図に描いた機器の大きさを決める
回路図に描いた機器を、1つずつ具体的に選びます。選ぶときの考え方は、どの部品でも「その先に何がつながり、どれくらいの電気が流れるか」から出発します。
部品ごとに、選ぶ手がかりと、まちがえたときに起きることです。どれも「流れる電気の量」から始まります
| 部品 | 何から選ぶか | まちがえるとどうなるか |
|---|---|---|
| 配線用遮断器(ブレーカー) | その先の機器の電流と電線の太さ、電源の大きさから決まる短絡電流 | ふつうに使っているのに切れる/事故のときに止めきれない |
| DC24V 電源 | PLC・センサ・リレーなど、つながる機器の電流の合計と、入れた瞬間の電流 | 電圧が下がって PLC やセンサがおかしくなる |
| 電磁接触器 | モーターの電流と、入れ切りの回数 | 接点が早く傷む |
| インバータ・サーボ | モーターの電流と、負荷の重さ・加速の速さ | 途中で止まる(トリップ・アラーム) |
| 電線 | 流れる電流と長さ・まわりの温度 | 線が熱くなる |
| 端子台 | 電線の太さと本数、振動 | 線がゆるむ・抜ける |
電線の太さの決め方は、同じ筆者が運営する電気のブログ shirasusolo.net の電線の太さの選び方で、許容電流と電圧降下の計算から説明しています。
部品を選ぶときに迷ったら、「今ぴったり」より「あとで1つ足せるか」で決めます。試運転のあとに、センサやランプ、モーター1台が増えることは珍しくありません。そのとき困るのは、部品そのものより、盤の中の取り付ける場所と、端子台・電源・ブレーカーの空きがないことです。部品を選ぶ段で、空きの場所と予備の端子を図面に入れておくと、あとで箱ごと作り直さずに済みます。
盤の中でいちばん大きな部品のひとつ、インバータ。kW より電流で選ぶ理由
段4 盤図:箱の大きさと並びを決め、熱を確かめる
部品が決まったら、外形図(箱の大きさ・扉・穴の位置)と配置図(中の機器の並び)を描きます。ここで大事なのが熱です。インバータや電源は、使っているあいだ電気の一部が熱になり、箱の中の空気を温めます。
閉めきった部屋に人がたくさん入ると、部屋が暑くなりますよね。熱は壁や天井から少しずつ外へ逃げますが、入る人(発熱)が多すぎたり、部屋(箱)が小さすぎたりすると、逃げきれずに暑くなります。人が汗や呼吸で熱を逃がすように、盤にもファンや冷房をつけることがあります。
では、何のために計算するのでしょうか。盤の中の機器には、それぞれ使ってよい周りの温度の上限があるからです。たとえば、あるメーカーのインバータの取扱説明書では、周りの温度は −20〜+60℃で、50℃を超えるときは流せる電流を下げて使うと決められています。盤の中が何℃になりそうかを先に知っておけば、箱の大きさや冷やし方を図面の段で決められます。
式の出どころ:熱は「面積」と「温度差」に比例して逃げる
箱の中で生まれた熱は、鉄板を通って外へ逃げます。逃げる量は、次の2つで決まります。
- 面積が広いほどたくさん逃げる(窓が多い部屋ほど涼しくなりやすい)
- 中と外の温度差が大きいほどたくさん逃げる(熱いお茶ほど早く冷める)
この2つを掛け、さらに「その板がどれくらい熱を通しやすいか」の数を掛けたものが、逃げる熱の量です。
逃げる熱 P = U × S × ΔT
単位を掛け合わせると W/(m²·K) × m² × K = W となり、左辺の P と同じ単位になります
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| P | 1秒あたりに逃げる熱の量(=電気の発熱と同じ単位) | W(ワット) |
| U | 熱通過率。板1m²・温度差1℃あたり、何Wの熱が通るか | W/(m²·K) |
| S | 熱が逃げる面の面積 | m²(平方メートル) |
| ΔT | 箱の中と外の温度差(K は温度差の単位で、1K=1℃の差) | K(ケルビン) |
盤用の冷却器のメーカーの技術資料では、厚さ2mm の鉄板の箱の U を、外と中の空気から鉄板への熱の伝わりやすさの代表値から計算し、約5.5 W/(m²·K)としています。
箱の中の温度が落ち着くのは、中で生まれる熱 = 外へ逃げる熱になったときです。お風呂のお湯を入れながら栓を少し抜くと、入る量と出る量がつり合うところで水位が止まるのと同じです。だから、式を ΔT について解くと、盤の中が外より何℃高くなるかが出ます。
ΔT = P ÷ (U × S)
幅 0.6 m × 高さ 0.8 m × 奥行き 0.4 m
0.6 × 0.4 = 0.24 m²
0.6 × 0.8 = 0.48 m²
0.4 × 0.8 × 2 = 0.64 m²
S = 0.24 + 0.48 + 0.64 = 1.36 m²
P = 48 + 30 = 78 W
5.5 × 1.36 = 7.48 W/K
ΔT = 78 ÷ 7.48 = 10.4 K
35 + 10.4 = 45.4 ℃
S = 1.36 m²、U × S = 7.48 W/K
P = 153 + 30 = 183 W
ΔT = 183 ÷ 7.48 = 24.5 K
35 + 24.5 = 59.5 ℃
S = P ÷ (U × ΔT) = 183 ÷ (5.5 × 15) = 2.22 m²
答えの意味を確かめておきます。インバータを大きくしただけで、同じ箱の中が約14℃も熱くなりました。発熱が2倍強になれば、温度差もほぼ2倍強になるのが、この式の意味です。桁の感覚としては「1m² あたり 5.5W 逃げて1℃」と覚えておくと、ざっくりの見当がつきます。
ただし、これは箱の中の温度を1つの値とみなした、ざっくりの計算です。本物の盤では熱い空気が上にたまるので、上のほうはもっと熱くなります。発熱の値は「定格の電流で運転したとき」の値なので、軽い負荷ならもっと小さくなります。ファンや冷房の選び方は、盤の熱対策の記事であらためて説明します。
- 箱の熱通過率 約5.5 W/(m²·K)・熱の出入りの式 P=U×S×ΔT:オーム電機の盤用冷却器の技術資料
- インバータの発熱量(0.75kW 48W・3.7kW 153W、定格電流・220V・キャリア 2kHz の条件)と周囲温度:三菱電機 FR-E800 の取扱説明書(英語版)
- オーム電機 技術資料「BOX COOL 機種選定方法」(鉄板の箱の熱通過率 約5.5 W/(m²·K)・熱の出入りの式)
- 三菱電機 FR-E800 Instruction Manual (Connection) IB-0600865ENG-C(発熱量・周囲温度・電源を切ったあとの待ち時間)
情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

計算の流れを1枚で
例1と例2の計算の流れと答えを、1枚の図にまとめます。発熱と面積から温度差を出し、外の温度を足して、機器の上限と比べる、の順です。

段5〜7 製作・配線、検査、据え付け・試運転
図面ができたら、いよいよ組み立てです。製作では、箱の中の板(取り付け板)に機器を取り付け、線をつなぎます。線は配線ダクトという通り道にまとめて通し、1本ずつ両端に番号の印をつけます。盤の外の機械へ行く線は、端子台を通して出します。
線を通り道にそろえて番号をつけるのは、神経をきちんと束ねて名札をつけるようなものです。あとで「どの線がどこへ行っているか」を、図面と見比べてすぐにたどれます。
インバータのように熱を出す機器は、取扱説明書で決められたすきま(ある機種では上下に10cm 以上)をあけて取り付けます。動力の太い線と、センサなどの細い信号の線は、ノイズを避けるために離して通すのが基本です。
組み上がったら、図面どおりに配線されているか、絶縁に問題がないか、ボタンを押して思った順に動くかを確かめる検査をします。検査の項目と手順はこの記事では深入りせず、別の記事で調べてまとめます。
最後に、盤を機械の横に置いて機械とつなぎ、実際に動かして確かめます(試運転)。モーターの回る向き、センサが物を見つけるか、非常停止で止まるかを、1つずつ確かめていきます。

設計の流れのうち、組立・配線・接地の決まりをくわしく知りたいときの本の例です。オーム社の『図解 制御盤の設計と製作』(佐藤一郎 著・2022年9月発行)は、制御盤の組立に関する決まり、器具の取付け、盤内の配線方法と手順、接地、組立に使う工具までを扱う本です(楽天ブックスの目次)。
盤の中で作業するときの止め方
盤の中には、触ると感電する電気が流れています。配線を直す・部品を替えるなど、盤の中で作業するときは、次の順番で電気を止めます。
主幹ブレーカーを切る:盤全体の電気の入口を切ります。ほかの盤や電源から電気が来ていないかも、図面で確かめます。
ほかの人が入れられないようにする:ブレーカーのハンドルに錠をかけ、「作業中」の札をつけます。
待つ:インバータやサーボアンプは、中のコンデンサ(電気をためる部品)に高い電圧が残ります。取扱説明書に書かれた時間だけ待ちます。
テスターで確かめる:作業する場所の電圧が下がっていることを、テスターなどで測って確かめてから手を入れます。
④の動く図で、主幹を切っても充電ランプがしばらく消えなかったのを思い出してください。水道の元栓を閉めても、ホースの中にはしばらく水が残っています。インバータの中のコンデンサも、電気をためた水たまりのようなもので、元栓(主幹)を閉めてもすぐには空になりません。
たとえば、あるメーカーのインバータの取扱説明書では、配線や点検の前に電源を切ってから10分以上待ち、テスターなどで電圧が残っていないことを確かめるよう書かれています。待つ時間は機種で違うので、必ずお使いの機種の取扱説明書で確かめてください。
盤の扉を開けての作業をしてよいか、誰がしてよいかは、法令と社内の決まりに従います。電気の作業には、法令で決まった教育が必要になる場合もあります。
- 電源を切ってから10分以上待ち、テスターで残った電圧がないことを確かめる:三菱電機 FR-E800 の取扱説明書(英語版)の安全の注意
- 三菱電機 FR-E800 Instruction Manual (Connection) IB-0600865ENG-C(発熱量・周囲温度・電源を切ったあとの待ち時間)
情報の確認時点:2026年10月。機種ごとの値は、お使いの機種の取扱説明書で確かめてください。

STEP 4 で、電圧が残っていないことを確かめるテスターの例です。三和電気計器のデジタルマルチメータ CD771 は、販売ページの表示では、直流・交流とも1000Vまでの電圧、10Aまでの電流、抵抗、導通(ブザーとLED)などを測れる汎用のテスターです(交流は平均値整流)。測る場所の電圧に合ったレンジかを、取扱説明書で確かめてから使ってください。
はじめての人がつまずく、よくある勘違い
左の勘違いに心当たりがあれば、右の節に戻って読み直してください
| よくある勘違い | 本当は | どこで説明したか |
|---|---|---|
| PLC がモーターに電気を送っている | PLC は「回れ」の知らせを出すだけ。大きな電気を送るのはインバータや電磁接触器 | ④ |
| ブレーカーを切れば、すぐ手を入れてよい | インバータなどには電気が残る。待ってテスターで確かめる | ⑬ |
| 盤は大きさより、安く小さいほうがよい | 小さすぎると中が熱くなり、機器の寿命や動きに響く | ⑩ |
| 部品は回路図どおりぴったりに選べばよい | 試運転のあとに機器が増えることが多い。空きと予備を見込む | ⑨ |
| 分電盤と制御盤は同じもの | 分電盤は建物に電気を配る盤。制御盤は機械を動かす盤 | ⑤ |
盤の中の並びで迷ったときは、「熱いものは上、知らせの線は力の線から離す、外へ出る線は下にまとめる」の3つで決めます。熱は上へ逃げるので、発熱の大きい機器を下に置くと、その上の機器が温められます。太い動力の線のすぐ横に細い信号の線を通すと、ノイズを拾いやすくなります。外の機械へ行く線を端子台にまとめて下から出すと、つなぎ替えや点検がしやすくなります。
よくある質問
まとめ:制御盤は、機械の脳と神経がまとまった部屋
- 制御盤は、機械を動かす電気の機器を1つの箱にまとめたもの。PLC=脳、配線=神経、インバータ・電磁接触器=筋肉に力を送る係
- 中身は、主幹ブレーカー・分岐のブレーカー・DC24V 電源・PLC・電磁接触器・インバータ・端子台。ブレーカーと端子台はほぼ必ず入る
- 盤の中の電気は、モーターを回す動力と、知らせを運ぶ制御の2種類。小さな知らせで大きな電気を開け閉めする
- 作る流れは、仕様書→回路設計→部品選定→盤図→製作・配線→検査→据え付け・試運転。前の段が次の段の材料になる
- 盤の中の温度は ΔT=P÷(U×S)。鉄の箱なら U は約5.5 W/(m²·K)。発熱が増えれば温度差もほぼ比例して増える
- 盤の中の作業は、主幹を切る→錠と札→待つ→テスターで確かめる、の順
盤の全体がつかめたら、次は中の部品を1つずつ選ぶ記事へ進みます。最初は、盤の入口の見張り番であるブレーカー(配線用遮断器)の選び方です。
PLC・サーボ・インバーターを実務で扱ってきた電気・制御の設計者です。制御の記事は、選び方・設定の順番・止まったときの切り分けを、実務の判断のしかたから書いています。機械(材料・機械要素・図面)の記事は本職ではないため、JIS とメーカーの技術資料を調べてまとめ、出典を示しています。
次に読むべき記事
盤の「脳」と「筋肉」にあたる機器の記事から読むと、盤の中で何が起きているかが、さらに具体的につながります。制御盤の部品の記事は、公開しだいここに並べます。


